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日本マイクロソフトが中堅中小企業向けの取り組みを説明、4つ目の注力点としてセキュリティを追加
Microsoft Defender for Businessを新たに提供
2022年6月2日 06:30
日本マイクロソフト株式会社は1日、中堅中小企業向けの取り組みについて説明した。
同社では、2021年6月に発表した中堅中小企業向け事業戦略で、2025年までに中小企業向けビジネスを10倍に拡大することや、DX支援の取り組みとして、Microsoft Teamsをデフォルトのコミュニケーションツールに位置づけることを目指す「ハイブリッドワークの推進」、Microsoft TeamsとつながるSaaSサービスの急拡大による「ビジネスプロセスのデジタル化」、さらに、「スタートアップ企業と連携したインダストリーDX」を重点施策に掲げており、今回は、その進捗状況についても触れた。
日本マイクロソフト 執行役員 常務 コーポレートソリューション事業本部長兼デジタルセールス事業本部長の三上智子氏は、「中堅中小企業は、日本の99.7%を占める。デジタルを活用することで、生産を高めたり、稼ぎ方改革につなげたり、元気になるための支援をしたい。2022年7月から始まる日本マイクロソフトの新年度においても、フルスロットルで中堅中小企業の支援を最大化する」と述べた。
ひとつめの「ハイブリッドワークの推進」では、2022年1月時点でのグローバルでの数字をもとに、Microsoft Teamsの広がりを説明した。これによると、月間利用者数は約2億7000万人に達し、Fortune 500 企業の90%以上がTeams電話を利用。会議室で利用するTeams Roomsのアクティブなデバイス数は2倍以上となり、現場の最前線で働くフロントラインワーカーのMicrosoft Teams利用数も2倍に増加していたという。
日本マイクロソフトの三上執行役員常務は、「新たな使い方が広がっており、使っているユーザーも広がっている」とした。
また、日本の中堅中小企業におけるクラウドシフトが進展し、前年比11ポイント増加していることを示した。
「東京エリアは、すでにクラウドがデフォルトになってきている。地方においても60%の企業がクラウドを選択している。クラウドが身近になってきた1年であった」としながら、「だが、東京と地方でのクラウドシフトのギャップは、依然として25ポイントもある。その背景には、社内の人材不足やスキル不足、どこから手をつけていいかわからない、誰に相談すればいいのかがわからないという課題がある。それを解決するための施策も展開していく必要がある」とする。
日本マイクロソフトでは、2021年4月に、ITよろず相談センターを開設。2万社の中堅中小企業と直接つながり、課題解決への取り組みと、クラウドシフトを支援してきたという。また地方都市では、地元テレビ局や地方紙への広告出稿を行い、オンライン以外の訴求方法でクラウドのメリットや用途提案、啓発活動を行ってきたとのこと。
「これらの活動を行った地域では、クラウドシフトが15ポイントも高まったという結果が出ている。活動を行わなかった地域では9ポイントの上昇にとどまっている。さらに、地域のパートナーとの連携も功を奏しており、地方のユーザーに寄り添う体制を敷くことで、課題解決の進展と、クラウドシフトの進展が見られている。今後も、オフラインメディアを通じた訴求活動の継続、地域パートナーとの連携強化、日本マイクロソフトがダイレクトにつながっていく活動を3本柱として取り組む」とした。
なお、ITよろず相談センターは、今後も継続していくという。
2つめの「ビジネスプロセスのデジタル化」では、1年間で約200社のISVのサービスが新たにMicrosoft Azure上に構築され、合計で約540社のサービスがAzure上で提供されていることを報告。また、Microsoft TeamsとつながるSaaSが拡大していることも強調した。
一例としてあげたのが、コミュニティオのTeamSuiteだ。チーム力を強化するための勤怠管理や日報機能、社員同士が感謝を伝えるステッカー機能などを提供。NECや東洋エンジニアリングなども採用している。
「今後も、ISVのソフトウェアのSaaS化の促進と、ソフトウェアのMicrosoft Teamsとの連携推進を行っていく」とした。
また、ローコード/ノーコードソリューションであるPower Platformの中堅中小企業での利用が進展。利用企業数は2.2倍に、売り上げは25倍に拡大したという。
「ハイブリッドワークを整えたのちに、業務プロセスをデジタル化したいというニーズがあり、Power Platformの活用が飛躍的に増加している。今後も中堅中小企業に使いやすい形で届けたい」と述べた。
さらに、「スタートアップ企業と連携したインダストリーDX」では、2026年6月までに500社のスタートアップ企業の支援を行う計画を打ち出していたが、この1年で新たに248社のスタートアップ企業が参画。2022年6月時点で380社への支援を行っているという。
