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リコー、定形外帳票もADFでスキャンできる複合機3モデル 買収したPFUの技術を活用
2025年2月5日 12:35
株式会社リコーは、A3カラー複合機「RICOH IM C6010SD」、「RICOH IM C4510SD」、「RICOH IM C3010SD」を2月14日に発売する。価格(税別)はそれぞれ、310万円、266万円、213万円。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の進行が遅れている中堅・中小企業のデジタル化を支援することを狙い、従来のカラー複合機に、リコーが2022年に買収したPFUのスキャン機能を加え、不定形サイズの帳票、複写機、カード類などの特殊原稿やメディアでも、ADF(自動原稿送り装置)で自動読み取りできる機能を付加した。
「リコージャパンでは、販売会社として、価値の高いデジタルサービスを提供する会社になるために、製品・サービスを提供することを目指している。DX実現のためにスキャナーを活用するお客さまが増えていることから、新たなエッジデバイスの必要性が増しているということで、新製品を開発した」と、リコージャパン デジタルサービス企画本部 オフィスプリンティング事業センターのセンター長、三浦克久氏はアピールした。
今回の新製品では、企業がDXに取り組む中で、複合機でのスキャン利用が年々拡大しているものの、その際電子化作業の障壁となる特殊原稿が一定数存在することに着目。スキャナー分野で世界トップシェアのPFUのスキャナー技術と、リコーのA3カラー複合機の技術を組み合わせることで、顧客のDXを加速する新たなエッジデバイスとして開発された。
不定形サイズの帳票類を1枚ずつ読み取る必要なく、自動原稿送り装置(ADF)から直接読み取りできるスキャン機能を持つ点が特徴で、これにより、ユーザー企業の業務におけるデータ活用を促進できるという。
ここでは、原稿サイズを自動で検知し、傾きを補正して画像生成を行う機能を活用。レシート、領収書など、サイズや形がまちまちな帳票についても、ADFにセットするだけで自動的に読み取ってくれる。また、複数枚つづりの複写伝票、エンボス付きプラスチックカード、製本済みの書類、封筒などを読み込む場合にも、「単相モード」に切り替えることで、ADFから1部ずつ読み取れるとした。
リコーでは、「領収書やレシートをスムーズに電子データ化することにより、電子帳簿保存法への対応を支援できる。これがお客さまにとってのお役立ちにつながる」(リコージャパンの三浦センター長)と分析している。
これは、サイズが違う領収書などを手作業でデータ化するケースが多かったためだ。リコーの調査では、複合機のスキャン機能の利用は、2023年度で月間700枚程度。そのうち18%は、原稿ガラスに帳票を置いて読み取りしている。特に、流通業は26%、不動産業では23%と、他業種よりも不定形な帳票をスキャンしているケースが多いとのことで、こうしたユーザーの利便性を向上させたい狙いがある。
なお、業務で利用する書類にADFを利用する場合、誤ってステープラー針がついているものをセットしてしまうことなどが原因で、書類にしわがよる事態も起こり得る。こうしたトラブルを防ぐために原稿保護機能を搭載し、ステープラー針がついていた時の異常音を検知して、用紙がヨレた時にも音で検知するほか、用紙のたわみ、重層検知などの機能も搭載した。
「このあたりの原稿を守る機能について、PFUの“原稿を傷めない”という意識の高さは、リコーに比べて1日の長があると感じている。PFUがリコーグループとなったことのメリットだ」(リコージャパンの三浦センター長)。
また、読み取ったデータについては、AIを活用した画像の向きの自動補正、OCR機能を標準搭載している。AIが自動で原稿の向きを補正してくれるので、原稿のタテ、ヨコを気にせずに原稿をセットすることが可能だ。またOCR機能によって、スキャンした原稿の文字情報をテキストデータ化し、PDFファイルに埋め込めるので、迅速に文字検索を行ったり、コピー&貼り付けによって文字情報を再利用したり、といったことも簡単にできるとした。
さらに、各種AIソリューションとの連携も可能で、リコーが提供している各種サービスと連携した業務効率化も可能となっている。
今回、開発を担当したのは、2024年7月1日付でリコーと東芝テックが合弁で設立した「ETRIA(エトリア)株式会社」。エトリアは複合機、バーコードプリンタの開発・生産を担当するが、双方の製品ブランド、販売チャネルを維持しながら、開発を進めるとしている。
ただし新製品については、新会社設立前から開発がスタートしていたため、共同開発による成果は加わっていないという。
一方、2022年に買収したPFUの技術については、「PFUのイメージスキャナーは、さまざまな用紙や各種帳票、プラスチックカードなどの分類にも対応した給紙搬送性能を有し、世界各国にお客さまがいる。今回の新商品には、PFUが培ってきた業務用イメージスキャナーのスキャニング技術が惜しみなく搭載されている」と、PFUのドキュメントイメージング事業本部 スキャナー開発統括部 統括部長の本川浩永氏は説明する。
PFUの業務用イメージスキャナーは、専用窓口で専任のオペレーターが操作し利用されているケースがほとんどだという。
新製品は、PFUが業務用イメージスキャナーで培った技術を複合機に統合したことが最大の特徴となっている。エトリア 執行役員 BSP本部 OC事業センター 所長の佐藤訓之氏は、「先ほど説明があったように、PFUのイメージスキャナーは専任のオペレーターが操作し、PCのキャプチャーソフトで操作して画像処理を行う。一方、複合機はオフィス内に置かれ、複数の方々が共同使用する。スキャン、コピー、FAXといった各アプリケーションにより、スキャニング画像をサーバーに直接配信し、リアルタイムにコピーを出力するといった使い方になる」と、業務用イメージスキャナーと複合機の使い方の違いを説明する。
さらに、従来は請求書、レシート、領収書、納品書のような特殊な原稿は、サイズも向きもバラバラとなるため、利用者側が向きをそろえるなどが必須だった。
それに対し新製品は、「リアルタイムな画像補正処理機能によって、定型外原稿を読み取って外形を自動で切り出しすとともに、傾きや天地を補正するリアルタイムな画像補正処理を搭載した。この画像補正処理により、特殊原稿を効率的にまとめてスキャンすることが可能となった」(エトリアの佐藤所長)と説明する。
画像補正処理を支える代表的な2つの技術が、背景と原稿の色味の差から原稿の外形を正確に検出する技術と、AIによる新しい天地補正技術。
エトリアの佐藤所長は、「ひとつめの外形検知技術は、一般的な外形検知では、黒い背景板を用いて、原稿のエッジを識別して外形を検出する。この方式では、原稿が薄紙であった場合、背景板の黒が裏移りしてしまい、原稿に書かれた黒文字の再現性を低下させることになる。エトリアの新技術は、原稿と同色の白い背景版であっても、原稿と背景板のわずかな色差から、原稿のエッジを識別し、外形を検出することができまる。2つめはAIによる新しい天地識別技術。一般的な天地識別は、文字に着目することで実現しているが、エトリアの新技術は、写真のような文字のない原稿であっても、天地識別ができるようAIを活用している。A3フルカラー複合機が、従来のリコー製品のハードウェアそのままに、PFUのストレートパス搬送ならびにエトリアの画像補正処理技術を結集することで、さまざまな業種、業務で使われている多様な帳票を効率的に電子化できる複合機」と新技術をアピールした。
なお、目標となる販売台数等は明らかにしていないが、「新機能によって、販売台数増加を期待している」(リコージャパンの三浦センター長)という。