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ヴィーム・ソフトウェアが2023年度の事業戦略発表 医療、製造業、教育、自治体を重点業種に
2023年4月13日 06:15
ヴィーム・ソフトウェア株式会社は12日、2023年度の事業戦略を発表した。執行役員社長の古館正清氏は、「データバックアップ市場でグローバルではトップと肩を並べる位置となり、国内ではナンバー3となっている。来年度に2位、2年後に1位を目指す」とシェア拡大に意欲を見せた。
- 初出時、“国内ではナンバー2”としておりましたが、順位に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
その上で2023年度の事業戦略として、「OEMサポートビジネス開始」、「チャネルパートナービジネスの拡大」、「地域拠点の拡大強化」、「日本向け業界別ソリューション提供」の4点を実施する。
特に日本で被害が続くランサムウェア対策のニーズが高い、医療、製造、教育、自治体という4つの業界に対し、業界別課題に応じたバックアップ環境構築を支援する情報提供などを行っていく。
古館社長は、「当社の強みは、ソフトで統合的なバックアップ環境を構築できる点。アプライアンスにバックアップするソリューションを提供するベンダーもあるが、例えば医療業界は電子カルテ、診療システム、報酬計算がそれぞれ異なるベンダー製品が導入されている。アプライアンスの場合、システムごとに導入する必要があるものの、われわれはソフトを提供しているので、バックアップ用サーバーだけ用意してもらえば全システムをカバーできる。こういう現実的なランサムウェア対策を提供できる点が特徴であり、強み」と、現実的な業界別ランサムウェア対策を提供できる点を強みとして訴えていくと説明した。
また古館社長は、「当社のシェアが世界、日本で拡大している要因は、システム全体を統合バックアップできる点にある。これまでのバックアップは、サブシステム単位の、サイロ化されたバックアップだったのに対し、当社は全システムを一元的にバックアップする統合バックアップを実現することができる」と説明する。
毎年実施している調査をまとめた、「2023 データプロテクションレポート」で、クラウドのセキュリティに不安を持つユーザーが95%、ランサムウェアによる攻撃を1回でも受けたことがあるユーザーが85%、システム停止発生後に手作業でデータ復元を行っている企業の割合が82%となった。こうした結果から、データバックアップ見直しニーズがあると判断した。
2022年までは第1ステージとして、エンタープライズビジネス拡大を図り、大手通信キャリア、大手銀行、大手グローバル製造業などを顧客として獲得した。パートナービジネス基盤確立として2500社以上の顧客を獲得した。サービスプロバイダービジネス拡大のために、100社以上のサービスプロバイダーとの取引を開始した。地方拠点として、大阪支社、名古屋支社を設立した。
「組織体制強化では、チャネルパートナービジネス拡大ができる人材として、元アクロニス・ジャパンの社長だった大岩憲三をヴィーム・ソフトウェアの副社長に迎え、チャネルパートナービジネス担当副社長としてビジネス拡大を進めている」(古館社長)。
2023年度は商品を提供する環境を強化する。OEMサポートビジネス開始は、OEMパートナーとの関係を強化する。それに伴い、日本で実施しているサポート体制を大幅に強化し、サポート人員を従来の5倍とする。日本で対応できるサポートレベルも引き上げ、難易度が高いサポートが必要なケースも含め、日本で解決できるケースを増やしていく。
チャネルパートナービジネスの拡大は、大手チャネルパートナーとの連携を強化する。SMB向けビジネスの拡大を狙い、提携を積極的に進める。チャネルパートナーの1社であるネットワールドとは、2022年に国内初の「Veeam認定教育センター」を開設した。これはVeeam製品を取り扱うエンジニアのレベルを向上させることで、エンドユーザーに質の高いVeeam環境を提案・構築できる環境を作ることが目的となっている。
「同様に教育を行う仕組みをさらに拡充させる。リセラーの教育も行い、国内で質の高いVeeam環境構築ができる人員を増やしていきたい」(古館社長)。
地域拠点の拡大は、新たに九州地区に拠点を置くことを計画している。大阪、名古屋に続く3つ目の地域拠点となる。
業界別ソリューションの提供では、注力業界として医療、製造業、教育、自治体を注力業種とする。さらに、パートナー企業と連携し、業界別に特化したサービスを拡大する。各業界で異なる課題やシステム環境に対応するために、各業界に特化したウェブページの制作し、業界の課題、バックアップ環境構築のステップ、導入・運用事例、Q&Aを紹介するなど情報発信を行っていく。
