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キンドリル、インフラ運用を機械化して抜本的な変革を実現する「Kyndryl Bridge」の国内展開を推進

日本が最も恩恵を受けられるソリューションと強調

 キンドリルジャパン株式会社(キンドリル)は11月30日、日本における事業戦略と、同社が新たに提案するデジタル統合プラットフォーム「Kyndryl Bridge」の取り組みについて説明した。

 キンドリルジャパンの上坂貴志社長は、「Kyndryl Bridgeは、全世界のKyndrylが持つノウハウを集約し、デジタルによって価値を高められるものだ。新たなソリューションに入れ替えるのではなく、いま利用している環境を維持しながらも、Kyndryl Bridgeをその間に入れることで、データ活用を促進したり、自動化ができたりする。システムが複雑化してもCXやDXを推進し、安心、安定、安全な運用を支え、コストを効率化し、デジタルなIT運用を実現する。予兆検知や人的ミスの防止にもつながり、日本の企業が最も重視する品質を強化できる。日本が最も恩恵を受けることができるソリューションである」と位置づけた。

キンドリルジャパン 代表取締役社長の上坂貴志氏

 Kyndryl Bridgeは、Kyndrylのコアの強み、データ駆動型の洞察、蓄積した専門知識などを活用して、ITソリューションを提供するデジタル統合プラットフォームであり、テクノロジーコンサルティング、デリバリー、アライアンスによる体制を活用し、新たなレベルのIT運用管理を実現するという。パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド、オンプレミスに関係なく、顧客のデジタルビジネスの柔軟性と効率性を向上させることができると強調する。

Kyndryl Bridge

 キンドリルジャパン 執行役員 最高技術責任者兼最高情報セキュリティ責任者 テクノロジー・イノベーション本部の澤橋松王氏は、「Kyndryl Bridgeは、顧客の変革を実現する架け橋である。ITの運用現場をデジタル化し、プロセスを自動化することができる。ツール、プロセス、人をカバーし、複雑化するIT環境においてマルチクラウド環境を抽象化し、ITの見える化、障害回復時間の短縮、障害の未然防止、自動復旧を可能にする。かつては、駅の改札口では駅員が人手によって切符にハサミを入れていたが、いまのITインフラの運用現場はこれと同じで、多くの人手に頼っている。Kyndryl Bridgeが目指しているのは、これを自動改札に置きかえるのと同じである」と比喩した。

キンドリルジャパン 執行役員 最高技術責任者兼最高情報セキュリティ責任者 テクノロジー・イノベーション本部の澤橋松王氏

 IBM時代から、数十年にわたって蓄積した全世界数千社の運用データによるデータレイクと、AIおよび自動化の知見を活用して、プラットフォームを進化。インフラからアプリまでのエンドトゥエンドの可観測性を提供し、プロアクティブな洞察をリアルタイムに提供する。また、月2000万回を超える自動実行と、5000を超える自動化アセットを備えたマーケットプレースを提供。新たなツールの導入や、統合開発は不要で、既存ツールとの柔軟なインターフェイスを用意しているのが特徴だ。

Kyndryl Bridgeの特長

 Kyndryl Bridgeを活用すると、クラウドなどのインベントリー情報や課金状況などをダッシュボードに表示可能。稼働状況や障害状況がヘルスインジケータで確認でき、蓄積したグローバルナレッジを活用した対処を行えるようになる。例えば、障害が発生する前に顧客に最適な推奨アクションを提示するといったことが可能だ。また、デジタルカタログからサードパーティ製品を含む、最適なソリューションを選択し、導入することもできる。

 「顧客にとっては初めて発生した障害であっても、さまざまな顧客で発生したデータを蓄積し、学習しているため、それをもとに対応方法をダッシュボードに表示できる。顧客ごとに個別に対応する仕組みとは異なるメリットが提供できる。また、対策についてもアセット化しているため、自動で対応し、自動化の範囲を拡張することも可能だ。そして、APIにより既存ツールやRPAをはじめとしたアプリケーションとの連携が容易であり、環境を変えずにKyndryl Bridgeを導入できる」とした。

 さらに、「管理対象がサーバーやネットワークといったデバイスではなく、Kyndryl Bridgeというソフトウェアになる。サーバーの設定変更やログの分析も、ソフトウェアを起動してアクションすることになり、ソフトウェアエンジニアが中心になって対応できる。サーバーの数が増加しても、それにあわせて運用体制を増やす必要がなく、少数精鋭の体制でシステム全体を運用することができる。SRE(Site Reliability Engineering)のような人材が必要であり、そのための人材育成も支援する。Kyndryl Bridgeは、人が運用している部分をソフトウェアに任せることができる新たな運用モデルであり、何10年も続いてきたIT運用を大きく変えるターニングポイントになり、破壊的イノベーションになるともいえる」と語った。

