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ヴイエムウェアの新社長・山中直氏がオンライン会見、「新たな世界と従来の世界に橋をかける役割を果たしたい」

 1月18日、同日付でヴイエムウェア株式会社の代表取締役社長に就任した山中直氏が、オンラインで会見を行った。

 山中社長は、「元社長の三木泰雄氏、前任のジョン・ロバートソン氏が築いてきたレガシーを引き継ぎながら、チームとともに次のステージに進んでいくことが重要である。今後3年ぐらいをかけ、日本のマーケットにおいて、THE Digital Foundationと言われる企業になりたい。そのために、3年後には、どういう姿であるべきかということをお客さまと検討し、それを描き、ジャーニーをともにしたい」と述べた。

新社長に就任した山中直氏

 山中氏は、広島県出身。NECを経て、2007年にシニアコーポレートアカウントマネージャとしてヴイエムウェアに入社し、エンタープライズ ビジネスの成長に手腕を発揮した。直近は上級執行役員副社長として、顧客企業のデジタルトランスフォーメーションの実現に注力してきたという。

 その山中社長は、これまでのVMwareの取り組みを「サーバー/デスクトップ仮想化」、「Software Defined Data Center/Digital Workspace」、「Hybrid Cloud/Multi-Cloud」、「App Modernization」の4つの章に分けて説明。

 その上で、「これまではサーバーやマルチクラウドの環境などにおいて、ブリッジをする役割を果たしてきた。いまは第3章として、Hybrid Cloud/Multi-Cloudの時代を迎えた。VMwareのテクノロジーがグローバルのハイパースケーラーのプラットフォーム上にも実装され、日本のパートナーにも実装され、クラウドとオンプレミスをシームレスに接続できるようになっている。JALやオプテージ、LIXIL、ZOZOなどがVM worldでその成果を発表している。いよいよ、App Modernizationとして新たな章を迎える」と発言した。

 さらに「2020年前半には、コロナ禍で日本のデジタライゼーションはスローダウンすると思っていたが、CIOなどと話をしているなかで、非接触、リモートといった観点から、デジタルテクノロジーを通じてビジネスをどう成長させるか、という動きが加速することを感じた。アプリケーションのコンテナ化が進み、アーキテチクャーにも大きな変革が起こってくるだろう。VMwareでは、抽象化するレイヤーをアプリケーションプラットフォームにまで広げ、VMware Tanzuなどのモダンアプリケーション向け製品を通じて、KubernetesをvSphereのなかに組み込みながら、新たなワークロードとモノシリックな既存のアプリケーションを同時にホストし、新たな世界と従来の世界に橋をかける役割を果たしたい」と述べた。

 また、もともとはVisionという名称で使っていたTHE Digital Foundationと呼ぶ図を示しながら、「2012年から示しているこの図のように、Any Device、Any Application、Any Cloud、Intrinsic Securityに取り組む姿勢は変わらない。App ModernizationやMulti Cloud、Intrinsic Security、Digital Workspace、Virtual Cloud Networkといった製品、サービスを届けるのが、VMwareのミッションである」とした。

 一方で、広島県宮島の実家が、1928年創業の中堅家具メーカーを営んでいることに触れながら、「モノづくりに長けた工場、職人と、世界のデザイナーがコラボレーションする動きが出ている。3Dプリンターで作った造形もあるが、そこに職人が手を加えることで温かみやストーリーが生まれる」と前置き。

 「これと同じように、私の役割は、グローバルのテクノロジーを日本のマーケットに、丁寧にインプリメンテーションすることである。ITにおいても意思やストーリーが大切である。これを組み込むことで、デジタルテクノロジーをより効果的に導入することができる」とし、「あるCIOと話をしたのは、社内クラウドにも名前をつけようということである。名前をつけるだけで、そこに思いと意思が生まれる。お客さまの成功に向けて思いや意思を込め、ストーリー性を持った形で支援したい」と語った。

 さらに、お客さまの成功を継続的に支援する3つの柱として、「People」、「Process」、「Technology」をあげ、「テクノロジーカンパニーとして、単にTechnologyを提供するだけでなく、人材、思い、意思、変革への勇気を含むPeople、新たな仕組みや文化をどう作るかというProcessが重要な要素だと思っている。お客さま、パートナーとともに変革することに力を注いでいきたい」などとした。

 日本法人であるヴイエムウェアの方向性については、山中社長が好きな言葉とする「People Join Communities,Not Companies」を示しながら、「NECで約10年間の経験をしたあと、米国の企業であるVMwareに入社した。それ以来、自分のアイデンティティを考えてきた。一時は米国のために働いているのかなと思った時期もあったが、フィールドのリーダーがフランス人に変わった時、国境とは何かということを感じ、米国の会社ではなく、グローバルの会社で働いているのだということを感じた」と前置き。

 「これから、ビジネスや会社の規模を2倍にしていくことを考えた場合、日本法人としてのアイデンティティをどう作るかが重要である。存在意義を考える必要がある。そこでは、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が重要になる。社内ではVMware Inclusionと呼んでいるが、これを積極的に進めたい。また、VMware Foundationの取り組みのひとつとして、Tech for Goodの考え方も徹底したい。プリンターというテクノロジーの使い道は、教育にも活用でき、プロパガンダにも使える。日本法人であるヴイエムウェアは、テクノロジーを通して、日本の社会やコミュニティにどう貢献するか。継続的に何が提供できるか。そこに新たなアイデンティティが生まれると考えている。日本では、新たにフィールドイノベーションプログラムを立ち上げる。エンジニアを含めたヴイエムウェアの社員全員が、お客さま、パートナーと、どう橋をかけていくのかといったことについて議論をしていきたい。お客さま、パートナー、社員とともに、テクノロジーの力で、新たな時代へつなぐ懸け橋となりたい。引き続き、ブリッジを担う役割を果たしたい」とした。

 オンライン会見には、2015年3月から社長を務めてきたジョン・ロバートソン氏も同席。「2007年に入社し、約14年間を経て、ヴイエムウェアを辞めることになった。社長在任中の6年間もVMwareは大きく進化し、仮想化からマルチクラウド、働き方改革などに取り組んできた。もともと5、6年たったら次の世代にバトンを渡そうと思っていた。次の世代に期待している」としたほか、「山中とは、一緒に営業を担当し、どんな会社を作ろうかというところからやっている。三木さん(前社長の三木泰雄氏)がおじいさんで、私がお父さん。山中は、兄弟のようなもの。新たな社長になってうれしい」とコメント。

 山中社長に対しては、「パワーを持っている。ずっと営業をやっていたので、お客さまと近い関係にあり、日本のお客さまの要望をよく理解している。これまでは米国のイノベーションを日本でどう導入するかという話が多かったが、VMwareのソリューションを、日本に適した形で提案してほしい」とした。

前社長のジョン・ロバートソン氏

 それに対して山中社長は、「NECを辞める時には十二指腸潰瘍(かいよう)になるほど悩んだが、新たな会社をつくっていこうということを決め、ジョンとともに、13年6カ月に渡り、エキサイティングなジャーニーを送ってきた。これからは日本のお客さま、パートナーと一緒に行う活動をもっと強化していきたいと考えている」と述べた。

山中社長(左)とロバートソン前社長(右)