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PFUがスキャナー製品をリコーブランドへ変更、「リコーグループとして最大限の価値を発揮したい」

 株式会社PFUは24日、これまで富士通ブランドで展開してきたパーソナルイメージスキャナーの「ScanSnap」と、業務用イメージスキャナーである「fiシリーズ」「SPシリーズ」を、2023年4月からリコーブランドに変更すると発表した。

PFUのスキャナー製品をリコーブランドへと刷新

 富士通の100%子会社だったPFUは、2022年9月にリコーが80%の株式を取得し、リコーグループ傘下となっており、現在、富士通の株式比率は20%。PFUの社名は継続する方針が示されている。

 今回のブランド変更は、PFUの主力製品となるスキャナーを対象としている。

 PFUの村上清治社長は、「ブランドをリコーにすることで、リコーグループとして最大限の価値を発揮したい。オフィスなどの現場において、リコーブランドの複写機やプリンタと一枚岩にすることでシナジーを生み、リコーの販売チャネルを通じて、お客さまに価値を提供する総合力を発揮したい。また、全世界に広がるPFUの販売網と、リコーの販売チャネルの双方の強みを活用しながら、お客さまに広く価値を提供したい」と述べた。

PFUの村上清治社長

 ブランド変更は、機器上のシルク印刷部分や梱包箱ロゴなどの部分で、型名や仕様、機能は従来のままだ。すでに、リコーブランドでの生産が開始されており、主力製品については5月までにブランド移行が完了。8月末までには完全移行する予定だ。

機器上のシルク印刷部分や梱包箱ロゴなどの部分が変更される

 また、リコーブランドに切り替わったスキャナーのサポート、保守はPFUが対応。既存ブランド製品についても、これまでと同様のサポートと保守を提供する。

 「PFUのスキャナーは、米国で40%、欧州で33%、日本で70%という高い市場シェアを持ち、多くのお客さまの業務支援を行っている。またトップシェアであるからこそ、お客さまに対して新たな価値を提供したり、新たな用途を提案したりしていく使命がある。リコーグループとしてのシナジーにより、ドキュメントイメージング事業をさらに成長させたい。その第1弾となるのが今回のブランド戦略になる。グローバル視点でスキャナー事業の最大化を図る」と、事業拡大に意欲をみせた。

 日本においては、電子帳簿保存法への対応などにより、デジタル化が進展すると見られ、スキャナーの利用促進が期待される。「これまでは、業務文書のデジタル化は主に大手企業に限られていたが、中小企業などでも利用できる簡易的なソフトウェアを新たに開発するとともに、リコーが持つ中堅中小企業に提供する能力を生かして、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせながらソリューションを提供することを検討している。いまは、金融や自治体向けのソリューションが中心となっているが、ほかの業種も開拓していきたい」とした。

 なお、PFUが発売しているキーボードであるHappy Hacking Keyboard(HHKB)や、リコーのデジタルカメラなどのコンシューマ向け製品のブランド戦略については、「現時点では深い検討ができていない」(PFUの村上社長)とコメントしたものの、「HHKBはブランド認知があり、そのブランドを理解しているユーザーが多い。そこにあえてリコーのブランドをつける必然性はないと考えている。富士通のブランドをつけなかったのと同じように、リコーのブランドはつけない」(PFU 執行役員DI事業担当の清水康也氏)と述べた。

 PFUの村上社長は、1985年にリコーに入社。入社直後にはスキャナー事業に携わった経験がある。その後、リコーはスキャナー事業から撤退している。村上社長は、画像機器の事業企画や全社経営企画などを経て、2012年に、アパレル事業を行う三愛(当時はリコーの子会社)の代表取締役社長に就任。2013年にリコーのグループ理事を経て、2018年には事業開発本部長、2019年にはAM事業本部長、2020年にはリコークリエイティブサービスの代表取締役社長に就いていた。2022年9月にPFUの代表取締役社長に就任し、2022年11月には、村上社長体制で策定された経営方針や新ビジョンなどを発表している。

 「かつて、リコーのスキャナー事業を担当した経験から、PFUの社長に就任したことには、縁のようなものを感じている」と語る。また、「リコーグループではさまざまな分野を担当してきた。その経験がPFUに生かせる」とも語る。

