ニュース

レッドハット、RHEL 8とOpenShift 4を国内で販売開始 さまざまな強化点を担当者が説明

マネージドサービス「Azure Red Hat OpenShift」も発表

 レッドハット株式会社は21日、商用Linuxディストリビューションの最新版「Red Hat Enterprise Linux(RHEL) 8」と、コンテナプラットフォームの最新版「Red Hat OpenShift 4」の国内での販売を開始した。

 また、OpenShiftをMicrosoft Azure上でマネージドサービスとして提供する「Azure Red Hat OpenShift」も発表している。

 これらは、いずれも5月に米国で開催されたイベント「Red Hat Summit」で発表された内容で、国内での販売開始や発表となる。OpenShift 4はもちろん、RHEL 8についても、コンテナに関する新機能が大きく取り上げられた。

パッケージ管理やコンテナなどを強化した「RHEL 8」、コンテナイメージの「UBI」も

 RHEL 8については、米Red Hatのステファニー・チラス氏(RHELビジネスユニット バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー)が説明した。

米Red Hatのステファニー・チラス氏(RHELビジネスユニット バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー)

 RHEL 8がユーザー企業にビジネス価値をもたらす新機能として、チラス氏は4つを挙げた。

 1つめは、最新ツールへのアクセスだ。RHELでは、オープンソースの開発ツールやミドルウェア、サーバーソフトなどを、Red Hatが「パッケージ」として管理して提供している。

 ただしこれまでは、パッケージのライフサイクルはOSのライフサイクルと同一になっていた。これに対してRHEL 8では、パッケージを、OSの基本機能「BaseOS」と、その上の各種ソフトウェア「Application Stream(AppStream)」の2つに分け、BaseOSでは枯れたバージョンを、AppStreamでは最新を含む複数のバージョンを利用できるようにした。

 2つめは、新しいコンテナ関連ツールだ。コンテナの操作や実行に、Dockerだけでなく、コンテナランタイム「Podman」や、コンテナ作成ツール「Buildah」、リモートレジストリ操作ツール「Skopeo」などを基本ツールとして取り入れた。

 3つめは、パートナーのデータベース製品への最適化だ。OracleやSAP HANA、Microsoft SQL Server、PostgreSQLなどに対応し、パフォーマンスを深く最適化したという。

 4つめは、Red Hat Insightsが新たにRHELに含まれるようになった。Red Hat Insightsは、システムの状態とRed Hatに蓄積されたナレッジを照合し、セキュリティなどのトラブルをプロアクティブに検知するもの。従来はRHELとは別にサブスクリプションを契約する必要があったが、RHEL 8/7/6のサブスクリプションで利用できるようになった。

 そのほかチラス氏は、オンプレミスからパブリッククラウドまでの一貫したデリバリーや、SELinuxの拡張、暗号化ポリシーなどのセキュリティ、既存のRHELからのインプレース(再インストールなし)アップデートなどもポイントとして挙げた。

RHEL 8の新機能4つ
そのほかの特徴

 通常のリリースのほか、コンテナイメージの「Red Hat Universal Base Image(UBI)」も登場した。最小セットの構成で、これを基にしたイメージを自由に再配布可能。ホストOSにLinuxディストリビューションの制限はなく、利用にRHELライセンスは必要ないが、RHEL上で実行するのであればUBIもRHELとしてサポートを受けられる。

コンテナイメージの「Red Hat Universal Base Image(UBI)」

 日本での販売については、レッドハット株式会社の岡下浩明氏(製品統括・事業戦略担当本部長)が説明した。価格の変更はなく、2ソケットノードStandardサブスクリプションで10万8600円(税別)から。

レッドハット株式会社の岡下浩明氏(製品統括・事業戦略担当本部長)
日本ではRHEL 8を6月21日販売開始

自動化やOperator、サービスメッシュなどを強化した「OpenShift 4」

 Red Hat OpenShift 4については、米Red Hatのマーティン・クラウス氏(クラウドプラットフォーム部門 シニアディレクター)が説明した。OpenShiftについて、クラウス氏は「“OpenShift 4はスマートなKubernetesプラットフォーム”と思ってください」と説明した。

米Red Hatのマーティン・クラウス氏(クラウドプラットフォーム部門 シニアディレクター)

 OpenShift 4で変わった点として、クラウス氏はまず、インストールが非常に簡単になったことを挙げた。自動化され、短時間で使い始められるようになったという。プラットフォームやアプリケーションのアップデートも、ワンクリックでできるようになっている。

 また、OpenShiftのホストに特化したOSとして、Red Hat Enterprise Linux CoreOSが用意された。2018年に買収したCoreOS社のContainer LinuxをRHELと融合させたものだ。

 そのほか、クラウドリソースの自動スケーリングなどもクラウス氏は挙げた。

Red Hat OpenShift 4での変更点

 さらに、パブリッククラウドやオンプレミスなど複数の場所で動くKubernetesクラスタを、1つのコンソールで管理できるようになった。これはcloud.redhat.comから利用できる。

 クラウス氏は、Kubernetes Operatorのレジストリについても紹介した。Kubernetesで、クラウドネイティブではない従来型のステートフルなアプリケーションを動かすときには、Operatorという各種の運用ワークフロー自動化ソフトウェアが使われる。こうしたOperatorのレジストリである「OperatorHub」を、Red Hatが、AWSやMicrosoft、Googleとともに3月に開設した。OpenShift 4では、このOperatorHubのカタログの機能を備え、OperatorHubに登録されたサードパーティOperatorや、OpenShiftで認定したOperatorをデプロイできるようになった。

複数の場所で動くKubernetesクラスタを一元管理するコンソール
OperatorHubのカタログの機能

 OpenShift 4では、サービスメッシュやサーバーレスの機能も取り込んだ。サービスメッシュのIstioや、その可視化ツールのKiali、トレーシングのJaegar、サーバーレスのKnativeが含まれる。

 そのほか、OpenShit関連の開発ツールとして、Eclipse CheベースのクラウドIDEのCodeReady Workspacesや、OpenShiftの開発者CLIであるOpenShift ODO、IntelliJなどのIDE用のOpenShiftプラグインなども提供される。

サービスメッシュやサーバーレスの機能の取り込み
クラウドIDEなども提供

 日本でのOpenShift導入事例も紹介された。TOKAIホールディングスや、ふくおかファイナンシャルグループ、ぐるなびなどが採用しているという。

日本でのOpenShift導入事例

 日本での販売については、RHELと同じく、岡下氏が説明した。価格の変更はなく、2コア(4vCPU)Standardサブスクリプションで42万1200円(税別)から。

日本ではOpenShift 4を6月21日販売開始

Azure上でホストされる「Azure Red Hat OpenShift」

 もう1つの大きなトピックとして、クラウス氏は、「Azure Red Hat OpenShift」についても発表した。すでに提供が開始されている。

 Azure Red Hat OpenShiftは、OpenShiftをAzure上でホストされたサービスとして提供するもの。MicrosoftとRed Hatの両社が共同で管理するマネージドサービスで、ほかのAzureサービスと同様のコンプライアンス認定を通して提供される。Azureの各種サービスに高速で接続でき、Cosmos DBやAzure Machine Learningなどのサービスの利用もサポートされる。

 AWS上でホストされたOpenShiftサービスの「OpenShift Dedicated」もすでに提供されているが、これはRed Hatが構築し運用するものだった。それに対しAzure Red Hat OpenShiftは、MicrosoftとRed Hatが共同で提供するもので、同様の形態のOpenShiftサービスは初となる。

Azure Red Hat OpenShift