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NTT、低遅延トランスポート技術と精密バイラテラル制御技術により、触覚を伴った遠隔操作実証をIOWN APNで実施

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)は10日、NTTが提供するIOWN APN(オールフォトニクスネットワーク)を活用した低遅延トランスポート技術に、ソニーグループ株式会社(以下、ソニー)が開発する精密バイラテラル制御技術を接続し、離れた地点間にあっても距離を感じさせない触覚を伴った精密遠隔操作の実現に向け、共同実証を実施したと発表した。

 共同実証では、高精度な力覚情報を3D映像情報とともに低遅延で遠隔地にいる操作者にフィードバックすることで、遠隔地においてもあたかも目の前で直接触れたかのようなリアルタイムで安定した操作感が得られることを確認したという。

 APNを活用した精密遠隔操作実証実験は、NTTがAPNテスト用環境と、APNで優れた性能を発揮する非圧縮映像伝送技術およびRDMA(Remote Direct Memory Access)アクセラレーション技術を提供し、APN接続試験およびネットワーク条件の評価実験を実施。ソニーが、RDMAを用いた通信機能を有した精密バイラテラル制御システム、空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」と3D映像の撮像および処理技術、操作支援のための先端位置や奥行きを示すUI重畳や仮想力場による力の誘導技術を提供し、動作評価を実施した。

共同実験概要

 バイラテラル制御技術は、操作者の動作に応じて遠隔地にあるロボットアームを連動させられるロボット制御技術。特に、高精度で安定した動作が求められる医療などの分野に応用する場合には、操作者とロボットアーム間の伝送における遅延や揺らぎが問題となることがあり、遠隔での精密ロボット制御の実現には高精度なロボットアームの活用に加え、遠隔地間を低遅延で安定してつなぐことができる通信技術が必要となる。

 実証で用いた低遅延トランスポート技術のうち、非圧縮映像伝送技術は、映像データをSDI信号からSMPTE ST 2110 ストリームへダイレクトにマッピングすることにより、送信側での映像入力から受信側での映像出力までの遅延を1ms(ミリセカンド)以内に抑える。

 また、RDMAは、CPUの介在なくメモリ上のデータを直接ネットワークへ転送できる特徴を持っているため、IOWNが提唱しているディスアグリゲーティッドコンピュティングの高速低遅延データ転送として有望だが、RDMAで信頼性のあるデータ転送を行うRDMA RC(Reliable Connection)は、データセンター内など短距離のデータ転送を想定しているため、中長距離通信に適用しようとするとパフォーマンスが出ない問題があった。この問題に対し、転送が成功したかを確認するループバック信号を端末側で疑似生成することで、アプリケーション側のRDMA利用方法を変更することなく長延化を可能にした。

 精密バイラテラル制御技術は、操作者の動きとロボットアーム先端を高い精度で連動させて、遠隔操作するソニーの技術。アーム先端の位置と三次元方向の力の変化を一定の倍率で操作者側にフィードバックできる特長を有し、力精度1gf(グラム重、ニュートン換算で0.0098N)で1mm未満の位置精度を実現する。対象物を高精度かつ繊細に取り扱うことが求められる、医療や微細な工作、科学的研究などの分野への応用が期待されている。

 共同実証実験は、APNテスト用環境に低遅延トランスポート技術を用意し、APNの両端にソニーの精密バイラテラル制御システムを接続して行った。視覚情報に関しては、3D映像をNTTの非圧縮映像伝送技術を用いてAPNにダイレクトに送出し、実在感のある立体映像を裸眼で見られるソニーの空間再現ディスプレイで操作者側に提示した。また、力覚情報を含む制御情報は、ソニーの精密バイラテラル制御システムとNTTのRDMAアクセラレーション技術を接続し、APNを介したメモリ間通信で行った。

実験構成図

 評価の結果、APNを介した約120kmにわたる長距離実証実験では、1ms以下の低遅延でエンドツーエンドの安定動作を確認した。RDMAを用いたアプリケーション側の通信処理は、APNを介した場合も10μs(マイクロセカンド)以下の低揺らぎにて安定動作できた。これにより、APNと低遅延トランスポート技術が、伝送の遅延や揺らぎの課題を解決し、近距離を前提としていた精密バイラテラル制御を、より離れた地点間に拡張できる可能性が示されたとしている。

 NTTでは今後、具体的なユースケースを考慮した実証実験を実施し、場所の制約を超えた精密な遠隔操作の適用範囲を拡大することで、豊かな社会の実現を推進するとしている。
また、研究成果の一部は、11月14日~17日に開催される「NTT R&D フォーラム- IOWN ACCELERATION」に展示を予定する。