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Veeamが「企業のクラウド利用動向」結果を発表 クラウドが重要なデータのワークロードに利用されていることが明らかに

 ヴィーム・ソフトウェア株式会社は、世界の企業を対象に行った調査「企業のクラウド利用動向」の結果を発表し、8月25日に説明会を開催した。

 調査を統括した米Veeam Software エンタープライズ戦略担当バイスプレジデント デイブ・ラッセル氏は、「初期段階では、クラウド利用は開発用、ディザスタリカバリ(DR)といった用途とされていたが、調査ではディザスタリカバリなどセカンダリ保存先として利用している企業は21%にとどまり、逆に特にプライオリティが高いワークロードでの利用が47%、通常のワークロード利用が55%と大きく上回っている。しかも、利用期間が24カ月以上前からという回答が41%と最も割合が高い」とクラウドを活用したデータバックアップは企業の日常のIT業務に欠かせないものとなっていることがあらわれた調査結果となった。

米Veeam Software エンタープライズ戦略担当バイスプレジデント デイブ・ラッセル氏

 また、日常的に利用するSaaSであるOffice 365のバックアップに対しての調査では、「偶発的なミスを防ぐためにバックアップ導入の必要性がある」との回答が多かったのに対し、コンテナ利用時には「バックアップの必要性はない」との回答が多く、利用するものの技術や利用者数などでバックアップに対する意識が異なることが明らかになった。

物理サーバー、仮想サーバー、クラウド型サーバーの利用状況

 今回の調査は2020年11月、企業がクラウドを実装する際、意思決定を行う立場にある人を対象に行われ、全世界で1550人が回答した。

 まず、物理サーバー、仮想サーバー、クラウド型サーバーの利用状況について、同じ質問を2020年、2021年、さらに予測として2022年、2023年にはどうなっているのか質問した。

 その結果、物理サーバー(向かって左の棒グラフ)に関しては2020年の38%から、徐々に減少していくという予想となっている。

 仮想サーバー(向かって真ん中の棒グラフ)は、2020年から2022年までは30%、2021年から2023年までは23/24%と、横ばいで推移すると予想。2021年から2023年にかけては23/24%になると予想されている。

 クラウド型サーバー(右の棒グラフ)は2023年には全サーバーの半分近くまで増加すると予想されている。

 「物理サーバー、仮想サーバー、クラウド上のサーバーの利用予想を聞いたところ、物理サーバーは2020年時点の予想である『2年後に9%減』から、2年待つことなく『1年後に9%減』という、予想を上回る速度での減少となった。仮想サーバーは横ばいから若干減るのではないかと予想されていたが、それが予想以上に減少していたことが明らかになった。これだけ物理サーバーが減り、仮想サーバーも減り、クラウド上のサーバーが増加する結果となった。この傾向から、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドの世界が広がっていると見ることができる」(ラッセル氏)。

どのようなユースケースでIaaSを利用しているか?

 IaaSについては、「あなたの所属する組織は、どのようなユースケースでクラウドホスト型のインフラを利用していますか?」という質問を行った。

 その結果、「ディザスタリカバリなどセカンドバックアップ先」としての利用は21%、「ハイプライオリティなワークロードのバックアップ用」が47%、「日常的なワークロードのバックアップ用」が55%、「開発用」が36%という結果となった。利用期間としても41%が24カ月以上利用していると回答している。

 「クラウドは開発用、ディザスタリカバリのバックアップ用と言われていたが、その状況は大きく変わっていることを示している。利用期間についても、24カ月以上利用しているという回答が最も多く、企業にとってクラウドは日常利用するインフラとして定着していることをあらわしている」(ラッセル氏)。

 なお、地域を限定した調査結果としては、24カ月以上という回答がグローバル平均では41%であるのに対し、日本含むアジア・パシフィック(APJ)地域は56%と、全世界平均を上回る定着ぶりとなっている。

