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NTTとメディカロイド、遠隔手術の実現に向け手術支援ロボットとIOWN APNを接続する実証実験を実施

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)と株式会社メディカロイドは15日、遠隔手術の実現に向けた研究として、国産の手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」とIOWNオールフォトニクス・ネットワーク(以下、APN)を接続することで、物理的に離れた環境を1つの環境のように統合し、手術室の状況をよりリアルに伝送でき、コミュニケーションがスムーズに行える場の共有を目指した共同実証を開始したと発表した。

 手術支援ロボットによる遠隔手術は、人口減少や外科医師数の減少、医療の均てん化といった社会課題の解決だけでなく、地域医療支援と若手外科医の教育・育成による医療レベルの向上にも寄与することが期待されている。一方で、手術支援ロボットの遠隔操作は、ネットワークでの遅延やゆらぎの影響を大きく受けることや、執刀医や医療従事者が長時間ヘッドホンなどのデバイスを装着することはストレスとなるため、デバイスを装着することなく空間環境全体の映像や音などの情報を高品質かつリアルタイムに伝送できることが必要になるといった課題がある。

実証実験の構成図

 共同研究では、NTT武蔵野研究開発センタ内に、大容量・低遅延・遅延ゆらぎほぼゼロの特徴を持つ、APNの実証環境(100km以上)を構築。その環境下で、メディカロイドの「hinotori サージカルロボットシステム」を接続し、APN上で遅延ゆらぎほぼゼロでのロボット制御、非圧縮による超低遅延かつ暗号技術による高セキュリティな映像伝送での手術環境共有を行うとともに、NTTが長年取り組む音声技術を用いて、さまざまな音が飛び交う手術室でもクリアな会話を可能にする機械音除去などの技術の実証を行う。

 拠点間で、1波長あたり100Gbps以上の大容量、物理限界に迫る低遅延性、ネットワーク遅延の時間変動がない、遅延ゆらぎほぼゼロの特徴を持つ光伝送パスを実現し、通常の手術と変わらない動きでの遠隔操作に関する実証を実施。

 超低遅延映像伝送技術により、8Kの超高精細映像で、手術環境の共有に必要な手術支援ロボット以外の情報を光伝送パスに非圧縮でダイレクトに送出し、長距離かつ超低遅延のリアルタイムコミュニケーションを行うとともに、コミュニケーションの阻害要因となる音のみを除去するノイズキャンセリングにより、同一環境で手術しているかのような手術環境の共有に関する実証を行う。

 また、量子計算機でも攻撃が困難な暗号鍵交換技術や、セキュア光トランスポートネットワーク技術を用いて、遠隔手術で送受信するデータを耐量子計算機暗号技術で交換した暗号鍵で暗号化することによる、量子計算機時代のセキュリティ確保に関する実証も行う。

 NTTとメディカロイドでは今後、今回の研究および技術を適用した遠隔手術支援のフィールド実証を共同で進め、遠隔医療のさらなる拡大による医療の質の向上、質の高い医療へのアクセシビリティの確保に貢献するとともに、この基盤であるIOWN APNの技術を、遠隔での低遅延、遅延ゆらぎのないリアルタイム制御の活用を通して、各産業分野における課題解決ならびに、社会課題の解決に展開していくとしている。

 また、研究成果は、11月16日~18日に開催する「NTT R&Dフォーラム — Road to IOWN 2022」で展示を予定する。