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デルがネットワークビジネス強化、オープンハードウェアネットワーク戦略を打ち出す
エッジ向けやデータセンター向け新スイッチを発売
2023年1月23日 06:00
デル・テクノロジーズ株式会社は20日、ネットワーク事業を強化。新たにオープンハードウェアネットワーク戦略を打ち出した。
デル・テクノロジーズ ネットワーク事業部APJ CoC(センター・オブ・コンピテンス)ネットワーキングマーケティングマネージャーの岩辺憲昭氏は、「デルは、ネットワーク領域においてもオープン化を牽引する」とし、「オープンハードウェア機能を実装したEnterprise SONiCを、業界で唯一、提供しているベンダーである。キャリアネットワークやデータセンターから、エッジの領域を含めたネットワーク全体に対して、オープンハードウェアネットワークを広げたい」と述べた。
また、新たなネットワークスイッチ製品として、エッジ向けのDell PowerSwitch E3200-ON Seriesと、データセンター向けのDell PowerSwitch Z9664F-ONの国内での販売を開始することも発表した。
デル・テクノロジーズは、2022年10月に、オープンハードウェアネットワーク戦略を打ち出した。
同社のハードウェア上で、さまざまなネットワークOSが稼働するだけでなく、ソフトウェアをさまざまなベンダーのハードウェア上に展開できるようにしたのが特徴だ。これは、SONiCの4.02へのアップデートにより実現したもので、オープンハードウェア機能を搭載したSONiC対応ベンダーは、現時点ではデル・テクノロジーズだけだ。
SONiCは、Software for Open Networking in Cloudの略で、マイクロソフトが開発し、オープンソースとして公開。850社以上によるエコシステムが形成されており、2022年4月にはLinux Foundationに入り、オープンソースネットワークOSの本命とも位置づけられている。デル・テクノロジーズは、マイクロソフト、ブロードコムに次いで、3番目に投資貢献が大きく、SONiCプロジェクトをリードする立場にあるという。
デル・テクノロジーズ ネットワーク事業部技術部の佐々木亮部長は、「デル・テクノロジーズのネットワーク製品は、オープンネットワークが特徴になる。2014年に、デルが業界で初めてハードウェアとソフトウェアを分離。汎用チップを採用して、標準化したハードウェアを提供した。それにより、さまざまなネットワークOSを自由に選択できるほか、業界標準のCLIインターフェイスを採用しており、簡単にオープンネットワークを構築できる。汎用的なSDNやNVOにも対応できる。サードパーティーが提供するクラウド型管理ネットワークも展開できるようになっており、業界標準の統合ツールや管理ツール、自動化ツールもデルのネットワーク製品で利用できる」とする。
デル・テクノロジーズでは、2021年からEnterprise SONiC Distribution by Dell Technologiesを有償で提供。共通化された環境で技術やエコシステムソリューションを利用できるようにしてきた。またネットワークOSとして、SONiCとともに、SmartFabric OS10も提供している。
「振り返ると、サーバーOSはLinuxの提供によって、メーカーごとに異なるOSの技術を習得することなく、さまざまなハードウェアを自由に選択することができるようになった。ネットワークOSは、サーバーOSに比較するとオープン化の流れが約20年遅れている。ここにきて、SONiCによるネットワークOSのオープン化が進展することで、共通化されたプラットフォームが利用でき、サードパーティーがさまざまなサービスを提供できるようになっている。ユーザーにもメリットがある。ネットワークOSは、いま、ターニングポイントを迎えている」と指摘する。
従来のベンダーごとに異なるネットワークOSやオペレーションでは、顧客やネットワーク技術者がさまざまな技術を習得する必要があったが、標準化されたネットワークOSが広がることで、技術習得をシンプルにしたり、統一されたオペレーションが可能になることで、生産性を高めた形でネットワーク環境の構築が可能になる。
SONiCは、最新のデータセンターやキャリアネットワークでは標準で採用されている技術で、2022年10月の機能強化により、複数ベンダーのサポートを追加し、他社のハードウェアでも利用できるように進化。さまざまなハードウェアを使用している環境や、エッジからデータセンターまで、複数のサイトにまたがった環境にあるハードウェアも、デルのネットワーク製品の活用が可能になる。
