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日本オラクル、AI Servicesの強化、Data LakehouseアーキテクチャなどOCIの最新アップデートを解説
2021年の総括も
2021年12月23日 06:15
日本オラクル株式会社は22日、クラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」の製品アップデートに関する、プレス向けの定例説明会を開催した。
今回は年末ということで、9~11月の機能拡充に加え、2021年の1年間の総括も語られた。9~11月の機能拡充としては、AI Servicesの強化、Data Lakehouseアーキテクチャ、OCI DevOpsサービスが紹介されている。
2021年の総括
2021年の総括は、日本オラクル株式会社 事業戦略統括 事業開発本部 本部長の佐藤裕之氏が説明した。
佐藤氏はまず、2021年を総括する数字を紹介した。開設済みのリージョン数が29から36に増えたこと、提供中のサービス数が68から95に増えたこと、新機能および機能強化数が350以上あったほか、永年無料枠のAlways Free提供サービス数が11から24に増えたという。
2021年のOracle Cloudの注力点
佐藤氏はまずOCIの拡充の方向性を、「柔軟な基盤」「データ基盤」「クラウドセキュリティ」「配置の柔軟性」の4つの柱に分類した。そのうえで、2021年のOracle Cloudの注力点を6つ挙げた。
1つめは「重要なエンタープライズ・ワークロードの移行をさらに容易に」で、柔軟な基盤に属する。これには、Oracle Cloud Lift Servicesの提供によるナレッジの支援や、Oracle Support Rewardsの提供などが含まれる。
2つめは「広範なリソースを拡大」で、柔軟な基盤に属する。これには、ARMベースインスタンスの提供や、ストレージとネットワークの日々強化などが含まれる。
3つめは、「ハイブリッド・クラウド戦略に対するサポートを強化」で、配置の柔軟性に含まれる。ここには、5大陸19か国36リージョンに拡大したことや、エッジ向けのRoving Edge Infrastructureなどが含まれる。
4つめは「データ・プラットフォームの構築」で、データ基盤に含まれる。この分野では、MySQL Heatwaveを機械学習で自動化するMySQL Autopilotの追加などがある。
5つめは「新しい自律型サービスの導入」で、同じくデータ基盤に含まれる。ここでは、Oracle Autonomous JSON Databaseの提供などがトピックとなる。
6つめは「セキュリティの強化」で、ビルトインのセキュリティ提供の方針の継続や、4つのセキュリティサービスの強化などが含まれる。
ISMAP登録や、クラウド移行やデータ支援のサービス
また、ビジネスサービスの拡充については4点を佐藤氏は挙げた。
1つめは、6月に、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)の登録が完了したこと。9月にはサービスを追加している。「単に登録されただけではなく、登録されているサービスの数でも先行している」と佐藤氏は述べた。
2つめは、クラウド移行を支援するOracle Cloud Lift Servicesを7月に提供開始したことだ。
3つめとしては、Cloud Center of Excellence(CCoE)サービスを11月に提供開始した。顧客の中に入ってクラウド移行を包括的に支援しているという。
4つめは、データ分野でスタートアップを支援するData Driven Digital Transformationスタートアップ・サービスを、11月に提供開始したこと。
そのほか、以前からアナウンスしていたOracle Cloud Infrastructure無償学習プログラムが実際に開始されたことも、佐藤氏は紹介した。
9月~11月の3カ月間の機能拡充
9月~11月の3カ月間の機能拡充としては、85以上の新機能および機能強化を行ったという。
その中から、AIService、Data Lakehouse、OCI DevOpsの3分野に分けて、それぞれの担当から解説がなされた。いずれも、冒頭の4つの柱でいうとデータ基盤に属するものだ。
3分野のほか佐藤氏は、ロードバランサーのFlexible load BalancerでWeb Application Firewall(WAF)機能が利用可能になったこと(10月発表)を紹介した。無償から利用できる。
AI Services:音声認識や画像認識、時系列データ分析など
AI Servicesについては、日本オラクル株式会社 事業戦略統括事業開発本部 シニアマネージャーの大澤清吾氏が解説した。
AI Servicesで今回新規で追加されたサービスは6つ。そのうち3つは、文章分析の「Language」、音声認識の「Speech」、画像認識「Vision」という、ほかのクラウドサービスでも提供されているAI利用サービスが用意された。
また「Data Labeling」は、AIモデルをトレーニングするためのデータラベル付けを支援するサービス。
5つ目の「Anomaly Detection」は時系列データに基づく異常検出だ。「原子力の機関で異常検出に使われていたMSET2アルゴリズムを、皆さまにも簡単に使えるようにしたもの」と大澤氏は説明した。
最後の「Forecasting」は、同様に時系列データに基づいて、需要や収益を予測するものだ。
AI Servicesの事例としては、小児がんなどの研究機関の「Children's Medical Research Institute」が、Data LabelingとVisionによって顕微鏡画像から細胞を検出する時間を短縮した事例が紹介された。また、運輸業界で収集した走行データを分析する「SS Global LLC」がAnomaly Detectionでコスト削減をした事例も紹介されている。
DWHとデータウェアハウスを統合したData Lakehouse
Data Lakehouseについては、日本オラクル株式会社 事業戦略統括 事業開発本部 シニアマネージャーの谷川信朗氏が解説した。
谷川氏はデータウェアハウス(DWH)とデータレイクの現状として、構造化データのDWHと非構造化データに対応するデータレイクが混在してサイロ化していると指摘。そして、両者の長所を統合したアーキテクチャがData Lakehouseだとした。
OCIでは、Data Lakehouseを単体のサービスではなく、すでにあるサービスにそれぞれ、Data Lakehouseを意識した機能強化を組み込み、それらのサービスを組み合わせることで実現するものとして提供する。
例えばAutonomous Data Warehouse(ADW)では、データレイクに対しても透過的に高速にアクセスする機能強化や、その内部でOCI Data Catalogとメタデータ連携をして透過的なクエリをする機能が追加されたことを谷川氏は紹介した。
Data Lakehouseの事例としては、鉱山の採掘にデジタルソリューションを提供するMineSense社が、OCI上のレイクハウスでセンサーデータの検索を高速化したことが紹介された。
CI/CDパイプラインなどのOCI DevOps
OCI DevOpsについては、日本オラクル株式会社 事業戦略統括 事業開発本部 シニアマネージャーの田中隆三郎氏が解説した。
新しく登場したOCI DevOpsは、ほかのクラウドでもあるCI/CDパイプラインなどのサービスだ。田中氏はOCI DevOpsを、クラウドネイティブなアプリケーション開発のためのOCI Cloud Nativeサービス群の1つとして、機能を拡充してコンプリートするものと説明した。
OCI DevOpsでは、コード管理(Gitリポジトリ)、ビルドパイプライン、成果物(Artifact)管理、デプロイパイプラインを提供する。なお、OCI DevOpsのサービスとしての価格は無料だと、田中氏は語った。