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NECの2019年度通期連結業績は増収増益、営業利益は前年比120%増
新型コロナウイルス終息後の「New Normal」に向けた取り組みを加速
2020年5月13日 00:00
日本電気株式会社(以下、NEC)は12日、2019年度通期(2019年4月~2020年3月)の連結業績を発表した。
売上収益は、前年比6.2%増の3兆952億円、営業利益は同120.9%増の1276億円、調整後営業利益は同164.1%増の1458億円、税引前利益は同60.4%増の1239億円、当期純利益は同152.0%増の999億円となった。
NEC 代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏は、「すべてのセグメントで増収増益となった。また、中長期的な企業価値向上に資する追加施策を実行しながら、すべての指標で、期初計画を上回る業績を達成した。2018年度の一過性費用の500億円がなくなったことに加えて、構造改革で255億円の効果、オペレーション改善で350億円の効果、ビジネスPC特需では100億円の増益となっている」とする。
一方、「中長期的な企業価値向上に資する施策として、DXや5G関連における先行投資やセキュリティ強化、働き方改革などの環境整備や人材育成、収益改善および体質改善施策をあわせて105億円の一過性費用を計上した。このほか第4四半期の追加施策として、中南米などでの構造改革やエネルギー事業におけるパートナリングに向けた資産のクリーンアップ、宇宙事業における棚卸し評価減で165億円を実行。総額270億円の施策を実行した」とした。
セグメント別業績
セグメント別業績では、今回の業績発表から、従来のパブリック事業を社会公共事業と社会基盤事業に分割して発表している。
その社会公共の売上収益が前年比13.4%増の3246億円、調整後営業利益は前年から114億円増の186億円。自治体向けや医療向けITサービスを中心に売り上げが増加。収益性改善により増益になった。
社会基盤は売上収益が前年比1.5%増の6311億円、調整後営業利益は前年から85億円増の539億円。航空宇宙・防衛向けが増加。不採算案件の削減が増益に貢献したという。
エンタープライズは、売上収益が前年比5.5%増の4555億円、調整後営業利益は前年から13億円増の372億円。金融業向けの増加や売上計上部門の変更の影響などにより増収。計上変更の特殊要因を除いても、売上収益は前年比1%増となった。
ネットワークサービスは、売上収益が前年比10.8%増の5098億円、調整後営業利益は前年175億円増の382億円。固定ネットワーク領域の売り上げ増加に加え、一過性の大型案件があったことにより増収になった。
システムプラットフォームは、売上収益は前年比9.7%増の5487億円、調整後営業利益は前年から288億円増の489億円。更新需要があったビジネスPCを中心にハードウェアが増加。構造改革効果によって増益になったという。
グローバルは、売上収益が前年比20.6%増の4938億円、調整後営業損失は前年から188億円改善したものの、依然として38億円の赤字。セーファーシティや海洋システムなどが増加。サービスプロバイダソリューション、ワイヤレスソリューションも利益が改善した。
「グローバル事業では、調整後営業損益が計画を下回った。セーファーシティでは、KMDの新規連結により大幅な増収。海洋システムとエネルギーは、前年度の受注増を受けて増収となったが、ワイヤレスソリューションは不採算案件を計上し、選別受注の徹底により減収。ディスプレイでは激しい競争環境が継続し減収となった。ディスプレイ事業は方向性をつけ、エネルギーは年度内に新たな方策を打ち出したい。セーファーシティにおけるオーガニックの成長に力を注ぎたい」などと述べた。
その他事業は、売上収益が前年比35.4%減の1317億円、調整後営業利益は前年から96億円減の94億円となった。
なお、大型M&Aの成果についても言及。2008年に買収したNetcrackerは、2019年度の営業利益率が11%、2018年に買収したNorthgateは13%、KMDは7%となっており、「利益拡大に貢献している」と述べた。
2020年度の業績見通し
2020年度(2020年4月~2021年3月)の業績見通しは、売上収益が前年比2.1%減の3兆300億円、営業利益は同17.5%増の1500億円、調整後営業利益は同13.2%増の1650億円、当期純利益は同10.0%減の900億円とした。
