ニュース

理研と富士通が共同開発するスパコン「富岳」、TOP500、HPCG、HPL-AI、Graph500にて2期連続世界第1位を獲得

 理化学研究所(理研)と富士通株式会社は17日、共同で開発しているスーパーコンピュータ「富岳」が、世界のスーパーコンピュータに関するランキング「TOP500」「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」「HPL-AI」「Graph500」のすべてにおいて、第2位に大きな差をつけて、第1位を獲得したと発表した。

 この結果は、「富岳」のフルスペック(432筐体、15万8976ノード)によるもので、「ISC2020」(2020年6月時)の数値を上回り、2期連続の世界第1位を獲得した。これらのランキングは、現在オンラインで開催中のHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)に関する国際会議「SC20」において、11月16日付け(日本時間11月17日)で発表される。

 TOP500リストでは、ランキングの指標となるLINPACK性能は442.01PFLOPS(ペタフロップス)、実行効率は82.3%。この測定結果は2020年6月時での415.53PFLOPS・実行効率80.87%を上回り、これにより「富岳」は2期連続の世界第1位を獲得した。

 なお、2020年11月時点のTOP500リストのランキング世界第2位は米国の「Summit」で、測定結果は148.6PFLOPSとなっているため、「富岳」は第2位と約3倍の性能差をつけた。また、スーパーコンピュータ「京」 での測定結果は、10.51PFLOPS(2011年11月時点)であったため、「京」と比較して42倍以上の性能向上を達成した。

 HPCGは、産業利用など実際のアプリケーションでよく使われる、疎な係数行列から構成される連立一次方程式を解く計算手法である共役勾配法を用いたベンチマークプログラム。「富岳」は、HPCGにおいて16.00PFLOPS(ペタフロップス)のスコアを達成。2020年6月時での13.40PFLOPSを上回り、「富岳」が2期連続の世界第1位を獲得した。2020年11月時点のHPCGのランキング第2位は米国の「Summit」、測定結果は2.93PFLOPSで、「富岳」は第2位と約5.5倍の性能差をつけた。

 HPL-AIは、AIの計算などで活用されている単精度や半精度演算器などの能力も加味した計算性能を評価するベンチマークプログラム。「富岳」は、HPL-AIにおいて2.004EFLOPS(エクサフロップス)のスコアを記録。この記録は、「富岳」が世界で初めてHPL系ベンチマークで1エクサ(10の18乗)を達成した2020年6月時での1.421EFLOPSを上回った。2020年11月時点のHPL-AIのランキング第2位は米国の「Summit」、測定結果は0.55EFLOPSで、「富岳」は第2位と約3.6倍の性能差をつけた。

 また、理研と九州大学、株式会社フィックスターズ、富士通による共同研究グループは「富岳」のフルスペックを用いた測定結果で、大規模グラフ解析に関するスーパーコンピュータの国際的な性能ランキングである「Graph500」における性能向上に成功し、世界第1位を2020年6月に続いて2期連続で獲得した。

 共同研究グループでは、通信性能の最適化などを行うことにより、約2.2兆個の頂点と35.2兆個の枝から構成される超大規模グラフに対する幅優先探索問題を、調和平均0.34秒で解くことに成功した。Graph500のスコアは102,955GTEPS(ギガテップス)で、2020年6月時点のスコアである70,980GTEPSを大きく上回った。2020年11月時点の「Graph500」のランキング第2位は、中国の「Sunway TaihuLight」、測定結果は23,756GTEPSで、「富岳」は第2位と約4倍以上の性能差をつけた。

 理研と富士通では、これら4つのランキングすべてにおける2期連続での第1位獲得は、「富岳」の総合的な性能の高さを示すもので、新たな価値を生み出す超スマート社会の実現を目指すSociety5.0において、シミュレーションによる社会的課題の解決やAI開発および情報の流通・処理に関する技術開発を加速するための情報基盤技術として、「富岳」が十分に対応可能であることを実証するものだとしている。