 なお、ワールドワイドの調査結果とAPJ地域との比較は、ほかの調査でも行っている。「クラウドで開発したワークロードをクラウドのホストからほかのものに移したか?」という質問に対しては、グローバル平均とAPJとを比較すると、「クラウド上で開発を行ったものをクラウド上で活用していく計画がある」という組織は、グローバルよりもAPJの方が高いという結果だという。

 また、クラウドをディザスタリカバリ(DR)に活用することに対しては、「専用のDRaaS=目的に応じたDRを利用している」という答えは、グローバルでは27%。APJはそれよりも高いパーセントとなっている。

 DRに関して、日本の利用者の回答がグローバル平均と大きく異なったのが、「DR機能を使って、どのようにデータ回復を行うのか?」という質問への回答。「オンプレミスにデータを戻す」という回答は、グローバル平均では25%だったが、日本の利用者はそれよりも多くの利用者がオンプレミスにデータを戻すと回答しているという。

 DRを活用する際の課題としては、グローバル平均では「テスト時のネットワーク構成」が54%と最も高く、2番目が「企業内のコネクティビティ」で47%だった。これがAPJでは「企業内のコネクティビティ」がダントツに高い数値となったという。グローバルで43%の3位となった「サイバー攻撃やアクセスからのリモートサイトの保護」もAPJの方が高かった。

Office 365のバックアップに関する調査

 今回のアンケートでは、マイクロソフトのSaaSである「Office 365」のバックアップについても調査を行った。

 まず、SaaS管理者、バックアップ管理者のいずれがイニシアチブを持ってバックアップを行っているのかを明らかにするため、「Office 365のデータバックアップの責任者は誰か?」という質問を行った。その結果、SaaS関連の管理者が権限を持つことが多いという傾向が出ているという。しかし、「バック管理しているのは誰か?」に関してはSaaS管理者、バックアップ管理者ほぼ半々という結果となった。

 「そもそもOffice 365のデータバックアップを行っているのは、どういう理由からか?」という質問を行ったところ、「さまざまな要因があり、クラウドやSaaS活用にさまざまな課題を持ちながら運用を行っている様子が答えから明らかになった」とラッセル氏は指摘する。

 多くの組織がさまざまな課題を持つ中で、Office 365をバックアップする理由として最も多かったのは、「偶発的にデータを削除した経験がある」だった。2位、3位はサイバー攻撃によるデータ消失だったが、「それを上回るのが偶発的なデータ削除、いわゆるうっかりミスだったという点は、少しユーモラスな印象を受けた」とラッセル氏は話す。SaaSとはいえ、うっかりデータを消した経験を多くの人がしている結果といえるだろう。

 アプリケーション管理者とデータバックアップ管理者の差異がはっきりあらわれたのが、コンプライアンス、もしくは規制におけるレギュレーションという面でアプリケーション管理者の方が懸念事項としてあげている比率が高く、温度差があることが明らかになった。社内のデータ保持についても同様の結果となった。

コンテナのバックアップに関する調査

 コンテナに対しての調査では、IaaS管理者、バックアップ管理者、SaaS/PaaS管理者のそれぞれに「コンテナをどのようにバックアップしているのか?」という質問を行った。その結果、「コンテナはデータ保護をしなくても大丈夫」という答えは、IaaS管理者が21%、バックアップ管理者が19%、SaaS/PaaS管理者が12%となった。逆に「サードパーティ製ツールを使い、バックアップを行っている」という回答はまだ少数で、IaaS管理者は5%、バックアップ管理者が7%、SaaS/PaaS管理者が12%にとどまっている。

 ラッセル氏は今回のアンケート調査全体から感じた感想として、「APJはグローバル以上に2年以上前からクラウドを本格活用しているという回答が多かった。いろいろな技術を駆使されていることが調査結果から明らかになったと感じている。特に日本はクラウドのデータバックアップ先に、テープを活用しているという回答がほかの地域よりも多かった。これは日本の特色といえるのではないか」と締めくくった。