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NEC、2019年度第1四半期連結業績は増収増益 営業利益も黒字転換

 日本電気株式会社(以下、NEC)は7月31日、2019年度第1四半期(4~6月)の連結業績を発表した。

 売上収益は、前年同期比6.7%増の6538億円、営業利益は前年同期の107億円の赤字から、54億円の黒字に転換。また税引前利益は47億円の赤字から57億円の黒字に、当期純利益は57億円の赤字から45億円の黒字に転換した。

第1四半期 実績サマリー

 NEC 代表取締役執行役員副社長兼CFOの森田隆之氏は、「第1四半期はパブリックとその他事業を除いて、すべてのセグメントで増収。また、その他事業を除いて、すべてのセグメントで増益となった。社内計画に対して、損益は50億円程度上振れしている。そのうち、エンタープライズが約20億円、システムプラットフォームが約20億円、ネットワークが約10億円の上振れになっている」との状況を説明する。

 またそれぞれの内容について、「国内事業の第1四半期の受注は堅調なスタートを切った。パブリックではマイナンバー関連の中間サーバー更新案件の獲得し、受注動向は前年同期比22%増。エンタープライズでは金融業向けを中心として引き続き堅調で、特殊要因を除き、受注動向は同6%増。ネットワークサービスは5G導入を見据えた固定ネットワークの整備が活発化し、受注動向は前年同期比15%増となっている」とした。

NEC 代表取締役執行役員副社長兼CFOの森田隆之氏
国内事業の動向

 なお、第1四半期の構造改革効果は75億円。そのうち、特別転進支援施策で46億円、海外拠点の効率化などのその他施策で29億円となった。

 「2018年度に実施した構造改革の成果は確実に刈り取れている」とのことで、さらにオペレーション改善で110億円の効果があったという。

第1四半期の構造改革効果

セグメント別業績

 セグメント別業績では、パブリックの売上収益が前年同期比2.9%減の1803億円、営業利益は前年同期から22億円増の52億円。中央官庁や自治体、医療機関向けのITシステムや、放送局向け設備といった社会公共領域は増加するも、連結子会社である日本航空電子工業が減収となった。

 エンタープライズは、売上収益が前年同期比19.8%増の1143億円、営業利益は前年同期から29億円増の67億円。「金融業向けの増加や、特殊要因として、Office 365を中心としたライセンスが、社内の商流変更の影響で100億円程度プラスで計上されていることが影響したが、これを除いても売上収益は6%増となった。そのなかでも金融業が10%増となった。製造業および流通業は前年同期並となった。また、SIサービスの収益性が改善している」という。

パブリック事業の概況
エンタープライズ事業の概況

 ネットワークサービスは、売上収益が前年同期比11.6%増の1001億円、営業利益は前年同期から37億円増の12億円。「固定ネットワークの整備の活発化により増収。子会社のNECネッツエスアイも増収になった。楽天モバイル向けのビジネスも増収に寄与した」と述べた。

 システムプラットフォームは、売上収益は前年同期比14.0%増の1143億円、営業利益は前年同期から74億円増の47億円となった。ビジネスPCを中心にハードウェアや保守サービスが増加。また、23億円の構造改革効果に加えて、プロダクトミックスの改善、前年度にあった新製品立ち上げに伴い拡販費用が減少し、増益となった。

ネットワークサービス事業の概況
システムプラットフォーム事業の概況

 グローバルは、売上収益が前年同期比27.2%増の1142億円、営業利益は前年同期から60億円改善したものの、7億円の赤字となった。KMDの新規連結により、セーファーシティが増加。サービスプロバイダーソリューションではソフトウェアおよびサービスが増加。前年度での受注増を受けて、海洋システムやエネルギーも利益が改善した。選別受注を徹底したワイヤレスソリューションや、激しい競争環境が継続しているディスプレイは減収となった。なお、エネルギーとディスプレイは赤字だという。

 「グローバル全体では計画通りの改善になっている」とした。

 その他事業は、売上収益が前年同期比41.1%減の306億円、営業利益は前年から3億円減の27億円となった。

グローバル事業の概況

2019年度のセグメント別業績予想

 なお、同社では、2019年4月1日付けの組織再編に伴い、今回の2019年度第1四半期決算から、セグメントの一部を変更しており、2019年度のセグメント別業績予想は以下のようになっている。

・パブリック
売上収益8950億円、営業利益690億円

・エンタープライズ
売上収益4300億円、営業利益390億円

・ネットワークサービス
売上収益4550億円、営業利益300億円

・システムプラットフォーム
売上収益4800億円、営業利益380億円

グローバル
売上収益5500億円、営業利益170億円

その他事業
売上収益1400億円、営業利益50億円

セグメント変更の概要
セグメント変更の影響について

 森田副社長は、「受注のトレンドはスローダウンする傾向はない。だが、コネクタのビジネスを行っている日本航空電子では売り上げが縮小していたり、他社の決算を見ても、ハードウェアや部品関連、中国でビジネスを行っている企業が厳しい内容となっている。こうした企業の状況が長期化すれば、NECのITビジネスにも影響すると考えられる。足元で影響が出ているわけではないが、マクロの状況として、それらの点を気にしており、全社の通期業績見通しは据え置いた」とした。

 2019年度の業績見通しは、売上収益が前年比1.3%増の2兆9500億円、営業利益は同88.1%増の1100億円、当期純利益は同61.7%増の650億円としている。

業績予想サマリー

 今後、力を注ぐ領域としては、「セーファーシティ」「5G」「AI」の3つの領域をあげた。

 「セーファーシティ」では、「NECはバイオメトリクスに強く、それを活用できる領域を“セーファーシティ”としている。ここでは、eガバメントを含め、マイナンバーや政府が取り扱う個人情報による認証などの提案も期待している。オーガニックでの成長だけでなく、買収した企業との連携も進めていく。2020年度に2000億円の事業規模を目指しており、さらにその2年後、3年後には倍増以上を期待したい」とした。

 「5G」では、「NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに加えて、楽天もあり、5G領域の拡大が期待できる。NECは、こうした時代の到来をにらんで、約10年前にNetcrackerを買収した。ネットワークが仮想化するなかで、キーとなる領域の技術を持った企業であり、NECの技術との連携が、OSS/PSSの領域で楽天からの受注ができたと考えている。5Gの領域では、日本だけでなく、グローバルの市場に挑戦していく」と述べた。

 「AI」では、米国で起業したdotData(ドットデータ)や、Onco Immunity ASの買収などをあげ、「NEC単独でやるのではなく、パートナーとの連携を進める」とし、Onco Immunity ASでは、3000億円の企業価値、ドットデータでは500~1000億円の企業価値を目指すことを強調した。

 さらにNECでは、日本アビオニクスの株式の公開買い付けに対する応募契約を締結したことを発表。NAJホールディングスが実施予定の公開買い付けに対して、NECが所有する日本アビオニクス普通株のすべてを応募することになる。

 「公開買い付けが成立した場合、日本アビオニクスはNECの連結子会社から外れるが、連結業績に与える影響は軽微である。日本アビオニクスに対しては、NECグループ外へのさらなる事業拡大と、十分な経営資源の投入による成長を期待する」と述べた。

 そのほか、スターアライアンスと、顔認証を活用した本人確認プラットフォームの開発で協業したこと、EU首脳会議の要人入場管理に顔認証システムを提供したこと、ノルウェーのバイオテクノロジー企業であるOnco Immunity ASを買収し、ヘルスケア事業の強化を図ったことを示した。

日本アビオニクスの株式の公開買い付けに対する応募契約を締結
その他の事業トピックス