「各業界向けに、その業界に特化したわかりやすい情報発信を行っていくことで、実感を持ってバックアップソリューション導入の必要性をアピールしていく」(古館社長)。
Veeam Data Platform強化のポイント
2023年2月には「Veeam Backup & Replication v12」を基盤に、ダイレクトなオブジェクトストレージバックアップ、高度なサイバーレジリエンス、ハイブリッドクラウドのデータ保護を含む500以上の新機能と機能拡張を追加した「Veeam Data Platform」を発表した。
この製品について、ヴィーム・ソフトウェアのソリューションアーキテクトである高橋正裕氏が、「新機能だけで100以上あるので、どんな点が機能強化されているのかポイントを紹介する」と概要を紹介した。
Veeam Data Platformには、サポートする製品コンポーネントがVeeam Backup & Replicationのバックアップと復元、Veeam ONEの監視と分析、Veeam Recovery Orchestratorのリカバリオーケストレーション――といった3種類がある。
エディションとして、Premiumは3種類すべてを搭載。Advancedはバックアップと復元、監視と分析を、Foundationはバックアップと復元のみを搭載している。
「利用する場合には、いずれかのエディションを選び、さらにVeeamプラットフォームの拡張機能を追加して利用することが可能となる」(高橋氏)。
今回の記者会見では、「あらゆるワークロードのデータ保護するバックアップオペレーションとしての利用」、「データ保護環境のモニタリング、レポートを行うデータマネジメント」、「いざとなったときの回復操作の手順化、自動化を継続するリカバリオーケストレーション」に関する機能強化点が紹介された。
バックアップオペレーションでは、Veeam Backup & Replication v12のデータセキュリティ機能が強化され、イミュータブル(変更不可)バックアップオプションをすべてのワークロードで行うことが可能となった。
「実は。Veeam製品の前バージョンまでは、“できそうで、できないこと”が何点かあったが、今回のバージョンアップで、そのほとんどができるようになった。その1つが、イミュータブルバックアップオプション。前のバージョンでは、仮想マシンしか、イミュータブルストレージに入れなかったが、今回のバージョンから、NAS、トランザクションログ、エンタープライズアプリケーション、クラウドネイティブのバックアップまでできるようになった」(高橋氏)。
さらに、Microsoft Azure Blobストレージでのイミュータブルバックアップ、HPE StoreOnceでのイミュータブルバックアップにも対応している。大規模環境のための強化リポジトリとして、専用のリポジトリタイプとユーザーエクスペリエンス、強化リポジトリのコンポーネントの更新にSSHが不要になった。
また、バックアップ先として、オブジェクトストレージへのダイレクトバックアップ、オンプレミスのオブジェクトストレージ、クラウドのオブジェクトストレージのいずれも利用できるようになるなど、データの自由度も増した。データ管理の自由度も増し、運用段階の操作がシンプルになった。ポリシーのようなジョブ、両方のメリットをいいとこ取りすることができる。
さらに、組み込みのバックアップ移動エンジン「VeeaMover」が搭載されたほか、ワークロード配置の自由度も、クラウド統合型エージェントの搭載によって向上した。ネットワークレスの検出と導入、動的な保護範囲、クラウド内のデータフローなどを実現している。
データマネジメント機能も大幅に強化された。ジョブカレンダーとダッシュボードにより、何時、どんなことが起こったかを可視化したことで、任意の時点で発生しているバックアップタスクを確実に把握できる。公式REST APIをサポートし、自動化とサードパーティとの統合によって、柔軟性とパワーの向上実現と、厳しさを増す規制に対応するためのセキュリティ強化を実現した。
リカバリオーケストレーションは、データにいざという事態が起こった際、回復操作の手順化、自動化を継続して行う。「多くの場合、いざという事態が起こって、復元作業をしたことがない人が多い。そこで回復操作の手順と自動化によって、不測の事態が起こったとしても間違いなく復元作業を行うことができる」(高橋氏)。
ランサムウェア攻撃を受けてしまった場合でも、データ復旧作業までサポートすることで、業務への影響を最小限に抑えるためのサポートを行う。
また、導入前にはランサムウェアアセスメントとして、Veeam ONEコンサルティングを行うことを提案している。さらに導入後には、ヘルスチェックツールを動作させ、改善点を案内するコンサルティングも実施する。導入前から導入後まで、フルサポートすることでユーザーのデータに関する環境をトータルサポートしていく。