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VMware、モジュール型マルチクラウド基盤「VMware Cloud」を発表
サブスクリプションサービス「VMware Cloud Universal」とともにマルチクラウドでのDXを支援
2021年4月9日 06:00
米VMwareは3月31日(米国時間)、マルチクラウド環境下でのデジタルトランスフォーメーションを加速する分散型マルチクラウドプラットフォーム「VMware Cloud」をグローバルで発表した。
またVMware Cloudのローンチにともない、サブスクリプションサービス「VMware Cloud Universal」、インフラの可視化と管理を一元化して提供する「VMware Cloud Console」、アプリケーションの優先付けを行う「VMware App Navigator」も新たなオファリングとして同時に発表されている。
国内報道関係者向けの説明会に出席したVMware プロダクト&クラウドサービス部門COO ラグー・ラグラム(Raghu Raguram)氏は、「複雑で変化の激しいIT環境やビジネスニーズに応えられる、非常にユニークなオファリングを用意することができたと思っている。VMware Cloudはマルチクラウド前提のアプリケーションモダナイゼーションを加速する唯一の製品群」と語っており、マルチクラウド関連のポートフォリオを数多く擁するVMwareならではのDX基盤である点を強調する。
分散型マルチクラウドを前提とするモジュラー型プラットフォーム
VMware Cloudは、「ワークロードのクラウド移行」「アプリケーションのモダナイズ」という、ここ数年来のデジタルビジネスにおけるニーズを反映した、分散型マルチクラウドを前提とするモジュラー型プラットフォームだ。「現在、企業の80%が複数の環境(データセンター、パブリッククラウド、エッジ)にまたがる分散型モデルでアプリケーションを展開」(ラグラム氏)しており、オンプレミスを含むマルチクラウド環境での迅速なアプリケーション開発/運用は企業のデジタルビジネス、さらにはDXの成功に欠かせない要素となっている。
その一方で、企業の多くはクラウド移行が進まないモノリシックでレガシーなアプリケーションや個々のクラウド環境におけるセキュリティポリシーの違い、環境ごとのサイロ化などに悩まされている。時代に適した最先端のアプリケーションを迅速に開発する必要に迫られているにもかかわらず、レガシーとモダンが分散して混在する複雑な環境の統合は遅々として進まない。
VMware Cloudは、そうした複雑で管理しにくいマルチクラウド環境下であっても、アプリケーションのモダナイズを推進することを可能にするプラットフォームだ。VMwareには、オンプレミス/プライベートクラウドとパブリッククラウドにまたがったハイブリッド環境を実現する「VMware Cloud Foundation(VCF)」と、クラウドネイティブなモダンアプリケーションを迅速に開発/デプロイする「VMware Tanzu」という2つの重要なプラットフォームがある。
VMware Cloudはこの2つをベースに構築されており、ユーザーは一貫したオペレーションとセキュリティのもと、VCFがサポートする環境であればどこにでも、どのアプリケーションでも展開/実行することが可能になる。
ラグラム氏は「ユーザー企業のニーズに応じてベストなサービスを選択できるよう、VMware Cloudはモジュラー型でデザインされている」と語っており、例えばTanzuで開発したモダンアプリケーションをネイティブなパブリッククラウド上に展開し、パブリッククラウドが提供するサービスと連携させることも可能だとしている。
複数の異なる環境をまたいだオペレーションについても「一貫した運用ポリシーのもとで、フリクションレスなエクスペリエンスを提供する」とラグラム氏は自信を見せる。
「VCFはSDDC(Software-Defined DataCener)環境を構築するプラットフォームとして世界中の企業ユーザーに使われてきたが、VMware Tanzuもまたモダンアプリケーションの開発/デプロイ基盤としてすでに多くの実績を残している。Tanzuによりアプリケーション開発の生産性は80%向上し、アプリケーションのクラウドシフトのスピードは46%高速化、運用コストは59%削減可能になるというデータもある」(ラグラム氏)。
3つの関連オファリング
