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レッドハット、「Red Hat OpenShift 4.6」とその関連製品について解説
2020年11月27日 06:00
レッドハット株式会社は26日、10月にリリースされたコンテナプラットフォームの最新版「Red Hat OpenShift 4.6」と、その関連製品について記者発表会をオンラインで開催した。
主にOpenShiftとRed Hat Enterprise Linux(RHEL)8.3(10月リリース)のエッジコンピューティング対応機能が解説されたほか、OpenShiftのマネージドサービスの価格改定や、Red Hat Advanced Cluster Management for Kubernetes(ACM)2.1の変更点なども説明された。
エッジ対応などOpenShift 4.6の新機能
レッドハット株式会社の北山晋吾氏(テクニカルセールス本部 クラウドソリューションアーキテクト部 OpenShiftアーキテクト)は、OpenShift 4.6について、「エンタープライズレベルの信頼性維持」「エッジでのワークローに対応」「開発者体験の向上」の3カテゴリーに分けて解説した。
「エンタープライズレベルの信頼性維持」としては、まずOpenShift 4.6が延長アップデートサポート(EUS)リリースであることが紹介された。EUSは長期リリース版で、フルサポート期間とメンテナンスサポート期間を合わせて約18カ月のサポートとなる。「EUSサポート期間中に、次のEUS版をリリースすることを予定している」と北山氏は語った。
また、米政府機関専用のパブリッククラウドのサービスであるAWS GovCloudおよびMicrosoft AzureGovernmentに対応。米政府機関およびそのパートナーは、これらに対してOpenShiftをデプロイできるようになった。
「エッジでのワークローに対応」としては、RHELの機能とOpenShiftの機能が解説された。
まずRHEL 8.3では、エッジのワークロードに向けた機能がある。その例として、Image Builder機能でエッジに必要な機能だけに絞ったOSイメージを簡単に作成する機能や、インターネット回線が制限されているエッジ環境でソフトウェアアップデートの転送量を減らすOver-the-air機能などを北山氏は紹介した。
OpenShiftではエッジ向けに、「リモートワーカーノード」と「3ノードクラスタ」の2種類の構成が可能になっている。OpenShift 4.6で加わったリモートワーカーノードは、ワーカーノードを工場などのリモート拠点に配置し中央データセンターのマスターノードから一元的に中央管理する構成だ。また、3ノードクラスタはOpenShift 4.5から加わったもので、リモート拠点で一式を動かせるよう、ワーカーノードと管理ノードを共存させて3ノードから構成できるようにしたものだ。
「開発者体験の向上」としては、まずサーバーレスコンピューティングのOpenShift Serverless 1.11で、イベント駆動の「Eventing」コンポーネントがGA(正式版)になったことが説明された。そうしたイベント駆動型アプリケーションの構築について、Camel-K Connectorによるイベントソースの選択や、Red Hat AMQ Streams(Apache Kafka)によるイベント配信についても紹介。例として、病院の患者データから機械学習するエッジからコアへのデータパイプラインを北山氏は挙げた。
また、クラウドネイティブ向けJavaフレームワークのQuarkusがOpenShiftサブスクリプションで利用できることになったことも北山氏は説明した。
ACMとAnsibleの統合機能や、マネージドOpenShiftの価格改定
続いて、OpenShiftのマネージドサービス関連のアップデートについて北山氏は解説した。
まずは、マルチクラウドKubernetes管理のRed Hat ACM 2.1。大きな新機能としては、構成管理ツールのAnsible Automation Platformとの統合がある(テックプレビュー段階)。これにより、例えばACMからアプリケーションをデプロイするときに、Ansible Towerを呼び出してサーバーやネットワークの設定も実行できるようになるという。
そのほかのアップデートとしては、vSphereやベアメタルなど「マルチクラスタライフサイクル管理」、オープンソースポリシーリポジトリのOPA(Open Policy Agent)統合の「ポリシー管理」、Grafanaによるマルチクラスタの可視化などの「マルチクラスタの監視」が挙げられた。
OpenShiftのフルマネージドサービスとしては、11月にAWSによる「Red Hat OpenShift Service on AWS(ROSA)」が発表された(プレビュー段階)。同様のサービスには、Red HatがAWS上で提供する「OpenShift Dedicated(OSD)」や、Microsoftによる「Azure Red Hat OpenShift(ARO)」、IBMによる「Red Hat OpenShift Kubernetes Service(ROKS)」、パートナー企業各社が提供する「OpenShift Managed Practice Program(OMPP)」がある。
こうしたOpenShiftマネージドサービスの価格改定も発表された。OSD・ARO・ROKSにおいて、平均75%値下げとなるという。SLAも99.95%に上げられた。
企業のデータ駆動へのビジネス変革を支援
日本でのコンテナ市場については、レッドハット株式会社の岡下浩明氏(製品統括・事業戦略 担当本部長)が説明した。
岡下氏はコンテナに関連して、「ビジネスレジリエンス(回復力)を支えるプラットフォームを提案していく」と語った。DXと言われるように、企業に、データ駆動を中心としたデジタルビジネス変革が求められるようになっている。そのためのスピードとスケールを、Red Hat OpenShiftやRed Hat Middlewareなどで支援するという。
そこで拡大が見込まれる分野としては、顧客のリアルタイム行動分析による顧客エンゲージメントや、5G通信、既存システムのクラウドネイティブ化が挙げられた。
さらに、「DXはテクノロジーだけでは駄目で、組織文化の変革が重要とよく言われている」と岡下氏。そのための取り組みとして「Container Adoption Program」を氏は紹介した。企業のプロジェクトにRed Hatのエキスパートが参加してDevOpsなどで組織文化を変革する「Open Innovation Labs」の次のステップといえるもので、クラウドネイティブやマイクロサービスなどへのトランスフォーメーションに取り組む。その目標として岡下氏は「ビジネスとITがOne Teamになるための変革を支援」すると説明した。
そのほか、以前からの提供しているものとしては、トレーニングコースと認定試験の「RH Learning Subscription(RHLS)」も紹介された。コンテナについても、トレーニングコースが管理者向けとアプリ開発者向けを合わせて5コース。認定試験も5つ(来年さらに2つ追加)用意されているという。
最後に岡下氏は「OpenShiftを一言でまとめると『まるでクラウド上にあるコンピュータ』だ」と述べた。「KubernetesはクラウドのOSカーネルのようなものだが、アプリケーションはカーネルだけでは動かない」という意味で、OpenShiftにより素早くセットアップできて、データハブやマネージドサービス、自動化なども利用できるとアピールした。