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シスコ、プライベートクラウドの電話サービス「Cisco UCM Cloud」を国内でも提供へ

 シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は21日、ホステッド型プライベートクラウドの電話サービス「Cisco UCM Cloud」を日本国内でも提供開始すると発表した。

 同サービスは、2000年よりオンプレミスで提供していた「Cisco Unified Communications Manager」(CUCM)を、クラウドサービスとして提供するもの。CUCMは、音声、ビデオ、メッセージなどのコミュニケーション機能を統合して提供するための呼制御サーバーで、米国や欧州では、すでに2019年よりCisco UCM Cloudを提供している。

 シスコでは電話ソリューションとして、Cisco UCM CloudおよびCUCMのほかにも、2019年11月よりウェブ会議プラットフォームの「Cisco Webex」に電話機能を追加したパブリッククラウドサービス「Cisco Webex Calling」を提供している。

Cisco UCM Cloudについて
シスコの電話ソリューション

 シスコ クラウド&ホスティッドコーリング営業部 マネージャの泰道亜季氏によると、Cisco Webex Callingは発表以来15~16社のパートナーに取り扱い可能なようになっており、パートナーとともに販促活動を行ってきたが、「(パブリッククラウドサービスである)Webex Callingを提案する中で、プライベートクラウドの電話サービスを求める顧客もいることがわかった。また、CUCMのユーザーが、同サービスをオンプレミスからクラウドに移行したいと希望するケースもある」ことから、Cisco UCM Cloudのサービス提供に至ったという。

【お詫びと訂正】

  • 初出時、「Cisco Webex Callingは発表以来15~16社に採用されている」となっておりましたが、これは誤りです。お詫びして訂正いたします。
シスコ クラウド&ホスティッドコーリング営業部 マネージャ 泰道亜季氏

 Cisco UCM Cloudは、オンプレミス型のCUCMをWebexデータセンターで運用してホストし、ユーザーごとに個別環境で提供する。CUCMをすでに導入しているユーザーは、設定を変更することなく同じ機能をクラウドに移行できるため、オフィスで利用していた音声通話やビデオ通話などの機能がそのまま、どこでも利用できるようになる。Cisco UCM CloudにてCisco WebexデバイスやCisco Webex Teamsアプリケーションの利用も可能だ。

 Cisco UCM Cloudは、Webex Edge ConnectやSD-WAN/VPN、MPLSなどの専用線でクラウドに接続する。そのため、より安定したネットワーク接続を希望するユーザーに適しているほか、セキュリティが理由でリモートでの電話業務ができなかった企業も導入できる。Cisco UCM Cloudを導入することで、「会社の固定電話を利用するためだけに出社する必要はなくなる」と泰道氏はいう。

 強固なセキュリティは、競合するシステムとの違いとしてシスコ 執行役員 コラボレーション アーキテクチャ事業担当の石黒圭祐氏が強調する点でもある。「シスコではセキュリティに妥協することなくサービスを提供している。世界各国の制度や規制にのっとっており、日本でも金融機関の独自基準に対応するなどして安全に使えるよう努めている」と石黒氏は説明する。

シスコ 執行役員 コラボレーション アーキテクチャ事業担当 石黒圭祐氏

 アジア地域では、日本とシンガポールのデータセンターで冗長性を保った上でCisco UCM Cloudを提供する。米国およびヨーロッパにもデータセンターがあり、サービスは世界60ヶ国以上で利用可能だ。「グローバル展開する企業で、国ごとに電話システムを運用する代わりに、Cisco UCM Cloudで統一した運用管理をすることも可能だ」と泰道氏は話す。

Cisco UCM Cloudのサービスエリア

 Cisco UCM Cloudは、最低アカウント数250ユーザーから契約が可能で、数十万規模のユーザーにも対応する。価格について泰道氏は、「要件によって変わるが、1ユーザーあたりランチ代程度と考えてもらいたい」としている。

 Cisco UCM Cloudの主なターゲットとなるのは「数千~数万ユーザー」と泰道氏。既存のCUCMを利用している顧客や、一般的なPBXを利用する顧客の規模が数千~数万ユーザーとなっているためだ。こうした顧客でクラウドへの移行を希望する場合や、電話が業務の中心となっている業種で、カスタマイズやサードパーティー製品との連携が必要な場合にCisco UCM Cloudが最適だという。

 ほかのクラウドPBXサービスとの違いについては、「ほかの多くのサービスは、簡易的にすぐ使いたい場合に適している。シスコの場合はそれがWebex Callingにあたる。UCM Cloudは、セキュリティやポリシーも含め、顧客のニーズに合わせたカスタマイズを実施する点が大きな差別化要素だ」(泰道氏)としている。

 シスコシステムズ 代表執行役員社長のデイヴ・ウェスト氏は、「シスコでは、あらゆる業界に対しどのような環境でも安全に働ける環境を提供している。Webexの顧客数はこの1年間で3倍となり、会議開催回数は5倍に、会議参加者数は8倍となった。データセンターも5回増強している。これからも柔軟な働き方に対応できるよう、安全なビジネスプラットフォームとしての存在価値を高めていきたい」と述べた。

シスコ 代表執行役員社長 デイヴ・ウェスト氏
Cisco Webexの1年の歩み