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SaaS組み込み型AIで業務はどう変わる? 日本オラクルら4社が語る「Oracle AI Agent Studio」導入の最前線
2026年2月12日 08:00
日本オラクル株式会社は10日、SaaS型の業務アプリケーションスイート「Oracle Fusion Cloud Applications Suite」に組み込まれたAIエージェント開発プラットフォーム「Oracle AI Agent Studio」について、ユーザー企業の2社、さらにパートナー企業とともに業務導入に向けて取り組む「4社勉強会」の成果を紹介する記者説明会を開催した。
ユーザー企業としては株式会社ファイントゥデイと株式会社ユーコット・インフォテクノが、パートナー企業としては株式会社中本・アンド・アソシエイツが登壇し、オラクルを含めた4社から活動が語られた。
オラクル:アプリケーションに組み込まれ、エンタープライズ向けであることが特徴
日本オラクル株式会社からは、中山耕一郎氏(理事 クラウド・アプリケーション事業統括 アプリケーション・ソリューション戦略統括 インダストリー&事業戦略本部 本部長)と、小野俊隆氏(クラウド・アプリケーション事業統括 アプリケーション・ソリューション戦略統括 インダストリー&事業戦略本部 AI推進)が、Oracle AI Agent Studioについて説明した。
OracleではFusion Cloud Applicationsとして、ERP、SCM、人事などのクラウドアプリケーションサービスを提供している。中山氏は、データがある場所にAIがネイティブに組み込まれていることを、AIエージェントプラットフォームとしてのOracle AI Agent Studioの特徴として挙げた。
「多くのAIアプリケーションでは、データをAI用に用意しなければいけない。それに対してOracleのFusion Cloud Applicationsではその必要がないというのが、シンプルだが大きな違いとなっている」(中山氏)。
そして現在、400の生成AIエージェントが提供されていると中山氏は語った。
小野氏は、同種のAIエージェント開発プラットフォームの中でのAI Agent Studioの特徴として、エンタープライズ向けである点を強調。Oracleの開発者が実際に使っているのと同じ環境を、顧客やパートナーに提供していると語った。
また、エンタープライズ向けのAIエージェントには、ビジネス要件にもとづくプロダクト定義や、ガバナンス、セキュリティ、テストと品質保証など、意識しなければならない要素が多いと説明。そしてAI Agent Studioでは、これらが担保された状態で、UXや開発者体験に集中して作っていけるのが長所だと述べた。
さらに、ビジネススピードに合わせて迅速に開発を進めるにあたり、ユーザー企業がローコードによる市民開発で実現できるスピード感があると説明。そうした顧客の課題解決や迅速な開発をオラクルがサポートしていくと、今回紹介する取り組みなどの支援について語った。
ファイントゥデイ:帳票に代わる参照手段としての可能性をつかむ
株式会社ファイントゥデイからは、小室英彦氏(IT本部 BITA 1部 Vice President)と槙智史氏(IT本部 BITA 1部 マネージャー)が登壇した。
ファイントゥデイは、資生堂のパーソナルケア部門から独立して2021年に設立され、TSUBAKIやunoなどの製品を手掛けている。基幹システムも事業開始とともに資生堂から独立したシステムに移行し、グローバルで1インスタンスのOracle Fusion Cloud Applicationsを導入している。
その安定化と改善の時期を経て、2025年には次のステップに進む時期に来た。「その中で、2025年3月にOracle AI Agent Studioが発表された。Oracleのクラウドアプリケーションに組み込まれていて、私たち自身で開発できる環境が整った」と小室氏は語った。
4社勉強会に至った経緯としては、ファイントゥデイでは2025年8月にAI Agent Studioを知ってPoCを開始したが、「自社だけでは技術や知識が不足していた」と槙氏。そこに、10月のイベント「Oracle AI World」での盛り上がりを見て日本のユーザーが集まり、交流会での発信がきっかけとなって、4社合同勉強会の発足や、社内での開発体制構築につながったという。
ファイントゥデイのこれまでの取り組みとしては、自社だけで取り組んでいたLEVEL 1ではPoCとして簡易的なエージェントを4つ(対話形式のデータ照会2つ、データ作成2つ)を開発したと槙氏は語った。PoCの結果としては、定性的にはエージェントの特性や有効性がわかったという。また定量効果としては、作業時間を大幅に短縮できる可能性や、帳票に代わる参照手段としての可能性をつかんだとのことだった。