「予想以上に進んでおり、2026年6月までの目標を1000社に上方修正する。プログラムそのものの認知度向上と、スタートアップのエコシステムにおけるパートナーとの連携が進んだことが想定以上の反響につながっている。スタートアップ企業の方から日本マイクロソフトに声をかけてもらうことも増えた。この勢いに乗って、さまざまなスタートアップ企業との連携を強化し、日本全体のDXに貢献したい」と述べた。
支援を行っている例として挙げたのが、スタートアップ企業であるメトロウェザーだ。同社では、高精度で風況情報を提供。1台で十数km先までの風況を3次元的に観測できるドップラーライダーと、Microsoft Azureを活用して、将来訪れるドローンによるエアモビリティ社会での安全、安心な都市生活の実現を目指しているという。
4つめの注力ポイントとしてセキュリティを追加
一方、中堅中小企業向けの新たな施策として、「高度化するサイバー攻撃への対応力強化」に取り組むことを発表した。
日本マイクロソフトの三上執行役員常務は、「ランサムウェアの攻撃は1年で150%増加しており、フィッシング攻撃は687%増加し、毎秒579件のパスワード攻撃が発生している。特に、中堅中小企業に対するサイバー攻撃が増加しており、リスクも高まっている。対処を怠った場合の想定被害額は5000万円を超える。また、大企業を狙うために、セキュリティ対策が弱い中堅中小企業を狙うサプライチェーン攻撃も増えている。ここでは、中堅中小企業は被害者ではあるものの、攻撃する側にまわってしまうことにもなる。改正個人情報保護法では、情報に対する責務が求められている。大企業だけでなく、中堅中小企業もサイバーセキュリティ対策を強化していかなくてはならない」と指摘した。
だが、実態を見ると、中堅中小企業がセキュリティ対策に踏み出しにくい環境にあることも浮き彫りになる。
神戸大学大学院の森井昌克教授は、「強力なウイルスが増加しており、システムの脆弱性を狙うマルウェアも増えている。いまは、侵入を防ぐのは100%難しいため、攻撃を受けたとしても、被害をゼロに近づけ、すぐに復旧するための対策が求められている。サプライチェーン攻撃は、最も弱い部分を攻めるものであり、そこで中小企業が狙われている。脆弱性管理やセキュリティ意識が低い運用管理者の意識につけ込むものであり、これからも増加するだろう。対策をしていない企業は狙われる確率が高まることのになる」と指摘しながら、「中小企業の最大の難点は、サイバー攻撃に気がつかないということであり、ある日突然発症して大きな被害にあうことになる。攻撃をいち早く発見して、対策を取ることが大切である」と警鐘を鳴らした。
日本マイクロソフトの三上執行役員常務は、「中堅中小企業は、ITに関する人材リソースが少ないことや、どうやっていいのかわからないという状況にある。また、セキュリティに対するコストがハードルになっている点も見逃せない。日本マイクロソフトでは、Microsoft Defender for Businessを提供することで、中堅中小企業のセキュリティ対策を支援していくことになる」と述べた。
Defender for Businessは、これまでスイート製品のなかに含まれていたが、単体製品とすることで、必要なときに購入しやすくしたほか、大企業が利用しているセキュリティ対策の仕組みを、安価で提供できる点が特徴であると訴えた。
「Windowsにはウイルス対策機能が標準搭載されているが、万が一、ウイルスが侵入した場合に、それを自動的に検知し、対応し、修復できるのがDefender for Businessとなる。中堅中小企業が持つリソース不足やコスト面での課題も解決できる決定版のソリューションになる」と自信をみせた。
Defender for Businessは、1ユーザーあたり月額363円(税込)で利用できる。Microsoft 365 Business Premiumには標準で搭載されている。
「Defender for Businessは、ペンタゴンの次に攻撃を多く受けているMicrosoft社内で使われているツールである。どのようなセキュリティ強化をしたいかで、製品を組み合わせてほしい」と述べた。
Defender for Businessの販売においては、10社の協賛パートナーと連携し、セキュリティ相談窓口やSOCサービスの提供と組み合わせた提案も行うという。
一方、DX相談窓口やコンサルティングの提供拠点となっているMicrosoft Baseの取り組みが、経済活動の再開とともに徐々に活発化してきたことにも触れ、「Microsoft Baseは、地域につながる重要な拠点になる。現在は、1都1府1道11県の17拠点で展開しているが、これを2023年6月までに全国47都道府県に拡大する。地域のパートナーが運営しているという特長も生かして、中堅中小企業のDXを推進し、コミュニティを広げたい」と語った。