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カスペルスキーの2021年度事業方針、「新トレーニング基盤でセキュリティ意識の向上を」

 株式会社カスペルスキーは24日、2021年度事業方針説明会を開催した。まず同社 代表取締役社長の藤岡健氏が2020年度を振り返り、全社での業績が前年比7%増となったと述べた。

 カスペルスキーでは、コンシューマー事業、法人事業、そしてISPやメーカーとのタイアップで実施するアライアンス事業の3分野で事業を展開しているが、「2020年度は、コンシューマー事業が前年比5%増、法人事業が同20%増、アライアンス事業が同2%増だった」(藤岡氏)という。

カスペルスキー 代表取締役社長 藤岡健氏

 コンシューマー事業は、コロナ禍で在宅勤務が浸透し、ダウンロードビジネスが大きく伸長した。法人事業は、中小企業が13%増、大手企業が28%増となり、「特に中小企業は新規顧客が38%増と、大幅に増加した」という。アライアンス事業では、「モバイルバンキングのセキュリティ強化や、在宅勤務などの環境変化でVPNソリューションのアドオンの需要が高まった」とのこと。

 なお藤岡氏によると、2018~2020年にかけてはすべての事業で2桁成長を遂げており、「この2年で全社の業績が22%増となった」と語る。

2021年度の方針

 2021年度の事業展開については、「新製品と成長分野に取り組み、新しいエンドポイントセキュリティフレームワークを推進する。また、高難度化する標的型攻撃に対応するほか、ビジネスパートナーとのエコシステムを強化する。そして、日本市場対応の製品をリリースし、人材育成プログラムも展開する」(藤岡氏)という。

2021年度の施策

 コンシューマー事業では、新規顧客獲得と更新ビジネスの促進に注力する。特に「ゲーミング市場や教育機関に向けプロモーションを行うなどして積極的に展開する」と藤岡氏。また、パスワード管理製品などの新製品を市場投入するほか、モバイル向けセキュリティ製品も拡充する。

 アライアンス事業では、IoT関連ソリューションを柱とし、国内IoTベンダーや大手ISPとの連携を強化、組み込み型セキュリティを中心に展開する。また、新規ISPと協業して他社製品からの移行を推進するほか、「パスワード管理やVPN管理、iOS関連製品などを複合させ、より使いやすいセキュリティ環境を用意する」としている。

コンシューマー事業について
アライアンス事業について

 法人向け事業では、パートナープログラム推進するなどして、ビジネスパートナーとのエコシステムを強化する。その上で、新世代のエンドポイントセキュリティフレームワークを推進し、高度なサイバー脅威に対抗できるソリューションの展開と人材育成に注力する。

法人事業について

 新世代のエンドポイントセキュリティフレームワークについて藤岡氏は、「セキュリティ対策には検討すべき要素が数多い。すべての要素がすき間なく組み合わさったものを選択できれば理想的だが、必ずしもきれいな組み合わせになるとは限らず、そこで生じるすき間にワークロードやコストがかかる。そのすき間を埋めるべく、一貫して次世代アンチウイルスから、他社とのコラボレーションを含めた脆弱性管理、そして最終的に侵入後の検知・対処をするEDRまでを、ひとつのフレームワークとして推進する」と語る。

 また、「セキュリティ対策として製品を導入することも重要だが、インシデントが発生した場合には初動や対処の仕方が重要だ」と藤岡氏は述べ、「カスペルスキーが展開する人材育成プログラムを活用してもらいたい」とした。

新世代エンドポイントセキュリティ

新たなトレーニングプラットフォームを発表

 カスペルスキー 専務執行役員の宮橋一郎氏は、「数年前までは高度なAPT攻撃グループだけが行っていたような手法が、今では金銭搾取を目的とした日本の犯罪者にも広がるという恐ろしい状況になっている」と、現在の脅威状況を語る。ただし、セキュリティ対策に関する提言としては、「高度なセキュリティツールを導入するようアドバイスすることもあるが、ほとんどの提言は基本的なことばかり」だという。

 中でも、「すべての従業員、管理職、経営層のセキュリティ意識を高め、日常業務や生活行動にセキュリティ順守が組み込まれた状態を作り出さなくてはならない。そのために定期的なトレーニングを実施すべきだ」と宮橋氏。

カスペルスキー 専務執行役員 宮橋一郎氏

 そこでカスペルスキーでは、組織全体のサイバー攻撃耐性を高めるためのトレーニングとして、ゲーム形式のサイバー演習「Kaspersky Interactive Protection Simulation」(KIPS)を数年前より提供している。これは、実際のインシデントに基づいたゲームによって参加意識を高め、多面的で実践的なトレーニングを繰り返すことによって日常業務や生活にセキュリティ行動を根付かせるというものだ。

 これに加え、カスペルスキーでは同日新たにオンライントレーニングプラットフォーム「Kaspersky Automated Security Awareness Platform」(KASAP)を発表した。同プラットフォームには、トピックスとセキュリティエリアごとに350以上のレッスンや補習、テストと実践演習が用意されているという。

カスペルスキーが提供するトレーニング

 カスペルスキー マーケティング部長の金野隆氏は、「多くの企業がセキュリティ意識の向上に取り組んでいるが、受講者側は活用意識が低く、知識も定着しにくいなどの課題を抱えている。管理者側も実施計画やプログラムの作成、進捗管理などが大変だ」と述べ、KASAPによってこのような課題が解決できるとしている。

 KASAPの日本語サービスは、9月に提供開始する予定だ。ライセンス価格は、受講者1人につき年額6900円(税別)から。5ライセンスから購入可能で、30日間のトライアルも用意している。

 KASAPについて金野氏は、「カスペルスキーのサイバー脅威の情報収集と分析、研究による脅威インテリジェンスを活用したコンテンツが用意されている。最新のサイバー脅威の傾向や実例に基づいて定期的にコンテンツをアップデートしていることから、最新の攻撃にも備えられる」としている。

カスペルスキー マーケティング部長 金野隆氏
KASAPの価格