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ヴイエムウェアの今後20年を支えるアプリとインフラのポートフォリオ――、「Tanzu Portfolio」「Cloud Foundation 4 with Tanzu」を発表

 ヴイエムウェア株式会社は11日、2019年8月に発表したネイティブKubernetesプラットフォーム「VMware Tanzu」を大幅に刷新/拡張したアプリケーションポートフォリオ「VMware Tanzu Portfolio」、およびモダンアプリケーションに最適化されたハイブリッドクラウドのためのインフラ「VMware Cloud Foundation 4 with Tanzu」を発表した。

 発表を行ったヴイエムウェア チーフストラテジスト 高橋洋介氏は「開発者とIT運用管理者の双方にとって、スピーディで使いやすく、かつセキュアな製品ポートフォリオを実現することができたと思っている。VMwareの今後20年を支える基盤といってもいい」と語っており、買収製品の統合も含め、ここ数年における同社最大のアップデートに位置付けている。

VMware Tanzu Portfolio

 2019年8月の「VMworld 2019」で構想が発表されたVMware Tanzuは、アプリケーション開発環境(Pivotal/Bitnami)、アプリケーション実行環境(Project Pacific)、Kubernetes運用管理(VMware Tanzu Mission Control)という3つのコンポーネントがメインだった。

 これに対し、今回アップデートされたVMware Tanzu Portfolioには、さらに複数のコンポーネントが追加された上で再編成されており、Kubernetesを中心としたモダンアプリケーション統合プラットフォームとしての完成度を高めている。

VMware Tanzu Portfolioの概要。モダンアプリケーションプラットフォームとして、Kubernetesを中心に開発から運用に至るまであらゆるフェーズをサポートするコンポーネントを今後も追加していく

 VMware Tanzu Portfolioのコンポーネントとして3月11日付けで一般提供が開始される製品は、以下の3つとなる。

VMware Tanzu Kubernetes Grid

Kubernetesをベースにした、あらゆるクラウド上で展開可能なコンテナランタイムで、2019年8月に発表されたProject Pacificを拡張したもの。vSphereとネイティブKubernetesを統合し、vSphere上でモダンアプリケーションの実行を可能にしているほか、AWS、Azure、Google Cloudなどのパブリッククラウドにも対応(現時点で対応済みのパブリッククラウドはAWSのみ)

Tanzuポートフォリオの中でもKubernetesラインタイムとして重要な役割を果たすTanzu Kubernetes Gridは、あらゆる環境(Any Cloud)でのモダンアプリケーション実行をサポートする
VMware Tanzu Mission Control

シングルポイントで複数のKubernetes環境(vSphere、パブリッククラウド、マネージドサービス、ユーザーの独自Kubernetesクラスタなど)を管理する制御プレーン

VMware Tanzu Application Catalog

買収したBitnamiのカタログを使用するアプリケーションカタログサービス。個々の利用目的に応じて最適なオープンソースソフトウェアを選択可能(旧Project Galleon)

 これらに加え、VMwareは今後も随時、Tanzuポートフォリオを拡充していくとしており、あわせて既存製品とTanzuポートフォリオの統合も進めている。

 以下にその一部を示す。

VMware Tanzu Application Service

2019年12月に買収を完了したPivotalのアプリケーションデリバリサービス「Pivotal Application Service」を改称

VMware Tanzu Observability by Wavefront

2017年に買収したWavefrontの技術をベースにしたメトリクス監視サービス「VMware Wavefront」を改称

Tanzu Service Mesh

ネットワーク仮想化製品「VMware NSX」にオープンソースのサービスメッシュ製品「Istio」を統合した「VMware NAX Service Mesh」を、Tanzuポートフォリオと連携

Spring by VMware

Webアプリケーションフレームワーク「SpringBoot」など、旧Pivotalのソフトウェア資産をTanzuポートフォリオに連携または統合

VMware Cloud Foundation 4 with Tanzu

 Kubernetesベースのクラウドネイティブアプリケーションの開発/実行/管理をコアとする統合プラットフォームがTanzuポートフォリオであるなら、VMware Cloud Foundation 4 with Tanzuは、オンプレミスや仮想環境といったレガシーから複数のパブリッククラウド、コンテナ環境までを、ハイパーバイザーやロケーションを問わずに単一の基盤でサポートするハイブリッドクラウドプラットフォームである。