デル・テクノロジーズでは、Enterprise SONiC Distribution by Dell Technologiesのライセンス形態として、クラウド向け、企業向け、エッジ向けを用意。ニーズにあわせた提案を行っているという。
「クラウドおよび企業向けには、スタンダードプランに加えて、分析ツールを追加したプレミアムプランを用意。データセンターにおいては処理能力の向上、拡張性向上を実現し、エッジ向けには処理要求が増加しているニーズに対応できる」(デル・テクノロジーズの岩辺氏)とする。
また、昨今では、インフレによるコスト増や物不足による納期の長期化などにより、システムが構築できず、新たなサービスが迅速に開始できないといった課題が生まれているが、オープンソースネットワークOSのメリットを生かすことで、価格が抑えやすいことや、入手性の改善にも効果が生まれていることを指摘する。
ここでは、デル・テクノロジーズのサプライチェーンを活用することで、主要ネットワークスイッチ製品の納期を改善するなどの取り組みを行っていることにも言及。「パートナーや顧客との緊密な話し合いにより、最適な製品を提案するほか、需要を正確に予測し、生産管理と連携することによって、ネットワーク業界において最高水準の納期を実現している」と胸を張る。
さらに、「デル・テクノロジーズは、サーバーおよびストレージを含めたシステムを一気通貫で保守ができる安心感も提供できる。最新のハードウェアを持っていることは、オープンソースネットワークOS環境への移行においても支援ができることになつがる」と述べた。
デル・テクノロジーズでは、ネットワークスイッチ製品として、PowerSwitch SシリーズおよびZシリーズをラインアップ。1GbE、10GbE、25GbE、100GbE、400GbEの帯域において製品展開している。
新製品のDell PowerSwitch E3200-ON Seriesは、エッジでの利用を想定した製品で、電力効率が高く、1GbEおよび 1/2.5/5/10GbEマルチギガビットの高度なレイヤ3ディストリビューションのためのスイッチングソリューションを提供。汎用性が高いのが特徴だ。大企業のオフィスや支店、エッジネットワーク向けに、高機能性と高速なワイヤスピードを提供する。また、ノンブロッキングアーキテクチャにより、簡単にパフォーマンスを向上できるという。加えて、予期しないトラフィック負荷を処理し、ホットスワップ可能な80PLUS Platinum認定の冗長可能な電源を使用しており、高可用性も実現する。
「スマートシティやスマートファクトリー、小売店舗などにおけるエッジの活用が広がっている。ネットワークに対しては、エンタープライズレベルの品質や、現場のデバイスと連携した相互給電、さまざまなアプリケーションの利用が求められている。こうしたニーズに対応した製品がDell PowerSwitch E3200-ON Seriesになる」(デル・テクノロジーズの岩辺氏)という。価格は240万円(税別)から。
同じく新製品のDell PowerSwitch Z9664F-ONは、ハードウェアおよびソフトウェアによるデータセンターネットワーキングソリューションで構成。100/400GbEポートを提供し、多様化するニーズに対応する機能を備えているのが特徴だ。伝送容量およびポート数は2倍に増加。要求が厳しいコンピューティングおよびストレージトラフィック環境のほか、AIや機械学習、グラフィックス処理、データ分析などのアプリケーションを扱う大企業や中規模企業のデータセンター、大学や研究所、大手金融機関、クラウドサービスプロバイダーなどを対象にしており、高い費用対効果を発揮する。
「データセンターの大規模化や、高性能化のニーズが高まるなかで、より多くの伝送容量と、サーバーの多数接続に対応した製品」(同)と位置づけた。価格は1800万円(税別)から。
今回発表した新製品は、いずれもSONiCを採用。「データセンターからエッジの領域まで、オープンネットワークを広げたい」としている。
デル・テクノロジーズ ネットワーク事業部の西澤均事業部長は、「デル・テクノロジーズでは、サーバーやストレージを市場に提供するだけでなく、それらをよりスマートに扱いやすく、経済的に簡単に接続できるネットワークスイッチ製品を提供している。DXが加速するなかで、ネットワークの形態も多岐に渡り、企業内のデータセンターだけでなく、エッジの領域まで、ネットワークを提供していくことが重要になっており、これにより、お客さまの新たなビジネスの創出などを支援していく」と述べた。