 経営方針の策定に際しては、PFUの歴史をひもといたという。

 「PFUは、1960年に創業し、オフコンやミニコンメーカーとして業績を伸ばし、1980年ごろには、オフコンの雄としての存在感を発揮していた。1987年にはユーザック電子工業とパナファコムが合併し、PFUが生まれている。さらに、オフコンから生まれたスキャナー、オフコンから発展したサーバー、そこから登場したエンベデッドコンピュータや産業用コンピュータのコア部分の開発および製造、そして、オフコンの保守からスタートしたインフラカスタマサービス事業は、いまではマネージドサービスを中心に展開している」とし、「現在、PFUは、ドキュメントイメージング事業、エンベデッドコンピュータ事業、インフラカスタマサービス事業の3つの事業を進めている。この数年の売上高は1300億円を少し上回るところで足踏みが続いている状態にある」と、現状を説明する。

PFUの歴史
PFUの売上推移

 その上で、「PFUの強みはどこにあるのか。それは、お客さまからの信頼、技術力などである。これをコアとし、お客さまと寄り添いながら成長していくことである」とする。

 PFUでは目指す姿(ビジョン)として、「デジタライズの入り口と、そこからつながる業務の改革を支援し、お客さまの“はたらく”を変えることに貢献する」を掲げた。

 村上社長は、「スキャナーをはじめとしたドキュメントイメージング事業は、デジタライズの入り口にあるもので、エンベデッドコンピュータもデジタライズの基盤にあたる製品だ。保守、メンテナンス、マネージドサービスによるインフラカスタマサービス事業もデジタライズのベーシックな部分を支えている。また、入り口にとどまらず、お客さまの業務のなかに入り、業務を変えていくことで、リコーグループの2036年のビジョンである『"はたらく"に歓びを』の実現をサポートできると考えている」とする。

PFUの目指す姿(ビジョン)

 PFUの基本方針として、ドキュメントイメージング事業では、「断トツ商品力と用途開発による顧客の拡大と収益拡大」、エンベデッドコンピュータ事業に関しては、「ハイエンド集中と顧客の深耕と高付加価値サプライヤーへの進化」、インフラカスタマサービス事業においては、「基盤となるサービス事業をベースに業務を改革する事業を創出する」を打ち出し、「シナジー×強み(競争優位)による成長の実現」を目指すという。

 「まだまだ成長の余地があるのに、なかなか成長がしきれない部分もあった。リコーグループとのシナジー、PFUが持ち続けている強みによって、新たな成長路線に乗せたい」と、成長戦略に舵を切る姿勢をみせた。

シナジー×強み(競争優位)による成長の実現

 ここでは技術面でのシナジーについてもコメント。「リコーも、PFUも優れた画像処理技術を持っているが、それぞれに目的が違うため、コア部分がかなり異なるということを感じた。リコーのMFPの画像処理技術には、読み取る原稿を忠実に再現することが求められるが、PFUのイメージスキャナーの技術は、取り込んだ画像を、その後の業務処理につなげることがポイントになり、いらない画像を消すといったことも求められる。また、紙の搬送技術や用紙対応力では、PFUは高い技術力を持っている。自社技術にこだわった製品開発を進めており、技術力を持った人材がいる点も強みである」と語った。

 さらに、PFUとリコーの販売体制のシナジーについても言及。「PFUの製品をリコーグループに提供することで、ソリューション販売を強化。一方で、リコーグループの製品の販売においても、PFUの販売チャネルを活用することを同時に進めていく。リコーグループは、グローバルで強い顧客基盤を持ち、直接販売とディーラー販売のチャネルを持つ。また、PFUは、ディストリビュータを中心とした周辺機器販売チャネルを持ち、販売店向け支援プログラムも充実している。これを相互に活用していくことになる。日本のみならず、北米、アジアパシフィック、欧州にも展開し、幅広く、深く、エンドユーザーへの提案を拡大していく」と述べた。

チャネルの掛け合わせで販売網の強化を実現

 リコーグループとのシナジー効果を生かして、PFUでは、2025年度のドキュメントイメージング事業の全世界売上高を約720億円に拡大する計画だ。2022年度実績の約590億円からは20%増となる。内訳は、既存ビジネスの成長により640億円、新規開拓やシナジー効果で80億円を見込んでいる。

 「ブランドの見直しや販売体制の強化のほか、技術、サポート、製造、開発体制を含めて、より強い製品やサービスを提供することで、お客さまの "はたらく"を変えることに貢献していきたい」と抱負を語った。