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日本マイクロソフト、3つの基軸に基づきニューノーマル時代のSMB向け支援を提供

 日本マイクロソフト株式会社は11日、中堅・中小企業(SMB)向け支援策について説明。アフターコロナ時代に向けた3つの新基軸を打ち出し、それに準拠した各種施策に取り組む考えを示した。

 同社では、より多くのビジネス領域をリモートに変え、いまの社会を乗り越えていく「Remote Everything(より多くのコトをリモートに)」、ビジネスプロセスの自動化によって、さらに効率的で迅速な意思決定を行う「Automate Everywhere(すべてのコトを自動化で)」、データを用いた予測が、「いま」と「これから」の進むべき方向を示す「Simulate Anything(あらゆるコトに道しるべを)」の3つを新機軸として打ち出す一方で、これらに基づいた施策を展開。同時に、リモートワークの実施における障壁や課題を解決していく必要があるとした。

アフターコロナ:3つの新機軸

一度減少したリモートワーク実施比率が再び上昇へ

 日本マイクロソフト 執行役員 コーポレートソリューション事業本部長の三上智子氏は、オンライン会見の冒頭、Microsoft Teamsが1日に7500万人が利用されており、これが引き続き増加傾向にあること、Windows Virtual Desktopが3倍以上に達したこと、日本の中堅、中小企業の50%がリモートワークを利用したという、これまで発表してきた数値に再び触れながら、「日本では、緊急事態宣言が解除されて以降、リモートワークの実施状況は若干減少したが、第2波ともいえる感染者の拡大に伴って、再びリモートワークを実施する企業が増加している」と発言。日本における中小企業のリモートワークの最新状況について説明した。

日本マイクロソフト 執行役員 コーポレートソリューション事業本部長の三上智子氏

 同社の調査によると、5月11日時点では89%の中小企業がリモートワークを実施していたが、6月29日時点では52%に減少。だが、8月3日には70%、8月10日には68%にまで再び上昇しているという。

 「常に50%以上の企業でリモートワークが実施されているとともに、長期化することを視野に入れ、腰を据えて対策をしたり、リモートワークを新たな日常としてとらえたり、といった動きが見られている。中小企業から多くの問い合わせがある状況は変わらない」と述べる。

リモートワークが新しい日常へ

リモートワークの導入における障壁や課題が明確になってきた

 一方で「リモートワークの導入における障壁や課題が明確になってきた。これを解決することが中堅・中小企業におけるリモートワークの活用の促進につながる」とも話す。

 具体的な課題として、社員が一斉にリモートワークを実施することを前提にしたネットワーク設計をしていた企業が少なく、VPNがパンクしたといった事例に代表される「通信環境」、ハンコを押すために出社しなくてはならなかったり、そのために新たな環境での事業継続性が困難になったりする「紙ベースの業務フロー」、さまざまな場所から会社のデータにアクセスすることで発生する「セキュリティリスク」、リモートワークにあわせた働き方を想定して整備していなかった「就業規則」、店頭や工場などにおける「対面でのコミュニケーションが必須」、という5つの課題を挙げた。

 このうち「通信環境」では、78%の企業がインフラが整っていないと回答。「紙ベースの業務フロー」についても、見積書や受発注書のハンコのために出社を余儀なくされた決裁権限者や営業職は74%に達していることなどが示された。

リモートワークの対象拡大、導入における障壁 トップ5

 日本マイクロソフトの三上執行役員は、「新型コロナウイルスの早期終息が期待されているが、働き方については、いまを耐え忍んで終息を待つのか、今後、世の中が変わるということを前提に新しい働き方にあわせた対策を練るべきなのかといったことが、企業のとっての分岐点になる。直接、中小企業の声を聞いてみると、業務の効率化や事業の継続性を考えれば、『ニューノーマルに向けて何かしらの対策をしていかなくてはならない』と考えている企業が予想よりも多い」と述べた。

