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SAS Institute Japan、短時間で問題解決を実現する分析ソリューションを提供
2022年10月11日 06:30
SAS Institute Japan株式会社は6日、最新分析ソリューションに関する説明会を開催した。
同社は創業以来、分析ソリューションを直販で提供しているが、データ分析需要が増加し、AI活用などで手軽に利用できる分析ツールが提供されている現状に対して、「簡単に利用できるAIベースの分析ツールだけでは企業が求める問題解決とはならない」と指摘。短期間にデータ分析を業務に生かしていくために、業務に踏み込むことが必要として、新しいサービスの提供を開始する。
具体的には、エンタープライズ向け特定業種・業務ソリューション「SAS Answers Cloud」、エンタープライズ向けスモールスタート・ソリューション「DXスターターパック」の各製品を提供。またMicrosoftとの協業により、同社のマーケットプレイスでSAS製品を提供する「SAS Viya on Microsoft Azure Marketplace」を新たにスタートし、顧客拡大を進める。
SAS Answers Cloud
新製品のうちSAS Answers Cloudは、SAS Cloudの特徴であるAI/アナリティクスツールの提供だけにとどまらず、SASのビジネスナレッジを生かしたマネージド型サービスであること、特定の業種・業務のビジネステーマに合わせたテンプレートを提供することが特徴という。
SAS Institute Japan ソリューション統括本部 金融デジタルソリューション統括部 統括部長の羽根俊宏氏は、「クラウドAIは簡単に使えるとアピールされているものの、ボタンを押すだけで利用できるようになるわけではない。実際にはデータを食わせることが必要だが、どんなデータを食わせるのかについては、適したデータを人間が選ぶことが必要で、この作業をせずにデータを食わせれば、ビジネス活用の場でトラブルが起こりがちとなる」という点を指摘。
その上で、「SAS Cloudは、そうした問題を回避するために分析ツールの提供に加え、マネージド型で適したデータを食わせる作業まで請け負って提供し、使える分析ツールをきちんと提供する。この、人の手をわずらわせないことをさらに進めたのがSAS Answers Cloud。これまで参加したプロジェクトでの経験をメニュー化し、極力人の手をわずらわせないで利用できるサービスとなっている」と、そのメリットを説明した。
提供を予定しているのは、金融業では「リテール顧客の見え方」、「証券顧客の商品ニーズ/ポテンシャリティの予測」、「営業職員の不適切行為のリスク予測」などのテーマ。また製造業では「新製品、定常品や代替品など商品ライフサイクル・ベースの需要予測と需給管理」、ライフサイエンスヘルスケアでは「臨床解析プログラミングの自動化/半自動化アプリケーション」、流通・小売業では「消費者購買行動のデータ分析に基づいたデマンド・チェーン・マネジメントシステム」といったテーマの提供を予定する。
テスト段階のテンプレートを利用した証券会社では、当初、他社製のAI分析ツールを導入し、主要数商品の成約予測モデルを構築した。しかし最初のモデルを構築して以降、社内でモデルの改善、増築を行っていなかったため、制約を予測できるのは数商品のみにとどまっていたという。そこで今回、SAS Answers Cloudを導入し、予測できる対象を全商品に拡大した結果、予測精度が改善され5%へとアップしたとのこと。
「他社が成功したモデルをもとにしたテンプレートを活用することで、実働まで時間がかかっていたチューニング期間を短縮し、早期に成功に結びつけることができる」(羽根氏)。
今回の発表以降、対象となる業種・業務の企業に向け、利用を呼びかけていく計画だ。
DXスターターパック
エンタープライズ向けスモールスタート・ソリューションのDXスターターパックのうち、今回発表されたライフサイエンス&ヘルスケア向けは、塩野義製薬との協業により実現した。医薬品開発のためのデータ解析コンサルティングサービスで、ITベンダーやコンサルティング会社ではなく、塩野義製薬自身の経験を同業者に提供する。
「塩野義製薬が、なぜ、競合となる他社に自社ノウハウを提供するのか疑問に思われる方もいると思うが、塩野義製薬はDXやデータサイエンス分野できちんと成果を出してきた。その成果を自社だけにとどめておくのはもったいないと考えられたことが今回のサービスを提供する要因のひとつ。さらに、他社に公開し、さまざまな意見をもらうことで、自社だけでは気がつくことができなかった視点や修正すべき課題などを発見する機会となるのではないか、ということがもうひとつの要因」(SAS Institute Japan ソリューション統括本部アナリティクスプラットフォーム統括部 統括部長の小林泉氏)。
今回、臨床解析業務のトランスフォーメーション支援、リアルワールドエビデンスの活用によるトランスフォーメーション支援、DXチェンジマネジメント支援などを予定している。
Microsoft Azure MarketplaceでSAS Viyaを提供
また、2年前から協業しているMicrosoftとは、MicrosoftのマーケットプレイスであるMicrosoft Azure MarketplaceでSAS Viyaを提供する。SASではこれまで直販で製品を提供してきたが、今回はMarketplace経由での商品提供を行う。
「これまでの当社の課金体系は、サーバーのコア数に応じた課金、ユーザー数課金、特殊なケースでの対応だがユーザーの売上に応じたリアルタイムイベント課金と大きく3種類だった。クラウドでのソリューション提供により裾野が広がっていることを受け、利用度に応じた時間制料金基準の提供をスタートする。学習機会についても、オンライン教材を使いセルフラーニング環境を提供していく」(小林氏)。
SASは、本社である米国が創業46年、日本法人が設立し36年となる。創業時からデータ分析ソリューションを提供しており、現在のようにデータ分析を行う企業ユーザー向けに直販で商品を提供してきた。
今回の新サービスは、これまで培ってきたビジネスノウハウを活用しながら、より多くの企業に分析サービスを利用するハードルを下げることが狙いだと説明している。
「以前からSAS製品を利用されているお客さまは、データ活用を業務に組み込んで成果を出されている企業も多い。しかし、そんな企業であっても従来とは異なる部門からデータ分析をしたいという声が上がっていることで、情報システム部門の業務が増え、ボトルネックとなることも増えてきた。そこでサーバー構築という業務負荷を下げるためにクラウド版を提供している。ただし、SIerへの依存度が高い日本企業では、クラウド利用も負荷が大きいことから、SAS側が面倒をひっくるめて請け負うということで今回発表したSAS Answers Cloudを用意した。また、新たなユーザーになる企業向けにはソフト環境構築のハードルが高いことから、それを下げて分析サービスを使ってもらうことを狙い、新サービスを提供していく」(小林氏)。