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Colt DCS、クラウド事業者向けハイパースケールデータセンター「印西3」を提供開始
今後5年でさらに大阪京阪奈を含む3棟を計画
2020年11月10日 15:33
Coltデータセンターサービス(以下、Colt DCS)は9日、国内で同社最大となるハイパースケールデータセンター「印西3」のサービス提供開始を発表した。
印西3データセンターは、クラウドサービス事業者向けのハイパースケールデータセンターで、48MVAの受電により、27MWのIT電力を供給。面積あたりでは、平均3375W/㎡の高出力密度を実現する。
各サーバールーム(データホール)の広さは標準1000㎡で、Colt Tire III設計に準拠し、年間平均PUEは1.40。UPS、空冷モジュール式チラー、冷水システム空調機をいずれもN+1構成で採用。すでにクラウドサービス事業者に、94%が完売しているという。
Colt DCSの印西キャンパスには、すでに「印西1」「印西2」の2つのハイパースケールデータセンターが稼働している。今回の印西3の開設によりさらに規模が拡張され、計3つのデータセンターが供給する総IT電力は50MWに上る。
2011年に竣工した印西1データセンターは、当初は金融事業者向けに構築したが、現在ではクラウドサービス事業者やエンタープライズのハイブリッド、プライベートクラウドなどに利用されているという。2017年に竣工した印西2データセンターは、クラウドサービス事業者向けに100%完売。今回の印西3データセンターも、クラウドサービス事業者の需要に応える形で建設されている。
Colt DCSのバイスプレジデントでグローバルアカウント&ソリューション担当のクイ・グエン氏は、クラウドサービス事業者などのハイパースケーラーが、データセンターに求める技術仕様を紹介。特に重視されるのが立地と電力で、立地についてはアクセスのしやすさや、地理的リスクの低さが求められるとした。
電力については、電力密度が最低でも2000W/㎡、標準で3000W/㎡、最大で3500W/㎡まで増強可能であることが求められるようになっていると説明。こうした要望に合わせる形で、印西のデータセンターについても電力供給能力が上がっているとした。
また、電力密度とともに、データセンター内に設置する機器の重量も増すことから、床耐荷重についても強化が求められていると説明。空調効率については、データセンター所在地の気候条件も考えて一番高い効率性を追求しており、PUEは低い所で1.2、気温の高い所では1.5を目安にしているとした。
Colt DCSのバイスプレジデントでアジア・太平洋地域・日本代表の杉原博茂氏は、日本およびアジア太平洋地域における戦略を説明した。
杉原氏は、2010年3月に日本ヒューレット・パッカード株式会社の常務執行役員、2013年10月にオラクル・コーポレーションのシニアバイスプレジデント、2014年4月に日本オラクル株式会社の代表取締役社長CEO、2017年6月に同社の取締役会長、2018年1月にオートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社の代表取締役社長を歴任。2020年6月からColt DCSの現職を努めている。
杉原氏は、Colt DCSの大きなビジョンとしては、顧客を第一に考えるデータセンターだが、新型コロナウイルス流行以降の「ポストコロナ時代」においては、あらゆるビジネスの常識が変わりつつあると説明。こうした中で、安心安全と品質、さらにさまざまな事象にスピード感を持って対応できるアジリティを提供できるサポート体制とプロセスを強化していくとした。
また、ハイパースケール向けデータセンターは、多くのデータをやりとりする顧客やアプリケーションを運用する顧客を抱えるため、すべてがミッションクリティカルなシステムであるということを理解した組織と運用体制を維持していくことが、最も重要だと考えていると説明。IT投資は日本でもどんどん伸びており、さまざまなものがパブリッククラウドに展開され、停止してはならないシステムになっていくことから、ハイパースケール向けデータセンターの重要性はさらに増していくとした。
アジア太平洋地域(APAC)の戦略としては、まずはTotal Customer Experience(TCE)、データセンター利用者の顧客満足度をさらに上げていくと説明。そのためには、パートナー戦略を強化していくことも重要で、プライベートクラウドからパブリッククラウド、ハイブリッドクラウド型への移行や、オンプレミスからのリフト&シフトといった動向に対して、コンサルティングやインテグレーター、クラウドサービス事業者などとのパートナーエコシステムを構築していくとした。
また、大阪地区においても、1.6ヘクタールの敷地を購入し、40MWのIT電力を供給する「大阪京阪奈データセンター」を2022年に完成予定であることを紹介。大阪地区においても、クラウド事業者などの需要がひっ迫しており、よりよいサービスを展開できるようにしていきたいと語った。
杉原氏は、Colt DCSでは日本を重要な市場だと考えており、日本におけるハイパースケール向けデータセンターについては“ミニバブル”の手前のような状態ではないかと個人的には感じていると説明。新型コロナウイルスの流行を受けてクラウドの需要はさらに伸びており、数年前に比べても企業がパブリッククラウドを受け入れやすくなっていることから、今後も需要はさらに増大していくだろうという見通しを語った。
国内では印西地域をはじめとして、多くの事業者がハイパースケール向けデータセンターの建設計画を発表している。Colt DCSでも、こうした需要に対応する形で、今後5年以内に大阪京阪奈データセンターを含めて国内に3カ所程度のデータセンターを計画しているという。
さらに今後については、事業を拡大していく上ではデータセンター業界だけでなく、ビジネスを行う側の企業やアプリケーションを提供する企業など、さまざまな企業とのパートナーエコシステムを構築し、議論をしながら、新たなマーケットを作り出していきたいと語った。