 日本マイクロソフトでは、こうした課題解決に向けて、VPNに依存しない通信環境、外線電話からのオンライン会議参加、申請承認フローアプリ、セキュリティ/機密情報リスク診断、クラウド経由による基幹システムへのアクセス、リモートワーク状況を把握するツールやテンプレートの提供、よりリアルに近い形でコミュニケーションをするためのヒントが得られるMicrosoft Teamsワークショップの開催といったオファリングを提供しているという。

 なお2020年4月からは、中小企業向けの電話サービス機能を提供しており、リモートワーク環境でも電話機能が利用できるように提案しているとのこと。

 また、2020年秋以降に搭載されるMicrosoft Teamsの新機能として、グリッドビューに比べて脳への負担を少なくし、集中力を継続できる「Togetherモード」、対話への反応を確認できる「ライブリアクション」、暗い場所でも明るく表示してくれる「ビデオフィルタ」を紹介。

 さらに同時期以降、Teams対応デバイスが続々と登場する予定であることを示し、「これらは顧客からのフィードバックを得て、追加した機能である。新たな機能と新たなデバイスによって、自宅での仕事空間をより快適にできる」とした。

Microsoft Teamsの新機能

ニューノーマル時代に向けて取り組むべき3つのフェーズ

 また、中堅・中小企業がニューノーマル時代に向けて取り組むべき、3つのフェーズを示してみせた。

 第1段階が、喫緊の状況に対処したリモートワークへの移行を行う「Response」であり、遠隔地からのオンライン会議や商談の実施、効率的なコラボレーションの実現、社内システムへの安全なアクセスなどがテーマとなる。

 第2段階は、事業回復への対応を行い、原状回復と復帰を目指す「Recovery」。紙ベースであったプロセスのデジタル化、セキュリティとガバナンスの強化、オペレーションの省人化および自動化、業務効率化とコスト削減に取り組むことになるという。

 そして、第3段階は、ニューノーマルの形成に向けた「Reimagine」で、事業戦略の革新的な改善、社員の意識や組織の風土、制度改革のほか、新規ビジネスの創出が含まれる。

 「いまは、多くの企業が第2段階にある。ただ、この3つのフェーズは、順番にやってくるわけではなく、より戻しにも対応しなくてはならない。これらの取り組みを回しながらチャレンジをしていく必要がある。日本マイクロソフトは、こうしたそれぞれのフェーズをとらえながら、ニューノーマル時代に向けた支援をしたい」と述べた。

ニューノーマルに向けた3つのフェーズ

2つの支援策で中堅・中小企業の事業継続を支援

 中堅・中小企業の事業継続に向けた具体的な支援策についても説明した。

 ひとつめは、中堅・中小企業向けのMicrosoft 365の新たなプラン「リモートワークスタータープラン」だ。8月から提供開始したプランで、従業員数50人以下の小規模企業を主要ターゲットに、現在、PCプレインストール版やオンプレミス版のOfficeを利用しているユーザーへのアドオンプランとして提案する。Microsoft TeamsやOneDriveにより、安全・安心にWeb会議をはじめたい、ファイルの保存や共有を簡単に行いたいといったニーズに応えるという。

 「日本独自のプランであり、OfficeアプリケーションはすでにPCに搭載されているので不要だが、Web会議やリモートワークをスタートしたいというユーザーに向けたものである。参考価格は、1ユーザーあたり399円。1日あたり13円で利用できる。マイクロソフト認定パートナーを通じて提供する。これをきっかけに、将来はMicrosoft 365に移行してもらいたいと考えている」(日本マイクロソフトの三上執行役員)。

リモートワークスタータープラン

 2つめは、2020年12月31日までの期間限定で「リモートワーク導入支援キャンペーン」を実施していること。Microsoft 365 Business BasicやMicrosoft 365 Business Standard、Microsoft 365 Business Premiumを新規導入する企業に、最大100万円のキャッシュバックを行う。

