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「ロイヤルカスタマーとなる顧客を効率的に見つけ出す」――、トレジャーデータがマシンラーニング機能を提供

 トレジャーデータ株式会社は14日、同社が提供するカスタマーデータプラットフォーム「Treasure CDP」にマシンラーニング(機械学習)機能を追加、あわせてエンタープライズ向けにセキュリティ機能を強化したことを発表した。

 会見には、米国本社から来日したTreasure Dataの芳川裕誠CEOと太田一樹CTOが出席、「トレジャーデータはカスタマーデータプラットフォーム(CDP)の“ど真ん中”にいるプレイヤー。多種多様なデータを扱える強みを生かし、日本企業のデジタルトランスフォーメーションをCDPでもって支援していきたい」(芳川CEO)、「デジタルマーケティングの世界ではマーケターとテクノロジとの間にまだギャップがある。そのギャップをトレジャーデータが埋めていきたい」(太田CTO)とそれぞれに語る。国内エンタープライズ、特にデジタルマーケティング分野におけるさらなるシェア拡大を狙う考えだ。

Treasure Dataの太田一樹CTO
Treasure Dataの芳川裕誠CEO

 今回、Treasure CDPに追加されたマシンラーニング機能は、既存顧客の行動をもとに見込み顧客の特定を自動化する「予測リードスコアリング機能」。すでに何らかのコンバージョンを達成した顧客のデータを教師モデルとしてAIが学習を繰り返し、顧客のスコアリングモデルを自動で生成する。

 リードを自動でスコア化できるので、近い将来にコンバージョンする見込み顧客を高い精度で予測することが可能になる。この予測リードスコアリング機能のベースになっているのは、オープンソースのマシンラーニングライブラリ「Apache Hivemall」で、すでにトレジャーデータサービスのマシンラーニング機能として提供されており、また、同社のエンジニアがApache Hivemallの開発に大きく貢献してきたという実績がある。

 「これまでのスコアリングでは、ロイヤルカスタマーにも、そうでない見込み顧客に対しても均等に労力を割かざるを得なかった。そうした無駄を予測リードスコアリングで省き、ロイヤルカスタマーとなる顧客を効率的に見つけ出すことが可能になる。すでに7、8社の顧客にこの機能をテストしてもらったが、保険やメディア、小売りといった業界で高い成果を上げることができた」(太田CTO)

新機能の予測リードスコアリング機能を活用したアーリーアダプタの実績。多くの企業でアップセルやクロスセル、契約リスクの試算などで大きな効果があらわれた

 また今回のアップデートでは、エンタープライズ向けにセキュリティの大幅な強化を図っている点にも注目される。

 同社はすでにISO 27001やTRUSTe認証、Privacy Shieldなど多くのコンプライアンスプログラムを取得しており、「セキュリティには相当の投資」(太田CTO)を継続してきたが、今回は新たなセキュリティプログラムとして、顧客のデータセンターとトレジャーデータのネットワーク間をVPN対応する「プライベートコネクト」、データのアクセス履歴を完全に把握する「監査レポート」を追加している。

 個人情報の取り扱いに関しては、日本だけでなく、米国や欧州でも規制が厳格化する方向にあるが、今回のTreasure CDPのセキュリティ強化は、そうしたトレンドにあってもエンタープライズユーザーがより安全にデータを活用できる環境であることを、あらためて強調した格好だ。

Treasure CDPのもうひとつの機能強化はセキュリティ。特にプライベートコネクトは、顧客のデータセンターとトレジャーデータの間をインターネットに出ることなく接続するので、データの安全性がより高められることになる

 トレジャーデータは2013年5月に日本法人を設立し、間もなく5周年を迎えるが、同社はこれを記念して2月19日~21日の3日間に渡り、東京・丸の内でデジタルマーケティングイベント「TREASURE DATA "PLAZMA" 2018」を開催する。

 2016年春にTreasure CDP(当時はTreasure DMP)が資生堂に採用された事例を皮切りに、Treasure CDPをデジタルマーケティングのプラットフォームとして採用するケースが大手企業を中心に劇的に増加し、ここ1、2年のトレジャーデータは"デジタルマーケティングの会社"として位置づけされることも少なくない。

2016年に資生堂に採用されて以来、マーケティングソリューションとして導入されることが増えたTreasure CDPだが、最近ではメディア企業での導入が目立つ

 そして芳川CEOも太田CTOもその流れを否定することはない。実際、トレジャーデータ自身もマーケティングビジネスへの注力を鮮明にしており、その一環として4月からデジタルマーケティングの学習教材をパートナー企業と組んで提供する予定となっている。

 「マーケティングの会社になろうと思っていたわけではないが、顧客がTreasure CDPによりデジタルマーケティングへと踏み出し、さらにその先のデータ活用へとつなげてくれるなら、その流れをベンダとして支援したい」(太田CTO)。

 エンタープライズ企業が効率的で精度の高いデジタルマーケティングを安心安全に行うことを主眼とした今回のアップデートと同時に、デジタルマーケティングのイベントを大々的に行うトレジャーデータだが、ゴールは当然ながらその先にある。

 「あらゆるデータを統合し、どんなソフトウェアとも連携できるのがTreasure Data CDPの最大の強み。これまで、地味に土管をつなぐような作業をひたすら繰り返してプラットフォームを作り上げてきた。そして要件が複雑になればなるほど、その強みはさらに発揮される。現在はたまたま、デジタルマーケティングという分野でその強みが生かされているだけ」という太田CTOの言葉には、どんなデータでもつないでみせるという強い自信を感じさせる。

 AIやデジタルマーケティングといったはやりのトレンドに乗っているようで、決してトレンドに左右されずに、データを通すための"土管"を地味につないでいく――。トレジャーデータの強さは、そうしたところにもあらわれている。