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大塚商会が中・長期経営方針を発表、営業利益は年平均6%の成長を目指す

 株式会社大塚商会は24日、中・長期経営方針説明会を開催した。代表取締役社長の大塚裕司氏は、「上場当時は中・長期経営方針を発表していたが、3年後の予想はなかなか当たらないという声もあり、作るのを止めていた。今回、プライム市場の開示義務ということで久しぶりに中・長期経営方針を発表する。ただし、直後に中期決算(2023年12月期)発表を控えているため、数値的な発表はできない」と、発表を行った理由を説明した。

大塚商会 代表取締役社長の大塚裕司氏

4点の基本方針を掲げる

 大塚商会の中・長期経営方針は以下の4点。

・環境変化に対応しながら、安定的かつ持続的な成長を続ける。営業利益率・経常利益率ともに7%以上定着。
・人員計画は生産性向上に留意しながら微増
・情報活用で需要を開拓。
・人・物・金・情報の効率活用で@生産性向上

中・長期経営方針

 この内容について大塚社長は、「決算発表等で行っている経営方針に比べ、特別に変更していない。当社の創業時からの方針である、『お客さまの仕事を止めない』を基本コンセプトにしながら、新しいことをどうやるのかに挑戦していく」と説明した。

大塚商会の強み

 成長サイクルとして、人=印材育成など成長投資、情報=情報活用・関係作り、物=オフィスまるごと、金=業績拡大という成長サイクルを回していくとアピール。

 「コピー機を販売する際、お客さまとの関係が薄いと、導入後リース期限が切れる3・4年間は訪問することない。それではコピー機以外の商材の導入につながらない。ビジネス拡大に結びつかない」(大塚社長)と、顧客との関係を濃くして、販売する商材を増やしていくことが必要と話す。

 続けて、「創業期は、取り扱い商材も少なかったが、コピー機を導入したお客さまから、当時は40万円から50万円という価格だった電卓は取り扱っていないのかと問い合わせを受け、電卓の取り扱いを開始した。お客さまからの要望で取扱商品を増やしてきた結果、他社にはない、オフィスにある商材をまるごと取り扱っている現在の姿ができあがった」として、オフィス内にあるほぼすべての商品を取り扱っていることを強みとアピールする。

成長サイクル
関係創りとオフィスまるごと

 収益性向上については、以前から注力しているストックビジネスにあらためて注力することを説明した。オフィスにある商材を取り扱う大塚商会だけに、コロナ禍では売上への影響も少なくなかったためだ。「オフィスに人がいない状況ではコピー機は利用されず、サプライも使われない。テレワーク需要は一部あったものの、厳しい状況だった。安定した収益源となっていたストックビジネスもコロナ禍で傷が付いた。生産性という点から考えても、テレワークとリアルなオフィスでの仕事を組み合わせていくことが必要」(大塚社長)。

 売上高の4割を占めるストックビジネスだが、サプライ+契約保守売上高とストックビジネス比率の推移を見ると、2022年度は伸びが前年を下回っている。しかし大塚社長は、「収益認識基準の変更により、前年度までと比較し下回っているように見えるが、決して成長が鈍っているわけではない。年間3000億円を超える安定した成長基盤」と述べ、成長していることを強調した。

収益性の向上
ストックビジネス

 このベースとなっているのが、1990年代、バブルがはじけた後に実施した基幹システムの見直し。「現在でいえばDXということになると思うが、基幹システムを見直し、顧客マスターを全社的に統一した。営業部門でも、サポート部門でもすべて共通の顧客マスターを統一している」(大塚社長)。

 この統一された顧客マスターを基に顧客データの分析を行っているほか、さらなる生産性向上に向けAI活用を進めている。「AIを使うことで、人間も気がつかないことを発見することができるのではないかと期待している。さらなるAI活用に向け、人材確保も重要な課題。今年度はインド工科大学の卒業生4人を採用し、AI研究を行う部門も発足した。今年度も同様の人材を採用予定で、生産性向上を追求していく」(大塚社長)。

 AI活用で商談成功率を上げていくことを狙っているが、「これは初めて出す数字だが、商談件数と成功率をまとめた。2022年度で商談件数は336万件で、AI活用で成功率が1ポイント上がれば3万件の成功数ということになる」と1ポイントでも商談成功率が上がれば、売上への影響は少なくないとアピールする。

商談件数と受注率

 また、2品以上の取引がある顧客を増やすことについて強いこだわりを見せ、「当社と取引があるお客さまは、年間29万社から30万社。今回、生データを公開するが、2022年7月から23年6月までの実績で、取引が1品のみのお客さまが68.8%。これらのお客さまのオフィス内のほかの商品は、当社以外のところと取引し購入しているということになる。“たられば”の話になるが、例えば年間30万社と取引するとして、これまで1品しか取引がなかったお客さまに1万円の新たな取引が実現すればと考えると、まだまだ売上が伸びる余地は十分にある。それをどうすれば実現できるのか、社内のかじ取りと勉強を進めながら実現していきたい」と、大塚社長は取引品数拡大に強い意欲を見せた。

On比率

 このために社員の働きがい向上を実現も重要な要素として、「昨年は全社員に1万円のベースアップを行った。現在は各社が実施していることだが、昨年時点では実施しているところが珍しかったのか、テレビニュースで取り上げられたりしている。今後も株主還元と友に、社員への還元も考えていきたい」(大塚社長)とアピールした。

 KPIとして、「短期業績の良し悪しでなく、中期目標で確実な成長を果たし、ステークホルダーの期待に応える」という目標を掲げる。「お客さまとの関係」では企業数+2%、1企業当たり売上高+3%、ROE13%以上を目指す。営業利益・経常利益は年平均の成長率+6%、利益率7%、配当性向は安定的に50%以上を目標として挙げている。

KPI