ニュース

トレジャーデータ、新たにセールス向けとコールセンター向けの2製品を投入

 トレジャーデータ株式会社は14日、新体制となって初めての記者会見を実施。2021年6月にTreasure Data Inc.のCEOに就任した太田一樹氏がビデオメッセージで、「引き続き日本市場は最重要マーケットととらえ、注力していく」と述べ、日本市場への注力をアピールした。

 また、日本法人の代表取締役社長である三浦喬氏は、「新たな戦略としてSMB市場への対応強化、アジアパシフィック対応の加速、新プロダクトの発表を実施する」と発表した。新プロダクトはセールス部門向けとコールセンター向け製品で、3年で100社の顧客獲得を目指す。

米Treasure Data Inc. CEOの太田一樹氏
トレジャーデータ 代表取締役社長の三浦喬氏

米本社、日本法人がそれぞれ新体制に

 Treasure Dataは2018年に英Armと統合したが、Armが米Nvidiaに買収されたことで、企業方針がハードウェアビジネスに特化することに変更された。

 そこで、ソフトウェアビジネスを展開するトレジャーデータは、「ソフトバンク・ビジョン・ファンドの参画を受け、この1年かけてあらためて独立したオペレーション実現を模索してきた。その中でソフトバンク・孫正義氏から『トレジャーデータ創業メンバーの力が必要』というリクエストを受け、米本社は創業メンバーの一人で、創業時はCTOだった太田がCEOに、同じく創業者だった芳川裕誠がExecutive Chairmanに、CFOだったDan WeirichがCOO兼CFOに復帰した」(トレジャーデータの三浦社長)とのことで、Armから独立し、体制変更を行っている。

米本社の新体制

 本社の経営体制変更を受け、日本法人についても執行役員制度を本格的に導入し、従来は社長執行役員だった三浦喬氏が代表取締役社長に就任した。こうした経営体制変更はあったものの、日本法人の業績については、「この2年間、堅調な成長を続け、組織および人材の拡充を進めてきた」(三浦氏)という。

日本法人の新体制

 日本法人では新たな経営方針として次の3つに取り組む。

1)これまでの大企業にフォーカスした営業体制から、SMB市場への対応力強化
2)展開エリアとしてアジアパシフィック市場への対応加速
3)新プロダクトの発表

 3つ目の、新プロダクトを手がける要因となったのが、トレジャーデータの手がけるCDP(Customer Data Platform)市場の変化だ。まず、プライバシーに配慮した環境変化によって、3rd Party Cookieに対してSafariはすでに実質的には機能しない状況となり、Google Chromeは2023年後半までにサポート終了することになっている。法規制としても、GDPR、CCPAが施行され、2022年4月からは改正個人情報保護法が施行予定だ。個人データを利用する際には、本人同意が得られることが義務づけられる。

 「技術規制、法改正に対応していくために、CDPにはファーストパーティデータへのシフト、大手プラットフォーマーとの連携、厳格な同意管理が必要となってくる」(三浦社長)。

 またCDPについても、従来はマーケティング部門が活用するものだったが、他部門での利用例が増えている。「この半年から1年のトレンドが、さまざまな業種・業態のマーケティング部門以外でのCDP利用。マーケティングにとどまらず、業務推進と効率化のためにCDPとAIを活用する企業が出てきている」。

ますます重要となるCDPの役割

 事例として紹介されたのは、株式会社りらく。マッサージなどを行うリラクゼーションスペースの運営を行う同社では、需要の最大化だけでなく、供給の最大化実現に向けCDPを活用している。

 「りらく社のビジネスは、いくら来店者が増えても施術を行う人間がいなければビジネスとして成立しない。そこで、いつ・どこの店舗にどれくらいの来店者があるのかを予測し、その予測データに合わせて施術を担当するセラピストを配置している。さらに次に、いつ、お客さまが来店するのかの予測を行う。この3つの予測をぐるぐる回していく体制ができたことで、コロナ禍においても最適な顧客予測が実現し、予測精度は98.1%という高さを実現。以前は予測も1カ月固定予測だったが、現在では1週間ごとに早期予想を行うことが可能となっている」(三浦社長)。

 CDPによるビジネス予測が高い効果を上げたことで、りらく社では新たにプラットフォーム事業を立ち上げ、例えば美容院の美容師配置と需要予測を行うなど、他業種の需要最適化予測をビジネスとしていくという。

りらく社の事例

Treasure Data CDP for Sales

 市場変化を受け、新たに投入するのは、法人営業高度化のためのデータプラットフォーム「Treasure Data CDP for Sales(CDP for Sales)」と、戦略的に顧客体験の向上や管理を行うためのデータプラットフォーム「Treasure Data CDP for Contact Center(CDP for Contact Center)」の2製品だ。

2つの新製品を投入

 CDP for Salesは、Webアナリティクス、MA、SFAなどの各ツールや、施策/チャネル/事業単位で各タッチポイントのデータがサイロ化し、部門横断で有効活用できていないという法人営業部門の課題を解決する製品。顧客企業の状態や、そこに所属する個人の行動を可視化・分析し、最適かつ効率的な対応を実現することが可能にする。

 また、Webサイト上でのすべての行動データ、すでに導入済みのMA/SFA/CRMツールのデータ、IoT機器のデータなど、さまざまな種類のデータを収集・統合。顧客の反応に応じて、適切なチャネルで最適なアプローチすることを可能にする。例えば、Webサイトを訪れた顧客に対して、機械学習を使って製品の受注確度や離反確度を予測したり、次の最適なアクションやレコメンドを提示したりすることで、営業担当者がその情報をもとに顧客対応を行うといった、オンラインとオフラインを融合させた高度な営業活動を実現するという。

CDP for Salesの概要

 トレジャーデータの戦略担当執行役員 大津留博文氏は、「営業に関わるさまざまな部署間の断絶が起き、連携がきちんとできていない企業が多い。顧客ごとの各種データを企業アカウント単位で統合し、企業情報や契約情報と営業活動データ等を連携することで、法人営業の高度化を実現するプラットフォームとなる」と、新製品を説明している。

トレジャーデータの戦略担当執行役員 大津留博文氏

 先行して導入しているソフトバンクでは、オンライン開催となったSoftBank World 2020の参加者の行動を見える化し、その後の営業活動に活用している。その結果、データドリブンな営業活動を実現している。

 同じく先行導入したUSEN ICT Solutionsは、顧客とのエンゲージメントを高めることを目的に、部門を超えて従来型営業のDX化推進している。

Treasure Data CDP for Contact Center

 もう一つの新製品CDP for Contact Centerは、ロイヤルティーを高める顧客対応実現に向け、顧客体験管理(CXM)の推進を実現する。主要な利用先であるコンタクトセンターが、攻めのコンタクトセンターとして機能することを想定した製品だ。

 「さまざまな部門にある顧客データを、どの部署からでも自動的にデータを共有し、顧客接点を横断したデータ統合による顧客プロファイルの可視化、bot活用を想定した自然言語処理による顧客の声の活用などをリアルタイムに実施し、カスタマーサポート担当の応答に生かしていくことができる」(大津留氏)。

 CDP製品は競合も多い分野だが、「当社自身の機能強化に加え、マーケティングソリューションを提供するアドビやセールスフォースといったベンダーとは競合もするものの、協業ができることも大きな強み。日本やアジアパシフィック地域でビジネスを進める際には、独自展開に加えさまざまなプラットフォーマーとの協業が行えることが大きな強未知なる」(三浦氏)と説明する。

 こうした活動によって、新製品は3年後に100社の顧客を獲得することを目標としていく。

CDP for Contact Centerの概要