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ヴイエムウェアの三木泰雄氏が会長に、後任社長はジョン・T・ロバートソン氏

 ヴイエムウェア株式会社は3日、副社長のジョン・T・ロバートソン氏が代表取締役社長に就任すると発表した。2005年10月より社長を務めてきた三木泰雄氏は代表取締役会長となる。

 新社長のロバートソン氏は現在46歳。日本国籍ではないものの、「見た目は日本人の顔をしていないが(笑)、日本語も流ちょうだし、心も日本人以上に日本人だ」と三木氏が話すように、1990年に初来日して以来、長らく日本を拠点として活動しており、日本の社会やビジネスを熟知しているという。

 ヴイエムウェア日本法人にも、まだ30名程度の社員しか在籍していなかった(現在は400名規模)2007年1月に入社し、三木氏とともにビジネスを引っ張ってきた実績があるとのこと。その後、2012年から一時VMware ASEANの社長に就任し、シンガポールを拠点に同地域の事業を統括していたが、2014年末に帰任して、今回、社長に就任する運びとなった。

三木泰雄会長【左】とジョン・T・ロバートソン社長【右】

「One Cloud」のメリットを大きく訴求

 ヴイエムウェアと自身について、冗談交じりに「(日本と外資の)ハイブリッドの会社、ハイブリッドの社長だといえる」と切り出したロバートソン氏は、まず自らについて「(外国人ではあるものの)人生の中で半分以上、日本にいるし、日本以外の海外では(赴任していた)シンガポールでしか働いたことがない」と紹介。

 次に会社については「ヴイエムウェアがどんな会社かと聞かれた時に、『日本の心と外資系のマインド』を持っているとよく答える。チームワークが上手で、お客さまのために何でもする、といった日本的なところを持ちつつ、コンセプトやテクノロジーはグローバルのベストを持ってくるからだ。社員がみんな会社を好きなので、外資系の中で離職率は非常に低い方。本部長クラスを見ると8割が社内で育っているので、それは今後も続けたい」と述べた。

代表取締役社長のジョン・T・ロバートソン氏

 そのロバートソン氏が、2015年のVMwareでビジネスを行うにあたって掲げたテーマが、「One Cloud, Any application, Any Device」である。

 このうち、なぜ「One Cloud」なのかという点については、「今、アプリケーションは(企業の)データセンターに9割、クラウドに1割存在するというが、2020年までにはクラウドが4割となる。しかし逆に言えば、まだ6割がデータセンターにあるということで、(オンプレミスやプライベートクラウドと、パブリッククラウドの)両方を見ないといけない。2つではなく、1つで見た方がいいからだ」と説明する。

 サーバー仮想化からスタートしたVMwareは、ネットワーク(VMware NSX)やストレージ(VMware Virtual SAN)などほかの要素にも範囲を広げ、ソフトウェアで定義したデータセンター(Software-Defined Data Center:SDDC)というコンセプトを提唱してきた。そして、その駒がすべてそろい、パブリッククラウドであるvCloud Airの国内提供も開始されたことで、そのメリットを顧客に提供される体制が整っている。

 パブリッククラウドが当たり前になった今では、クラウドを使いたいというニーズは必ず上がってくるものだ。ただし、「このアプリケーションはこのクラウドに置きましょう、こちらのアプリケーションはこちらのクラウドに、というクラウドの使い分けをしたとしても、ロックインされたら動けなくなる。クラウドがサイロ化してしまっては意味がない」という点をロバートソン氏は指摘。vCloud Airのクラウド環境を含め、自由に仮想マシンの場所を移動できるVMwareのソリューションであれば、サイロ化は起きず、IT環境全体の包括的な管理を行えると説明した。

 また、モビリティを考える上で重要なエンドユーザーコンピューティング(EUC)のソリューションについても、引き続き注力していく姿勢を示している。

なぜOne Cloudか?
日本市場における2015年の注力分野

 今後の具体的なアクションとしては、人員の採用を引き続き続けることも明らかにした。「当社は今や、製品のベンダーではなく、(サービスプロバイダなどのパートナー企業にとって)ハイブリッドクラウドのパートナー、といった立場に変わりつつある」(ロバートソン氏)ことから、必要とされるスキルセットも変わってきており、そうした新しい領域でも人員の採用を進める。

 さらに、パートナーとの連携も引き続き進めるとのこと。ロバートソン氏は「当社はvCloud Airでシェアを全部取ろうとは思っていない」と明言。例えば、クラウドを手掛けているパートナーがディザスタリカバリの仕組みを持たないのであれば、そこの部分でvCloud Airと連携させる、といった形で一緒にビジネスを作っていくとした。

 なお、会長となった三木氏は、こうしたパートナーや顧客とのリレーションシップや、新規事業の立ち上げなどを手掛ける予定。「エグゼクティブからEUC担当、データセンター担当など、さまざまな立場の方とお会いするようになってきたこともあり、(社長)一人では難しいので、分担しながら二人三脚で進めていく」と話している。

代表取締役会長の三木泰雄氏

石井 一志