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日本マイクロソフトが中堅・中小企業向けクラウド事業拡大策を発表、5年で10倍を目指す

 日本マイクロソフト株式会社は1日、中堅・中小企業(SMB)のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための取り組みを紹介する、プレス向け説明会を開催した。

 日本のSMBのDXは海外の先進国に比べ遅れているとされてきたが、昨年から続くコロナ禍で前向きに実践する企業も増えているという。マイクロソフトが支援策を進めることで、「現在のSMB向けクラウドビジネスの規模を、5年で10倍にすることを目指す」と、日本マイクロソフト 執行役員 コーポレートソリューション事業本部長の三上智子氏は宣言した。

SMBのDXを推進する3つの重点施策

 ビジネスを継続するためにさまざまな取り組みが行われ、Microsoft Teamsを使って対面による商談等を行う利用者が増加。その結果、2021年3月の1日あたりのTeams利用者数は、ワールドワイドの数字で1億4500万人となった。2020年3月の4400万人から3倍に増加したことになる。

 「この数字も日々増え続けるなど、DXが進む中、日本企業は海外に比べDXは遅れ気味となっている。さらに中小企業はDXが遅れているという状況となっている」(三上氏)という。

世界におけるTeams利用者は3倍に増えた

 マイクロソフトはSMBのDXを推進するために、3つの重点施策を実施している。

SMBのDX推進支援の取り組み

 1点目はハイブリッドワークの推進。今回のコロナ禍に限らず、天災等が起こったとしても事業継続ができる環境を作ってもらうために、デフォルトのコミュニケーションツールとしてTeamsの採用を促進しているとのことで、「Teamsは利用者数が急進しているが、日本の中小企業では4倍増と、世界を上回るペースで利用者が増えた」(三上氏)。

日本の中小企業におけるTeams利用者数は前年の4倍に増えたという

 また、Office製品についてもクラウド版の利用者が増えているとのことで、「いよいよクラウドがデファクトスタンダードとなりつつあると感じている」と述べた。

 ただし、「地方と都心部の格差が進んでいる。東京とそれ以外の地域で比べると、地方が20ポイント以上後れをとっている。お客さま自身やパートナーから上がってくる声でも、人材が足りない、どこから手をつけていいのかわからないといった戸惑いの声も聞こえてくる。地方にある企業の多くが、コロナとは関係なく高齢化による人材不足といった課題を持っていた。さらに日本企業の課題である生産性が低いという問題があったために、改善を進めることが待ったなしの状況にあった。デジタル活用は必須であったが、思うように実施できない状況にあった」とも指摘している。

地方におけるクラウドシフトの遅れと課題

 そこで地方の中小企業DXを実現するための重点施策を実施している。デジタルメディアでのアピールでは伝わらないこともあるため、その他のメディアも活用しMicrosoft 365とはどんなものか、導入することでどんなメリットがあるのかといった啓発活動を強化する。

 どう使っていくのか、費用面の心配といった最初の導入障壁を下げるための施策、具体的な導入時の課題をどう乗り越えるのかのTipsなども提供するという。

 また、導入を具体的に支えるパートナーの協力が不可欠であることから、パートナーとの連携も進める。4月22日に発表した「ITよろず相談センター」は、第一歩としてリモートワークを実施し、さらにDXのためのありとあらゆる相談に答えるものだ。マイクロソフトだけでは対応人材が足りないことから、SMBに強いパートナーSB C&S、大塚商会、KDDI、ダイワボウ情報システム、富士フイルムビジネスイノベーション、リコージャパンの6社と協力してセンター運営を進める。

 「こうした施策によって、Teams、M365が日本のSMBがビジネスをする上でデファクトスタンダードとすることを目標としていく」(三上氏)。

SMB向けのDXを支援する重点施策
ITよろず相談センターの全国展開

 2点目は、ビジネスプロセスのデジタル化だ。TeamsとつながるSaaSを拡大するとともに、SMBがSaaSを利用するケースが増えていることから、SMBでのSaaS利用支援を行っていく。

 「Teamsが日本の中小企業のデファクトスタンダードとなることで、連携するSaaSアプリケーションをリクルートし、Teamsからさまざまなアプリケーションにつなぐ世界を実現することを目指している。例えば、はんこを押すためだけに会社に出社するといった事態を回避するために、電子印鑑ソリューションであるクラウドサインとTeamsの連携ソリューションをSBテクノロジーから提供する。これを利用することで、Teams上で電子署名、署名した書類の格納まで一気に完了することができる」(三上氏)。

Teamsをソケットとしたプラットフォームを構築する
SMBのプラットフォームへ

 今後は、同様にTeamsと連携したSaaSを増やすべくリクルートを進める。さらに、SaaS未対応のISVに対して、SaaSアプリケーション化を支援する試みも進めるとしており、ダイワボウ情報システム(DIS)と連携し、全国の拠点に専任スタッフを設けて、ISVに対してクラウド化、SaaS化を呼びかけていく。

 すでに続々と成果が出ており、運送業向け業務システムなどを開発する鹿児島県の日本システム、石川県で原価管理システムを提供している建設ドットウェブ、兵庫県のA-ZipはレガシーなAccessツールをクラウドに移行するシステム、山形県のAsahi accounting Robot研究所はコグニティブサービスによる領収書などの自動仕訳を実現する。

DISと連携してISVパートナーのリクルートを進める

 3点目は、スタートアップ企業と連携したインダストリーDX。スタートアップ自身もSMBというカテゴリーとなるが、最先端技術を活用したビジネスを行っている企業が多いことから、最新技術を活用し、迅速に新しい技術開発を進めている。

 「自社だけではDX実現は難しいので、実はは、スタートアップ企業との連携を模索しているSMBが多い」と三上氏は指摘する。

 日本マイクロソフトでは、「THE CONNECT」の名称でスタートアップ企業を支援しており、現在までに132社のスタートアップ企業を支援した実績を持つ。「さらに支援企業を増やしていくことを考えている」(三上氏)という。

スタートアップ企業とのコラボレーションを加速

 支援実績があるスタートアップ企業として紹介されたのは、医療システムの構築を行うTXP Medical株式会社、リーガルテクノロジーを開発する株式会社リセ、建設業やメンテナンスなど現場改善を進める株式会社クアンド、テクノロジーを用いたサプライチェーンの最適化を目指す株式会社トライエッティングの4社。

 「今回紹介したのはSMBから引き合いが多い4社。こうした可能性があるスタートアップ企業への支援をさらに進め、5年後には500社と連携することを目指していく。また、大企業との連携実現も進めていきたい」と目標を掲げる。

 こうした施策を進めることで、「5年後にはSMB向けクラウドビジネスの規模を、現在の10倍まで拡大することを目指したい」と三上氏は説明した。

THE CONNECTの展望