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カスペルスキー、法人向けにサンドボックス/EDR製品を発表

2020年度下期はセキュリティ対策の自動化・省力化の推進などを図る

 株式会社カスペルスキーは18日、日本市場での2020年度下期の事業方針説明会をオンラインで開催した。あわせて、法人向け新製品として、サンドボックス製品「Kaspersky Sandbox」とEDR製品「Kaspersky Endpoint Detection and Response Optimum」(以下、Kaspersky EDR Optimum)を7月13日から提供開始することを発表した。

 カスペルスキーは、2019年1月に藤岡健氏が代表取締役社長に就任して以来、3年後の2021年に売上高を2.5倍にするという目標に向けて、コンシューマ事業、法人事業、それぞれで成長戦略を推進している。

 コンシューマ事業では、製品ラインアップの拡充、ブランドマーケティングの強化、サブスクリプションビジネスの推進により、3年後の売上高を2倍にする。法人事業では、パートナーとの協業によるSMBビジネスの展開、エンタープライズ市場における高度なサイバー脅威に対抗できるソリューション展開と人材育成、xSP/IoT市場でのサブスクリプションおよびOEM事業の拡大、ビジネスパートナーとのエコシステム強化や営業体制の強化により、3年後に売上高を3倍にすることを目指している。

 藤岡氏は、2019年度の業績について、「全社での売上高は前年比13%増を達成した。事業別では、コンシューマ事業が前年比18%増、法人事業が前年比11%増となった。コンシューマ事業は、販売チャネル経由のビジネスが躍進したほか、サブスクリプションモデルの販売がスタートした。法人事業は、中小企業向けビジネスが前年比12%増と堅調に推移。大手企業向けビジネスはサービスビジネスが加速し、前年比33%増となった。特に、行政機関やSOCサービスへの脅威インテリジェンスサービスが浸透した」と振り返り、「3年後の目標達成に向けて、非常に良いスタートを切ることができた」との考えを示した。

カスペルスキー 代表取締役社長の藤岡健氏

 また、2019年から2020年のサイバー脅威の傾向にも言及し、「ランサムウェアの標的が個人から組織にシフト」、「攻撃方法の高度化」、「モバイルデバイスへの攻撃を重視」の3つを挙げ、「新型コロナウイルス対策のために急きょリモートワークを導入したことで、外部から社内サービスへアクセスする必要が生じ、その結果、サイバーセキュリティが脆弱な状態となり、ここを狙う攻撃が増加している。また、標的型ランサムウェアやEMOTETなど、組織を標的とするサイバー攻撃が多発しており、予見から防御、検知、対処までを迅速に実行するためのセキュリティ対策が急務となっている」と指摘した。

2019年から2020年のサイバー脅威の傾向

 こうした状況を踏まえて、藤岡氏は、2020年度下期に向けた重点施策として、(1)セキュリティ対策の自動化・省力化の推進、(2)クラウドベースソリューションの推進、(3)脅威インテリジェンスサービスの浸透、(4)パートナーとのエコシステム強化、(5)日本市場対応の整備を加速――、の5つに注力する方針を明らかにした。

 法人事業の主な取り組みとしては、パートナーとのエコシステム強化に向けてUnitedパートナープログラムを推進するとともに、リモートによる営業活動支援のためのインフラ整備を行う。

 SMB市場では、カスペルスキーフリークラウドの展開を推進し、テレワーク環境への対応を支援する。エンタープライズ市場では、インシデント対応の自動化・省力化の推進とともに、脅威別に細分化された製品・サービスの浸透を図る。また、複雑化・高度化する脅威へ対抗するための人材育成プログラムを提供する。

 xSP/IoT市場については、アドオンサービスの共同開発を行うほか、社会インフラおよび関連機器へのOEM事業をさらに推進していく。

 コンシューマ事業の主な取り組みとしては、新規顧客の獲得に向けて、自社サイトや各販売店でのプロモーションを強化するとともに、インターネット広告の最適化および効果の最大化を図る。また、自社サイトにおける小規模事業者向け製品の購入オプションを拡充。モバイルチャネルとの連携も強化していく。更新ビジネスについては、既存ユーザーへのコミュニケーションを改善。ユーザー体験の最適化を推進し、さらなる満足度向上を図る。製品戦略では、6月末にパスワード管理製品を新たに投入するほか、6月からamazonでもサブスクリプションを販売開始する予定となっている。

