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レッドハット、「Red Hat Summit 2020」での発表と、国内での展開を説明
2020年5月20日 06:01
レッドハット株式会社は、4月にオンラインで開催されたグローバル年次イベント「Red Hat Summit 2020 Virtual Experience」で発表された内容について、5月19日に国内向けの記者説明会を開催した。
Red Hat Summitの記者会見で発表された内容については、米Red HatのJoe Fernandes氏(クラウドプラットフォーム部門 製品担当 バイスプレジデント)が紹介。さらに、レッドハット株式会社の岡下浩明氏(製品統括・事業戦略担当本部長)が日本市場向けの内容を語った。
Red Hatのコロナ禍での施策
Fernandes氏はRed Hat Summitで発表された内容を、「現在(コロナ禍の中で)、顧客と求職者を助けるために行っていること」と「新しいテクノロジーイノベーション」の2つに分けて紹介した。
手助けの分野の1つめは、新規顧客向けにTechnical Account Management(TAM)サービスを50%割引にすること。Red Hatの発表によると、サプライチェーンの中断や在宅勤務への移行などにより、IT資産の最適化が必要とされる中で、TAMの需要増加を見込んでいるという。
2つめは、Red Hat製品のプロダクトライフサイクル延長だ。近い将来にメンテナンス終了(EOM)を迎える予定だった製品について、延長サポートを提供する。製品としては、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)、Red Hat OpenShift、Red Hat OpenShift Container Storage、Red Hat Ceph Storage、Red Hat Runtimesの一部バージョンが該当するという。
3つめは、一時解雇者と求職者向けの無料トレーニング。SkillsBuild.orgと協働して、Red Hat認定システム管理者(RHCSA) Linuxラーニングパスを求職者に無料で提供する。
4つめは、無料オンライントレーニングコースの提供で、4月より50万以上の無料のRed Hatトレーニングコースを提供。さらに、2020年6月30日まで無料でオンラインの「Introduction to OpenShift Application」コースを追加している。なお、OpenShiftのコースについて、日本語も含まれることを岡下氏は補足した。
OpenShift新版、マルチクラウドのクラスタ管理、OpenShiftで仮想マシンを扱う製品
テクノロジー面では、3つの製品をFernandes氏は紹介した。
「Red Hat OpenShift 4.4」は、KubernetesをベースにしたコンテナプラットフォームであるRed Hat OpenShiftの最新版で、ベースがKubernetes 1.17となった。変更点として、HAProxy 2.0対応や、OpenShiftコンソールでのHelm対応、WeコンソールでのモニタリングダッシュボードなどをFernandes氏は紹介した。
次の製品は、パブリッククラウドからオンプレミス、エッジなどさまざまな場所にあるOpenShiftのKubernetesクラスタを一元的に管理する「Red Hat Advanced Cluster Management for Kubernetes(ACM)」。現在テクノロジープレビュー段階で、2020年夏に提供開始予定。ポリシーベースの構成とガバナンス管理や、アプリケーションのデプロイが1カ所からすべてのクラスタに対して行えることなどが特徴だという。背景として「OpenShiftをエッジで使っている事例も増えるなど、複数のクラスタをいかに簡単に管理するかが求められている」とFernandes氏は説明した。
3つめは、既存の仮想マシンベースのワークロードをOpenShiftで管理する「OpenShift virtualization」だ。オープンソースのKubeVirtがベースになっている。Fernandes氏は「多くの企業は仮想マシンに資産を持っている」として、そうした既存資産をOpenShiftに取り込んで一貫した管理ができることを強調した。現在テクノロジープレビュー段階で、正式リリースとなったときには、既存ユーザーに追加料金なしで提供するという。
なお、OpenShift virtualizationと、仮想マシンを中心とするプライベートクラウドのプラットフォームであるOpenStackとの関係についての質問で、Fernandes氏は「OpenStackは成熟した仮想化とプライベートクラウドのインフラとして、通信事業者など大規模な場所で使われているほか、OpenShiftの動作プラットフォームとして多くの顧客に利用されている。一方、OpenShift virtualizationはOpenShiftの1つのプラットフォームで、仮想化にも対応するもので、クラウドネイティブな用途で使われる新しいイノベーションだ」として、顧客の用途による選択になると答えた。
日本でのOpenShiftの施策
Fernandes氏の説明をうけて、岡下氏が新発表の補足と、日本市場での施策を説明した。
新しくアップデートされたものとしては、WebブラウザベースのIDEであるRed Hat CodeReady Workspacesなどを紹介。さらに新登場のものとしては、コンテナをサーバーレスで動かすOpenShift Serverless(Knativeベース)などを紹介した。
また岡下氏は、ACMについて「日本のお客さまでも、Kubernetesを使っているとクラスタがたくさん作られる。例えば開発環境はパブリッククラウド、本番環境はオンプレミス、エッジにもデプロイといったように、用途ごとにクラスタを作っていくのに必要とされると考えている」とコメントした。
フルマネージドなOpenShiftについては、これまでのAzureに加えて、AmazonとIBMについて新しく発表したことを岡下氏は紹介。専用型マネージドサービス「OpenShift Dedicated」についても、OpenShift on AWSに加え、GCPのものも発表したことが紹介された。
また国内では、国内パートナーからマネージドサービスが出されていると紹介。その例として、4月にNTTデータが金融機関向けのサービスとして発表したDENTRANS / OpenCanvasを挙げた。
OpenShiftの2020年度(CY:暦年)の戦略市場としては、通信・5Gサービス、金融・銀行、公共サービス、教育・ヘルスケアの4分野が挙げられた。
そのための施策として、OpenShift Managed Partner 7社に対してクラウド構築運用のSRE育成トレーニングを展開。また、パートナー向けDevOps人材支援や、国内コンテナISVパートナーの拡大についても語った。
製品の価格(税別)については、ACMはテクニカルプレビューのため未定と説明。Red Hat OpenShiftは42万1200円(2 core、4 vCPU、Standard/1年)から、Red Hat OpenShift Dedicatedは561万6000円(シングルクラスタ、M5.Xlarge/1年)からと説明した。