「マクロ環境の変化に対して一定の強靭性を保った事業計画を策定。中期経営計画で掲げた利益目標を確保し、増配を計画している」とのことで、売上収益は2019年度のPC特需の反動や、ディスプレイ事業の非連結化により減収にしたものの、「調整後営業利益は、5Gなどに対する投資の増加があるが、一過性費用の減少や不採算案件の抑制によって増益を見込んでおり、2020中期経営計画で見込んだ目標を達成することになる」と述べた。
セグメント別業績見通しは、社会公共の売上収益が前年比0.1%増の3250億円、調整後営業利益は前年より84億円増の270億円。社会基盤は売上収益が前年比0.2%減の6311億円、調整後営業利益は前年より21億円増の560億円。
エンタープライズは、売上収益が前年比1.0%増の4600億円、調整後営業利益は前年より58億円増の430億円。ネットワークサービスは、売上収益が前年並の5100億円、調整後営業利益は前年より22億円減の360億円。
システムプラットフォームは、売上収益が前年比8.9%減の5000億円、調整後営業利益は前年より59億円減の430億円。グローバルは、売上収益が前年比6.8%減の4600億円、調整後営業利益は前年より238億円増の200億円の黒字化を見込む。
「2020年度上期に新型コロナウイルスが終息し、下期から立ち上がるとの前提で試算すれば、売上収益で5%の減少、営業利益では数百億円の影響が想定される。製造業が厳しいが、サービス業や運輸業が好調であり、官公庁やキャリアも堅調である。2桁の増益は確保できる」(NECの新野社長)とした。
また、NEC 代表取締役執行役員副社長兼CFOの森田隆之氏は、「マクロでみれば、十分な耐性力を持った予算が編成できたと考えている。400~500億円の売上総利益創出の可能性があり、その半分は費用削減などで対応できる。残りはテレワークなどで需要が活性化している領域で埋める。3月に新たな商材を発表しており、これらも貢献する」と述べた。
このほか、2020年度はGIGAスクール構想により、教育分野向けPCの導入が加速する1年になる。これについて「NECは教育分野において40%のシェア獲得に向けてがんばりたいが、利益に対する貢献は厳しいと考えている。教育市場の特性からそれほど期待はできない。数字で話せるほどの利益は期待していない」(NECの森田CFO)とした。
さらに、東京オリンピック/パラリンピックの延期による影響については、「2016年度から2020年度までに、2000億円の売り上げを獲得したいと考えてさまざまな施策を打ってきた。2019年度までは見込みを上回る推移であり、2000億円に対しては1~2割の過達になるだろう」(NECの新野社長)としたほか、「延期発表後の動きについては、組織委員会と話し合いをしていないため、2020年度の業績には盛り込んでいない。だが、事前の準備はほぼ整っており、2020年度業績への損益への影響はない」と語った。
一方、2020年度における新型コロナウイルス感染拡大への対応では、「危機下におけるキャッシュマネジメント」と「業績インパクトの極小化」の2点を挙げた。
NECの新野社長は、「先行きが不透明な環境を踏まえて、キャッシュマネジメントを徹底した上で、費用コントロールと新たなビジネス機会の獲得によって、業績へのインパクトを極小化する」とコメント。キャッシュマネジメントでは、4月23日に無担保普通社債として350億円を発行。3280億円のコミットメントラインを通じて、手元流動性を確保。さらに、資金投下先の優先順位づけを行い、不要不急の支出抑制を徹底。資産処分によるキャッシュ創出策を打ち出し、政策保有株式は段階的に原則ゼロの方針と、売却可能な資産の洗い出しと機動的な債権流動化を進める。
また、業績インパクトの極小化では、新型コロナウイルス終息後の「New Normal」に向けた取り組みを加速。「新型コロナウイルスの感染拡大により、デジタル化やリモート化、オンライン化、省人化、タッチレス化の進展し、社会の在り方が変化。遠くない時期に、自治体、教育、医療、製造、小売、物流などの分野で、新たな社会の在り方が求められる。そこに向けて、DXや生体認証、AI、5GなどのNECの技術をフルに生かし、ソリューション提供力を駆使してNew Normalな社会に貢献していく」とした。
テレワークソリューションでは、テレワーク環境の整備だけでなく、セキュリティ対策やAIチャットボットによる問い合わせ対応などを提案する。さらに、マスクを外さず本人確認が可能なマスク対応顔認証システムを開発。2020年3月には、NECグループ社員向けに同社本社ビルに導入し、2020年度上期中に製品化するという。また、新型コロナウイルスに対応したワクチンの設計、開発にも貢献。個別化がんワクチン開発に使用するAI予測技術を適用し、ワクチン開発の加速を目的とした提携活動を開始したことを報告した。
NECの新野社長は、「NECは、世界が直面する新型コロナウイルスという困難な課題を克服し、アフターコロナの新たな時代に貢献するための取り組みを加速したい」と述べた。