 基本的には、クラウドネイティブなモダンインフラの構築を指向するが、同時にレガシーのサポートも一貫して継続していくという、VMwareのアプローチを強く反映した製品構成となっている。

 VMware Cloud Foundation 4 with Tanzuに含まれるコンポーネントのアップデート内容は、以下の通り。

VMware vSphere 7

vSphereとKubernetesをネイティブ統合(ESXi内部にコンテナランタイムを実装)したvSphereの新バージョンで、既存のvSphereをほぼゼロから書き直している(旧Project Pacificがベース)。モダンなコンテナ環境を前提にしたクラウドネイティブなワークロードはもちろんのこと、レガシーアプリケーションなど、既存の仮想マシンでの稼働を前提にしたワークロードも同一の基盤から最適化して実行可能

vSphere 7もKubernetesネイティブに。モダンアプリケーションはもちろん、仮想マシンも従来どおりサポートする
VMware vSAN 7

ライフサイクルの簡素化、ブロックストレージやファイルストレージなど複数のストレージプロトコルを統合的に管理するネイティブファイルサービス、クラウドネイティブなワークロードへの最適化などを実現したvSANの最新版

VMware vRealize 8.1

vSphere 7上で稼働するコンテナ管理やVMware Cloud on AWSのネイティブサポートなどが追加

VMware NSX-T

仮想環境、コンテナ、パブリッククラウドをサポートするフルスタックのネットワーク/セキュリティサービス

 また、VMware Cloud Foundation 4 with Tanzuは“with Tanzu”という名前からもわかる通り、Tanzu Kubernetes GridなどのTanzuポートフォリオとの連携を図ることで、Kubernetes APIまたはRESTful APIを各コンポーネントから利用可能となっている。

今回発表されたTanzuポートフォリオとVMware Cloud Foundation 4 with Tanzuのコンポーネントを連携させることで、アプリケーションのモダナイゼーションとマルチクラウドを包括的に実現できるというのがVMwareのコンセプト

 その仲介を行う統合型APIサーフェスが「VMware Cloud Foundation Services」で、Kubernetes開発のコアサービスを提供する「Tanzu Runtime Services」と、vSphere 7で利用可能な拡張サービス「Hybrid Infrastructure Services」が含まれる。

 この特徴について高橋氏は、「仮想マシンとコンテナを単一のプラットフォームでサポートできるハイブリッドなインフラ」と表現している。

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 「VMwareの今後20年を支えるアプリケーションとインフラのポートフォリオ」――。

 高橋氏の言葉には、ここ数年、Kubernetesを中心に製品プラットフォームを大胆に見直し、Heptio、Wavefront、Pivotal、Bitnamiなど数々の買収企業の技術を統合してきた一連の再編成に、ようやくひとつの区切りがついたことが表れている。

 VMwareは一貫して「Any Device, Any Application, Any Cloud」をミッションとして掲げ続けているが、このミッションを支える中心技術はいまやvSphereではなくKubernetesであり、それを包括的な製品ポートフォリオとして結実させたのがTanzuである。

VMwareのビジョンである「Any Cloud, Any Application, Any Device」に向けて、今後はTanzuがキーファクターとなる

 2019年8月に米国サンフランシスコで行われたVMwareの年次カンファレンス「VMworld 2019」のキーノートにおいて、初めてTanzuのコンセプトを発表したVMwareのパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)CEOは、「開発と運用、この2つの世界をつなぐブリッジとしてのKubernetesを、インフラベンダーとして提供していく」と語り、エンタープライズKubernetesにおけるNo.1サプライヤーを目指していく姿勢を明確にした。

 vSphereやvSAN、NSXなど現在もVMwareを支える技術と同等、あるいはそれ以上にKubernetes/Tanzuの存在感を市場と顧客に示す――。それがVMwareの今後20年を左右する重要な試金石となることは間違いない。

2019年8月に行われた「VMworld 2019」でVMware Tanzuのコンセプトを発表した、パット・ゲルシンガーCEO(左)。右隣に立つのは、2018年に買収したHetioの創業者で、Kubernetesの生みの親のひとりでもあるジョー・ベダ氏。TanzuはHeptioの技術リソースが大きな原動力となって誕生したポートフォリオといえる