 なお、2020年10月13日にOffice 2010のサポートが終了することについても言及。「Windows 7のサポート終了時に多くの企業が移行をしているが、まだ移行が完了していない企業は、リモートワーク導入支援キャンペーンなどを活用して、Microsoft 365への移行を進めてほしい」と呼びかけた。

リモートワーク導入支援キャンペーン

2つの活用事例を紹介

 一方、会見では、中堅・中小企業の活用事例についても紹介した。

 独立系システムインテグレータのクレスコは、2020年3月から、Microsoft Teamsを使用した在宅勤務を開始。社員の8割以上がリモートワークに移行するとともに、取引先にもリモート環境の整備を提案したという。

 4月に「社長チャネル」を設置し、社長から社員に思いを伝える場として活用。また「感謝を伝えるチャネル」によって、社員エンゲージメントを向上させた。リモートワークでは伝えにくい言葉を通じて、感情を共有できたという。

 同社の取り組みで特徴的だったのは、Teamsを活用した全社員参加型の提案&カイゼンプラットフォーム「ヨクスル」の活用だ。

 「会社やクレスコ社員、家族、顧客を、よりよくするために、クレスコ社員自身が気楽にまじめな提案をする場として、2020年度の施策として準備してきたもの。4月に正式に社内で発表した」(クレスコ コーポレート統括本部 経営戦略統括部 経営企画室 アドバンストジェネラルスペシャリストの梶翔馬氏)という。

 社員の改善提案の投稿後、社員から一定数の「いいね」が集まると、提案者と事務局がタスクフォースを編成。社長の「いいね」がつけば、提案は即採用が決定するという。

Teamsを活用した全社員参加型の提案&カイゼンプラットフォームを新設
クレスコ コーポレート統括本部 経営戦略統括部 経営企画室 アドバンストジェネラルスペシャリストの梶翔馬氏

 クレスコ サービスコンピテンシー統括本部 テクノロジーサービスユニット 先端技術事業部の髙津聡事業部長は、「在宅勤務への移行にあわせて、システムを変え、やり方を変え、ビジネスを継続してきたが、同時に、社員の改革意識や当事者意識が変化したというメリットもあった。新たな気づきが新たな取り組みにつながり、新たな文化を醸成。これがまた新たな気づきにつながるというサイクルが生まれている。これをノウハウに転換し、顧客に対する業務効率化の提案にもつなげている」と述べた。

クレスコ サービスコンピテンシー統括本部 テクノロジーサービスユニット 先端技術事業部の髙津聡事業部長

 また自動車部品などの製造を行う武蔵精密工業では、海外拠点での生産ラインの立ち上げにおいて、HoloLens 2およびDynamics 365 Remote Assistを活用したという。

 武蔵精密工業 PT事業部PT Gear 2グループ グループマネージャーの衛藤明頼氏は、「これまで、海外での生産ラインの立ち上げ時には、直接出向いて技術支援を行っていたが、新型コロナウイルスの感染拡大による渡航制限によって、技術支援の在り方を再構築する必要が出てきた。そこで、新たなテクノロジーを使うことで、移動ロスをゼロにし、生産設備立ち上げ時のコストを50%削減し、技術伝達の効率向上という目標を立て、いまが変革のチャンスと思って取り組んだ。海外技術支援における課題解決に挑戦した」とする。

 2020年3月にメキシコ工場での生産ラインの立ち上げを予定していたが、海外渡航が禁止されたため、4月からリモートによる技術支援体制へと移行することを検討。5月からHoloLens 2およびDynamics 365 Remote Assistを導入して、日本から遠隔で技術支援を実施。6月から現地での生産ラインが稼働したという。

リモート支援 海外拠点生産ライン立ち上げ

 「移動費用では約220万円の削減、時間換算では約264時間の削減が可能になった。同様の取り組みをインドネシアやハンガリーでも実施しており、年度内には、カナダ、ベトナムでも実施する予定である」とした。

武蔵精密工業 PT事業部PT Gear 2グループ グループマネージャーの衛藤明頼氏