法人向けの新製品を発表

 またカスペルスキーでは、法人向けの新製品として、7月13日からサンドボックス製品「Kaspersky Sandbox」とEDR製品「Kaspersky EDR Optimum」を提供開始する。

 「Kaspersky Sandbox」は、不審なオブジェクトを自動でサンドボックス解析する製品。「Kaspersky EDR Optimum」は、法人向けエンドポイントセキュリティ製品の「Kaspersky Endpoint Security for Business」と連携し、自動化されたEDR機能で新たなサイバー脅威を迅速に検知、分析して、PCやサーバーなどのエンドポイントを保護する。これらの製品を統合して利用することで、ITセキュリティのスキル不足に悩む企業でも高度なセキュリティを実現することができるという。

 カスペルスキー マーケティングマネージャーの高木信光氏は、新製品を投入する背景について、「サイバー攻撃はさらに高度化しており、企業の被害額・攻撃回数も増大し続けている。そして、サイバー攻撃の起点になっているのがエンドポイントである。しかし、多くの企業では、十分な専門知識がない、予算に制約がある、複雑性が増加するなどの課題から、エンドポイントセキュリティを強化できていないのが実情だ」と説明する。

カスペルスキー マーケティングマネージャーの高木信光氏

 「今回、新たに提供するサンドボックス製品『Kaspersky Sandbox』とEDR製品『Kaspersky EDR Optimum』、さらにエンドポイントセキュリティ製品『Kaspersky Endpoint Security for Business』を連携することで、エンドポイントセキュリティの統合ソリューションを実現する。これによって、次世代セキュリティによる強固な多層防御に加え、自動化された分析・検知による迅速な対応が可能となる。また、統合されたコンソールから、エンドポイントを一元的に管理することができる」(高木氏)と述べた。

サンドボックスとEDRの統合ソリューション

 新製品の主な機能としては、「Kaspersky Sandbox」は、「Kaspersky Endpoint Security for Business」が導入されたエンドポイントと連携して、不審なオブジェクトのサンドボックス解析を自動的に実行する。解析の結果、悪意のあるものと判定された場合は、自動でエンドポイントにその情報を展開し、速やかな防御を可能にする。スクロールやマウスクリックといった、エンドユーザーの操作をサンドボックスで再現することで、解析回避機能を備えた高度なマルウェアに対してもサンドボックス環境であることを判別させない。これにより、詳細な解析を実行することができる。さらに、最新のモジュールに定期的にアップデートされるため、新たな手法を用いたマルウェアにも対応できる。

「Kaspersky Sandbox」の特長

 「Kaspersky EDR Optimum」は、「Kaspersky Endpoint Security for Business」と連携し、自動化されたEDR機能を提供する。エンドポイントからの情報を収集、根本原因分析を自動で実行し、サイバー脅威の攻撃経路と脅威の情報をわかりやすく可視化。プロセスの停止やファイルの削除、隔離などの対応アクションが実行することができる。また、法人向けエンドポイントセキュリティ製品群を統合的に管理するツール「Kaspersky Security Center」によって、「Kaspersky EDR Optimum」で収集、分析したインシデントに関する情報を視覚的に表示することが可能。インシデント対応のアクションも簡単な操作で実行できる。さらに、攻撃を受けた企業内のエンドポイントがほかにないか調査することも容易で、企業内に潜む脅威を発見し、被害の拡大を防止することができる。

「Kaspersky EDR Optimum」の可視化と分析機能

 ライセンス価格(税別)は、「Kaspersky Sandbox」が63万5000円(新規1年1ライセンス2540円、新規最低購入数250ライセンス)から。「Kaspersky EDR Optimum」と「Kaspersky Endpoint Security for Business Advanced」のバンドルライセンスが22万200円(新規1年1ライセンス2万2020円、新規最低購入数10ライセンス)から。「Kaspersky EDR Optimum」のアドオンライセンスが5万800円(新規1年1ライセンス5080円、新規最低購入数10ライセンス)から。