Kyndryl Bridgeで変わる運用モデル

 Kyndryl Bridgeのグローバルでの先行事例も紹介した。

 ボード・ガシュ・エナジーでは、IT資産全体の安定性を向上。イベントやアラート、セキュリティインシデントの40%を自動的に解決したほか、ブラジルフーズは、IT 組織全体のコストを、統合、分配、検証するためのリードタイムを85%も短縮。エネルギー大手企業では、障害が顕在化する前に予測可能な運用を実現したことで、30%のインシデントを削減し、IT環境の安定性を向上。人を中心に行ってきたインフラ運用を機械化し、抜本的な変革を実現しているという。

Kyndryl Bridgeのグローバルでの先行事例

 一方、日本における実績についても説明。キンドリルジャパンの上坂社長は、「キンドリルジャパンが、2021年9月にスタートして以来、『社会成長の生命線』を担うことを目指す姿として取り組んできた。インフラサービス、システム運用サービスは社会の基盤であり、これを成長させることを重視した事業展開を進めてきた。顧客に共通しているのは、納得のいくインフラ環境を作らなくてはならないという踏み込んだ対応を求めている点である。そこに当社が貢献できた」とする。

 キンドリルジャパンの2023年度上期(2022年4月~9月)の売上高は12億4900万ドル(約1700億円)となり、グローバル全体の15%を占めている。

 上坂社長は、「当社は、クラウド、メインフレーム、セキュリティ&レジリエンシー、デジタルワークプレース、アプリケーション&データAI、ネットワーク&エッジの6つの技術領域にフォーカスしているが、その中でもクラウドに対するニーズが高く、それにあわせて、セキュリティやレジリエンシーへと事業が拡充している。さらに、デジタルワークプレースは日本で最も高い成長を遂げた領域となった。またデータを活用するために、アプリケーション&データAIが、直近になって著しく成長している。中でも、A&IS(アドバイザリーおよび実装サービス)が2桁成長と好調であり、当社にシステム運用を任せるといったサービスから、インフラにも踏み込んだイノベーションビジネスへとシフトしている」と述べた。

キンドリルジャパンのビジネス概況

 だが、日本のITには改善の余地があることも指摘。「1万件のパッチジョブを10人で実施し、毎晩監視している例がある。セキュリティパッチの対象が膨大になっているのにも関わらずExcelで管理したり、毎月1500台のサーバーにログインして月次報告書を作成したり、といった現場がある」とする。さらに、デジタル人材が不足していること、ビジネスアジリティを改善させることが、日本の企業の大きな課題になっており、「この領域でも当社に期待が集まっている」とした。

堅牢で安心・安定・安全なシステムを支える日本のIT運用における改善の余地

 また、「基幹システムの刷新では、50%の企業がアーキテクチャを変更せず、インフラのみを更改するといった状況にあるのが実態だ。キンドリルジャパンは、顧客の中長期契約に基づいてインフラを安定して支えていくとともに、刷新に向けた提案をしていくことが、今後の事業の柱になる。今日、明日は大丈夫でも、3年後、5年後を考えたときには、いまやらなくてはならないといったITインフラは少なくない。改善の余地は大きく、私たちから見れば宝の山が眠っている」と述べた。

 また、この1年間で20社以上の国内外のアライアンスパートナーとの協業や、ジョイントソリューションを発表したことを紹介。「オープンで、ベストオブブリードのアライアンスエコシステムを構築してきた。これらは、クラウドを安心して利用したいといった声をはじめとして、顧客から求められているニーズに応えるためのアライアンスである。当社はインフラに特化した人材を持っている企業であり、パートナーからも組みやすい企業であるという声ももらっている」と述べた。

オープンでベストオブブリードのアライアンス・エコシステムを構築

 さらに上坂社長は、今後の事業方針として、「ミッションクリティカルシステムの品質維持に誠実に対応し、技術領域を軸にモダナイズしていくほか、制約を持ったシステムではなく、自由度を持ったシステムの実現のために、顧客のさまざまな選択肢に応えられるように、アライアンスを強化していくことにも力を注ぐ。実証実験を行える環境も提供し、技術的根拠に基づいて、インテラを提供していく体制も構築する」と語り、「グローバルのベストプラクティスに基づく共創と、ミッションクリティカルな現行システムをよく知る人材による次世代インフラを構築できる点がKyndrylの価値である。キンドリルジャパンでは、オープン統合プラットフォームのKyndryl Bridgeに加えて、実証実験を行い、デザイン主導の共同開発を推進するKyndryl Vital、ビジネスの成果主導のコンサルティングを提供するKyndryl Consultを通じて、企業の変革を支援する」と述べた。

6つの技術領域でKyndryl Vital、KyndrylConsult、Kyndryl Bridgeを通じて顧客の変革を支援