2026年1月からのLEVEL 2では、定例業務を支援するエージェント開発に取り組んでいる。「LEVEL 1で難しかったことが、4社勉強会で知見をもらったり議論をしたりしたことで、すごいスピードでLEVEL 2まで到達できた」と槙氏。今後は、エージェントが得意とする領域において、可能な限り自動化を実現できるのではないかと思っていると語った。
ユーコット:ERPの操作が不慣れな現場の人でも照会でき、タイムラグ削減に
株式会社ユーコット・インフォテクノからは、馬場滉也氏(ビジネスデザイン&ソリューション本部 マネージャー)が登場した。
ユーコットは、飲料メーカーのUCCグループのIT会社で、業務の1つとしてサプライチェーン領域でOracle Fusion Cloud Applicationsを導入し、現在は活用のフェーズにある。
Fusion Cloud Applicationsを運用する中で、業務担当者によって業務の処理品質やスピードがばらつくという課題があった、と馬場氏は言う。そこでAIを使って作業や判断の前処理をすることで、作業を効率化するべく、AI Agent Studioに着手したという。
目指す姿は、現場の担当者自身がAIとともに業務を改善していくアプローチだと馬場氏。一気にすべての領域ではなく、購買、物流、製造などの分野ごとに現場部門と密に連携して作っていくと語った。
今回取り組んだPoCは、全社で使う購買領域のものだ。購買プロセスの流れには、サプライヤー選定から、価格登録、発注、支払いなど、いくつかの業務がある。「このいくつかのうち、AIが代替できる部分があるのではないかと考えている」と馬場氏は言う。
目指すものとしては、たとえばサプライヤー選定にAIが関わったり、価格登録においてチャットやPDF文書などからAIが必要事項を抜き出して登録したり、発注において異常発注をAIが検知してアラートを上げたりといったことだ。
現状の成果としては、自然言語による対話で発注状況をリアルタイムで照会し、さらにオーダーの更新やキャンセルなどのアクションもできるものを馬場氏は紹介した。「ERPの画面を使わずにチャットベースで操作できるので、ERPの操作が不慣れな現場の人でも使え、業務のタイムラグが大幅に削減されるのではないかと考えている」(馬場氏)。
今後の展望としては、支払い領域への拡張や、全体領域への拡張を考えている。「4社勉強会により、共通の課題を話し合ったり、情報をキャッチアップしたりできて、現場で本当に使えるエンタープライズAIができるんじゃないかと思う」と馬場氏は語った。
中本・アンド・アソシエイツ:AIエージェント開発はレポートを作る仕組みに似ている
パートナー企業の株式会社中本・アンド・アソシエイツからは、小西明宏氏(執行役員)とペリー・プブリコ氏(エンタープライズシステム事業部 シニアプリンシパルコンサルタント)が登場した。
同社はOracle ERP専業で長年の実績を持ち、現在ではクラウドアプリケーションに軸足を置いていると小西氏は紹介した。なお、2025年に出資を受けて丸紅I-DIGIOグループの企業となっている。
こうしたOracleアプリケーションの実績を踏まえ、「AIエージェントで限界を突破する」と小西氏は言う。これまでやりたくてもできなかったことがあり、その壁をAIで突破するという意味だ。たとえば、ERPを導入してもExcelや請求書などの手作業が残っていたのを、AIで解決できるのではないかと考え、取り組んでいるという。
その中でもAI Agent Studioに期待することについては、アプリケーションの標準サービスの中に入っているため、簡単にAI機能を追加できることを小西氏は挙げた。「日本や企業の独自要件で、これまでかゆい所に手が届かなかった部分があったので、AI Agent Studioがありがたい」(小西氏)。
今回の勉強会では、Order to Cash(受注から売上回収まで)に特化したAIエージェントを開発している、とプブリコ氏は紹介した。取り組みをフェーズ1とフェーズ2に分け、フェーズ1では質問に答えるAnswer型のAIエージェントを開発。フェーズ2では受注作成などの行動を起こすAction型のAIエージェントを開発している。
フェーズ1のAIエージェントは、ERPのオーダー画面でチャットボットに質問する形をとる。このPoCから学んだこととして、AIエージェント開発はERPでレポートを作る仕組みと似ていること、プロンプトでエージェントの挙動が決まること、業務知識と技術知識の組み合わせがベンダーの価値となることを、プブリコ氏は挙げた。
今後については、実装して終わりではなく、Oracleとユーザー企業、パートナーで一緒に育てていく業務だとプブリコ氏。Oracleは機能をより強化し、ユーザー企業は自社の業務に合ったAIエージェントを作り、パートナーはAIエージェントを使ったソリューションやユースケースをユーザー企業に共有していくことで、AIエージェントを良い方向に育てていきたいと語った。

























