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トレンドマイクロが2020年の事業方針を発表、“新たな時代”に対応したセキュリティソリューションを提供へ

 トレンドマイクロ株式会社は27日、2020年のビジネス戦略を発表。新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の影響で世界的にリモートワークを実施する企業が増えたことを受け、1)DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するクラウドセキュリティの拡張、2)SaaSモデルへの移行加速とクロスレイヤーで脅威を検知し対処するTrend Micro XDRの提供、3)IoT関連ビジネスの推進強化――、といった3つを実現し、新たなカスタマーサクセス実現を進めるとしている。

 ビデオで登場した代表取締役社長兼CEOのエバ・チェン氏は、「ニューノーマルといわれるCovid-19の影響後の世界では、インフラが大きく変化する。それに合わせさまざまな新しいソリューションを2020年に提供する」と宣言。迅速に新たな時代のセキュリティソリューションを提供する考えを示した。

代表取締役社長兼CEOのエバ・チェン氏

Covid-19の影響によって環境の変化がさらに加速する

 日本市場での事業戦略発表については、取締役副社長の大三川彰彦氏が行った。大三川氏は、「お客さまを取り巻く環境が大きく変化している。Covid-19の影響によって、その変化がさらに加速する」と指摘。

 「日本は欧米に比べ遅れているといわれていたDXへの取り組みだが、2020年以降、急速に本格化するのではないか。Covid-19の影響が起こる以前から、オリンピックなどで必要だと言われていたリモートワーク導入は、今回の世界の変化により加速することになるだろう。ご存じの通り、現実になってきた5G利用によって工場のスマート化などもさらに進んでいくことになるだろう」

 こうした変化に合わせ、サイバーセキュリティを提供する企業として、「重要な情報がクラウド上にあがり、サイバー攻撃は巧妙化している。IoTが5G普及によって進展する中で、社会インフラへの攻撃などが起こり、さらに家庭で利用するホームルータが攻撃にあうといった事態も起こっている。変化に応じた対策を提供していく必要がある」と、新たなセキュリティ対策を提供する必要性をアピールした。

取締役副社長の大三川彰彦氏(写真提供:トレンドマイクロ)

 DX対策としては、多様化するクラウド環境を保護するソリューション「Trend Micro Cloud One」を6月1日から順次リリースしていく。

 Cloud Oneには「Cloud Native Applications」、「Cloud Migration」、「Cloud Operational Excellence」の3つの領域があり、Application Security、File Storage Security、Conformity、Network Security、Workload Security、Container Securityの計6つのファンクションを一元的に管理していくことが可能となる。

 さらに、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudと複数のパブリッククラウドベンダーのクラウドで利用可能となっている。

Trend Micro Cloud One

 「Cloud Native Applicationsではさまざまなベンダーと連携している。例えば、オープンソースコードのセキュリティチェックを行うsnyk社ともパートナーシップを行っている。Cloud Migrationは2年前から侵入防御システムTippingPointを提供し、多数の実績が出ている。Cloud Operational Excellenceは、昨年買収したCloud Conformity社のクラウドセキュリティの状態管理CSPMを、当社の機能の1つとして初めて提供する」(大三川氏)。

 SaaSモデルへの移行に関しては、リモートワークにも対応できることから、現行製品に加えSaaSラインアップをさらに拡充していく。自宅からのアクセスを保護する「ウイルスバスター for Home Network」を新たに投入することが決定している。

 「SaaSラインアップ拡充がなぜ必要なのか。アップデートの自動化、パッチを自動であてるといった機能を提供することによって、安全性がアップするとともに、わざわざ出社して対応しなければならなかった運用管理者への負担を軽減することにつながる。いつでも、どこからでも管理することを可能にする。さらに、オンプレミスに比べ、コストダウン実現も行える」(大三川氏)。

リモートワークにも対応するSaaSラインアップの拡充とホームネットワークセキュリティ

 また「Trend Micro XDR」では、SaaS版でこれまで別個に提供されていた製品間の連携も行っていく。各製品のログをクラウド上に集約し、相関分析を実施。その結果を可視化してクラウドベースの管理コンソールで必要な情報だけを知ることが可能になる。

 「欧米では多数のユーザーが利用しており、それをさらにブラッシュアップしてお届けする。30年間培ったスレッドインテリジェンスによって脆弱性をいち早く見つけるとともに、必要最小のアラートを届けることで、有効なアラートだけが伝わる環境を作る」(大三川氏)。

 なおトレンドマイクロでは、外部調査機関MITREの評価を公表し、「91%の検知率となった。この検知率と少ないアラートを両立することで、真に必要なアラートを利用者の皆さまにお届けする」(大三川氏)とアピールしている。

Trend Micro XDR
スレットインテリジェンス

 IoTビジネスの強化については、5G時代となって新たなエリアでのビジネスを展開する。通信事業者に加え自治体、企業との連携によって5Gソリューション拡充を行っている。さらに、すでに提供を始めている工場向けスマートファクトリー、スマートコンシューマについては、現状からの進化を実現する。

 「Trend Micro Consumer Connect」は、マネージドサービスパートナーがインターネットを活用したコンシューマのサイバーセキュリティを、さまざまな場面で実現するSaaSプラットフォームとなる。

 「これまでエンドポイントセキュリティは提供してきたが、通信事業者と当社が持つ全世界でのログを組み合わせることで、マネジメントに有効な情報を提供していくことが可能となる。そこにデバイスを組み合わせることで最適なコンシューマのためのセキュリティを実現する」(大三川氏)。

 さらに、Connected Car向けセキュリティ向けのセキュリティ製品を提供し、Trend Micro XDRにデータを蓄積していく。

Trend Micro Consumer Connect
Connected Car向けソリューション

 このほか、スマートファクトリー向け製品の拡充を行い、「これまでお付き合いのなかった、専門性を持ったSoCビジネスを展開するパートナーとの連携も実現することになる」という。具体的には東京エレクトロンデバイスとの連携を行う計画だ。従来のIT領域だけでなく、OT領域でのセキュリティ提供を拡大する。

 大三川氏は新しい施策を6月1日から順次提供していくことで、「ニューノーマルの世界では、リモートワークが欠かせないテーマとなることは間違いない。クラウドと遠隔管理によって、グローバルガバナンスのもとで従来のやり方とは異なるセキュリティ管理を提供していく」と強調した。

スマートファクトリー向けの取り組み