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ヴイエムウェアの今後20年を支えるアプリとインフラのポートフォリオ――、「Tanzu Portfolio」「Cloud Foundation 4 with Tanzu」を発表
2020年3月16日 06:00
ヴイエムウェア株式会社は11日、2019年8月に発表したネイティブKubernetesプラットフォーム「VMware Tanzu」を大幅に刷新/拡張したアプリケーションポートフォリオ「VMware Tanzu Portfolio」、およびモダンアプリケーションに最適化されたハイブリッドクラウドのためのインフラ「VMware Cloud Foundation 4 with Tanzu」を発表した。
発表を行ったヴイエムウェア チーフストラテジスト 高橋洋介氏は「開発者とIT運用管理者の双方にとって、スピーディで使いやすく、かつセキュアな製品ポートフォリオを実現することができたと思っている。VMwareの今後20年を支える基盤といってもいい」と語っており、買収製品の統合も含め、ここ数年における同社最大のアップデートに位置付けている。
VMware Tanzu Portfolio
2019年8月の「VMworld 2019」で構想が発表されたVMware Tanzuは、アプリケーション開発環境(Pivotal/Bitnami)、アプリケーション実行環境(Project Pacific)、Kubernetes運用管理(VMware Tanzu Mission Control)という3つのコンポーネントがメインだった。
これに対し、今回アップデートされたVMware Tanzu Portfolioには、さらに複数のコンポーネントが追加された上で再編成されており、Kubernetesを中心としたモダンアプリケーション統合プラットフォームとしての完成度を高めている。
VMware Tanzu Portfolioのコンポーネントとして3月11日付けで一般提供が開始される製品は、以下の3つとなる。
VMware Tanzu Kubernetes Grid
Kubernetesをベースにした、あらゆるクラウド上で展開可能なコンテナランタイムで、2019年8月に発表されたProject Pacificを拡張したもの。vSphereとネイティブKubernetesを統合し、vSphere上でモダンアプリケーションの実行を可能にしているほか、AWS、Azure、Google Cloudなどのパブリッククラウドにも対応(現時点で対応済みのパブリッククラウドはAWSのみ)
VMware Tanzu Mission Control
シングルポイントで複数のKubernetes環境(vSphere、パブリッククラウド、マネージドサービス、ユーザーの独自Kubernetesクラスタなど)を管理する制御プレーン
VMware Tanzu Application Catalog
買収したBitnamiのカタログを使用するアプリケーションカタログサービス。個々の利用目的に応じて最適なオープンソースソフトウェアを選択可能(旧Project Galleon)
これらに加え、VMwareは今後も随時、Tanzuポートフォリオを拡充していくとしており、あわせて既存製品とTanzuポートフォリオの統合も進めている。
以下にその一部を示す。
VMware Tanzu Application Service
2019年12月に買収を完了したPivotalのアプリケーションデリバリサービス「Pivotal Application Service」を改称
VMware Tanzu Observability by Wavefront
2017年に買収したWavefrontの技術をベースにしたメトリクス監視サービス「VMware Wavefront」を改称
Tanzu Service Mesh
ネットワーク仮想化製品「VMware NSX」にオープンソースのサービスメッシュ製品「Istio」を統合した「VMware NAX Service Mesh」を、Tanzuポートフォリオと連携
Spring by VMware
Webアプリケーションフレームワーク「SpringBoot」など、旧Pivotalのソフトウェア資産をTanzuポートフォリオに連携または統合
VMware Cloud Foundation 4 with Tanzu
Kubernetesベースのクラウドネイティブアプリケーションの開発/実行/管理をコアとする統合プラットフォームがTanzuポートフォリオであるなら、VMware Cloud Foundation 4 with Tanzuは、オンプレミスや仮想環境といったレガシーから複数のパブリッククラウド、コンテナ環境までを、ハイパーバイザーやロケーションを問わずに単一の基盤でサポートするハイブリッドクラウドプラットフォームである。
基本的には、クラウドネイティブなモダンインフラの構築を指向するが、同時にレガシーのサポートも一貫して継続していくという、VMwareのアプローチを強く反映した製品構成となっている。
VMware Cloud Foundation 4 with Tanzuに含まれるコンポーネントのアップデート内容は、以下の通り。
VMware vSphere 7
vSphereとKubernetesをネイティブ統合(ESXi内部にコンテナランタイムを実装)したvSphereの新バージョンで、既存のvSphereをほぼゼロから書き直している(旧Project Pacificがベース)。モダンなコンテナ環境を前提にしたクラウドネイティブなワークロードはもちろんのこと、レガシーアプリケーションなど、既存の仮想マシンでの稼働を前提にしたワークロードも同一の基盤から最適化して実行可能
VMware vSAN 7
ライフサイクルの簡素化、ブロックストレージやファイルストレージなど複数のストレージプロトコルを統合的に管理するネイティブファイルサービス、クラウドネイティブなワークロードへの最適化などを実現したvSANの最新版
VMware vRealize 8.1
vSphere 7上で稼働するコンテナ管理やVMware Cloud on AWSのネイティブサポートなどが追加
VMware NSX-T
仮想環境、コンテナ、パブリッククラウドをサポートするフルスタックのネットワーク/セキュリティサービス
また、VMware Cloud Foundation 4 with Tanzuは“with Tanzu”という名前からもわかる通り、Tanzu Kubernetes GridなどのTanzuポートフォリオとの連携を図ることで、Kubernetes APIまたはRESTful APIを各コンポーネントから利用可能となっている。
その仲介を行う統合型APIサーフェスが「VMware Cloud Foundation Services」で、Kubernetes開発のコアサービスを提供する「Tanzu Runtime Services」と、vSphere 7で利用可能な拡張サービス「Hybrid Infrastructure Services」が含まれる。
この特徴について高橋氏は、「仮想マシンとコンテナを単一のプラットフォームでサポートできるハイブリッドなインフラ」と表現している。
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「VMwareの今後20年を支えるアプリケーションとインフラのポートフォリオ」――。
高橋氏の言葉には、ここ数年、Kubernetesを中心に製品プラットフォームを大胆に見直し、Heptio、Wavefront、Pivotal、Bitnamiなど数々の買収企業の技術を統合してきた一連の再編成に、ようやくひとつの区切りがついたことが表れている。
VMwareは一貫して「Any Device, Any Application, Any Cloud」をミッションとして掲げ続けているが、このミッションを支える中心技術はいまやvSphereではなくKubernetesであり、それを包括的な製品ポートフォリオとして結実させたのがTanzuである。
2019年8月に米国サンフランシスコで行われたVMwareの年次カンファレンス「VMworld 2019」のキーノートにおいて、初めてTanzuのコンセプトを発表したVMwareのパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)CEOは、「開発と運用、この2つの世界をつなぐブリッジとしてのKubernetesを、インフラベンダーとして提供していく」と語り、エンタープライズKubernetesにおけるNo.1サプライヤーを目指していく姿勢を明確にした。
vSphereやvSAN、NSXなど現在もVMwareを支える技術と同等、あるいはそれ以上にKubernetes/Tanzuの存在感を市場と顧客に示す――。それがVMwareの今後20年を左右する重要な試金石となることは間違いない。