ニュース
レッドハット、RHEL 8とOpenShift 4を国内で販売開始 さまざまな強化点を担当者が説明
マネージドサービス「Azure Red Hat OpenShift」も発表
2019年6月24日 11:40
レッドハット株式会社は21日、商用Linuxディストリビューションの最新版「Red Hat Enterprise Linux(RHEL) 8」と、コンテナプラットフォームの最新版「Red Hat OpenShift 4」の国内での販売を開始した。
また、OpenShiftをMicrosoft Azure上でマネージドサービスとして提供する「Azure Red Hat OpenShift」も発表している。
これらは、いずれも5月に米国で開催されたイベント「Red Hat Summit」で発表された内容で、国内での販売開始や発表となる。OpenShift 4はもちろん、RHEL 8についても、コンテナに関する新機能が大きく取り上げられた。
パッケージ管理やコンテナなどを強化した「RHEL 8」、コンテナイメージの「UBI」も
RHEL 8については、米Red Hatのステファニー・チラス氏(RHELビジネスユニット バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー)が説明した。
RHEL 8がユーザー企業にビジネス価値をもたらす新機能として、チラス氏は4つを挙げた。
1つめは、最新ツールへのアクセスだ。RHELでは、オープンソースの開発ツールやミドルウェア、サーバーソフトなどを、Red Hatが「パッケージ」として管理して提供している。
ただしこれまでは、パッケージのライフサイクルはOSのライフサイクルと同一になっていた。これに対してRHEL 8では、パッケージを、OSの基本機能「BaseOS」と、その上の各種ソフトウェア「Application Stream(AppStream)」の2つに分け、BaseOSでは枯れたバージョンを、AppStreamでは最新を含む複数のバージョンを利用できるようにした。
2つめは、新しいコンテナ関連ツールだ。コンテナの操作や実行に、Dockerだけでなく、コンテナランタイム「Podman」や、コンテナ作成ツール「Buildah」、リモートレジストリ操作ツール「Skopeo」などを基本ツールとして取り入れた。
3つめは、パートナーのデータベース製品への最適化だ。OracleやSAP HANA、Microsoft SQL Server、PostgreSQLなどに対応し、パフォーマンスを深く最適化したという。
4つめは、Red Hat Insightsが新たにRHELに含まれるようになった。Red Hat Insightsは、システムの状態とRed Hatに蓄積されたナレッジを照合し、セキュリティなどのトラブルをプロアクティブに検知するもの。従来はRHELとは別にサブスクリプションを契約する必要があったが、RHEL 8/7/6のサブスクリプションで利用できるようになった。
そのほかチラス氏は、オンプレミスからパブリッククラウドまでの一貫したデリバリーや、SELinuxの拡張、暗号化ポリシーなどのセキュリティ、既存のRHELからのインプレース(再インストールなし)アップデートなどもポイントとして挙げた。
通常のリリースのほか、コンテナイメージの「Red Hat Universal Base Image(UBI)」も登場した。最小セットの構成で、これを基にしたイメージを自由に再配布可能。ホストOSにLinuxディストリビューションの制限はなく、利用にRHELライセンスは必要ないが、RHEL上で実行するのであればUBIもRHELとしてサポートを受けられる。
日本での販売については、レッドハット株式会社の岡下浩明氏(製品統括・事業戦略担当本部長)が説明した。価格の変更はなく、2ソケットノードStandardサブスクリプションで10万8600円(税別)から。
自動化やOperator、サービスメッシュなどを強化した「OpenShift 4」
Red Hat OpenShift 4については、米Red Hatのマーティン・クラウス氏(クラウドプラットフォーム部門 シニアディレクター)が説明した。OpenShiftについて、クラウス氏は「“OpenShift 4はスマートなKubernetesプラットフォーム”と思ってください」と説明した。
OpenShift 4で変わった点として、クラウス氏はまず、インストールが非常に簡単になったことを挙げた。自動化され、短時間で使い始められるようになったという。プラットフォームやアプリケーションのアップデートも、ワンクリックでできるようになっている。
また、OpenShiftのホストに特化したOSとして、Red Hat Enterprise Linux CoreOSが用意された。2018年に買収したCoreOS社のContainer LinuxをRHELと融合させたものだ。
そのほか、クラウドリソースの自動スケーリングなどもクラウス氏は挙げた。
さらに、パブリッククラウドやオンプレミスなど複数の場所で動くKubernetesクラスタを、1つのコンソールで管理できるようになった。これはcloud.redhat.comから利用できる。
クラウス氏は、Kubernetes Operatorのレジストリについても紹介した。Kubernetesで、クラウドネイティブではない従来型のステートフルなアプリケーションを動かすときには、Operatorという各種の運用ワークフロー自動化ソフトウェアが使われる。こうしたOperatorのレジストリである「OperatorHub」を、Red Hatが、AWSやMicrosoft、Googleとともに3月に開設した。OpenShift 4では、このOperatorHubのカタログの機能を備え、OperatorHubに登録されたサードパーティOperatorや、OpenShiftで認定したOperatorをデプロイできるようになった。
OpenShift 4では、サービスメッシュやサーバーレスの機能も取り込んだ。サービスメッシュのIstioや、その可視化ツールのKiali、トレーシングのJaegar、サーバーレスのKnativeが含まれる。
そのほか、OpenShit関連の開発ツールとして、Eclipse CheベースのクラウドIDEのCodeReady Workspacesや、OpenShiftの開発者CLIであるOpenShift ODO、IntelliJなどのIDE用のOpenShiftプラグインなども提供される。
日本でのOpenShift導入事例も紹介された。TOKAIホールディングスや、ふくおかファイナンシャルグループ、ぐるなびなどが採用しているという。
日本での販売については、RHELと同じく、岡下氏が説明した。価格の変更はなく、2コア(4vCPU)Standardサブスクリプションで42万1200円(税別)から。
Azure上でホストされる「Azure Red Hat OpenShift」
もう1つの大きなトピックとして、クラウス氏は、「Azure Red Hat OpenShift」についても発表した。すでに提供が開始されている。
Azure Red Hat OpenShiftは、OpenShiftをAzure上でホストされたサービスとして提供するもの。MicrosoftとRed Hatの両社が共同で管理するマネージドサービスで、ほかのAzureサービスと同様のコンプライアンス認定を通して提供される。Azureの各種サービスに高速で接続でき、Cosmos DBやAzure Machine Learningなどのサービスの利用もサポートされる。
AWS上でホストされたOpenShiftサービスの「OpenShift Dedicated」もすでに提供されているが、これはRed Hatが構築し運用するものだった。それに対しAzure Red Hat OpenShiftは、MicrosoftとRed Hatが共同で提供するもので、同様の形態のOpenShiftサービスは初となる。