VCFがサポートするオンプレミス/クラウド環境に加え、いわゆるハイパースケーラーと呼ばれるパブリッククラウド(AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、IBM Cloud、Alibaba Cloudなど)でも、ネイティブなアプリケーション展開/実行を可能にするVMware Cloud。VMwareは関連オファリングとして「VMware Cloud Universal」「VMware Cloud Console」「VMware App Navigator」の3製品を同時に発表している。
VMware Cloudのサブスクリプションサービスとして提供されるVMware Cloud Universalについて、VMware シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャ マーク・ローマイヤー(Mark Lohmeyer)氏は「顧客の選択肢を広げることができる、非常にフレキシブルなマルチクラウドのサブスクリプションサービス」と表現する。
今回新たに提供されるのは「VMware Cloud Foundation Subscription」ライセンス、つまりVCFをサブスクリプションサービスとして利用できるクレジットで、契約期間中はいつでもデプロイが可能になる。
加えてVMwareが提供するマネージドサービス「VMware Cloud on AWS」または「VMware Cloud on Dell EMC」にライセンスを振り替えることも可能で、パブリッククラウドへの移行やピーク時の一時的なリソース追加などでの活用が見込まれる。また、VMwareのパーペチュアルライセンスなど既存のオンプレミスの資産をVMware Cloud Universalに適用することもできるため、オンプレミスからクラウドへのスムーズで低コストな移行やポートフォリオの転換を促進する効果も期待できる。
マルチクラウドインフラのサブスクリプションクレジットに加え、VMware Cloud Universalには、マルチクラウドのオペレーションをSaaSで提供する「vRealize Cloud Universal」、Kubernetesクラスタをマルチクラウド上で一元管理する「VMware Tanzu Standard Edition」、VMware Cloudによる成果をより速く、継続的に得るためのサポート「VMware Success 360」といったサービスも含まれる。
VMware Cloud Consoleは、ユーザーが利用するすべてのVMware Cloudインフラをエンドツーエンドで統一されたビューで可視化/制御するサービス。VMware Cloud Universalにおけるクレジットの振り替えや対象インフラへのデプロイ/プロビジョニング、サポート部門への問い合わせなどを一元的に管理し、VMwareポートフォリオのリソース最適化を図る統合的なポータルとして機能する。
最後のVMware App Navigatorは、多くの企業が苦労するアプリケーションやクラウドのモダナイゼーションに関して、VMwareのスペシャリストがサポートする4週間のプログラムだ。企業のアプリケーションポートフォリオに優先順位をつけ、ハンズオンを繰り返しながらパターンを見つけ、モダナイゼーションを進めていく。DXの失敗事例でありがちな「すべて計画したのに、何も実現しなかった(Plan Everything, Complete Nothing)」を回避する構成となっているという。
なお、VMware Cloud Universal/VMware Cloud Console/VMware App Navigatorの提供は、英語圏の国と地域では3月31日の発表と同時に開始されているが、日本市場においては、VMware Cloud Universalが2022年1月ごろの開始予定だとしている(VMware Cloud Consoleについては未定、VMware App Navigatorは3/31に提供開始)。
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「たいていの企業は、少なくとも2つ以上のクラウドサービスを利用している。だがそれらを統合して扱えるインフラサービスはほとんどない」というローマイヤー氏の言葉にあるように、ほとんどの企業は好むと好まざるにかかわらずマルチクラウドという環境に置かれている。さらにワークロードの分散化は急速に進んでおり、場所を問わずにすべてのアプリケーションが動くことはどの企業も臨んでいる。
だが、現実にはレガシーアプリケーションのモダナイズやクラウドシフトは容易には進まず、レガシーインフラにひもづいたままの状態となりがちだ。DXの成功を支える存在がモダンアプリケーションだとわかっていながら、レガシーから抜け出す道を見つけられていない企業は少なくない。
「デジタルビジネスへのトランスフォーメーションを進める企業のCIOを悩ませるのは、クラウドシフトとアプリケーションのモダナイズ、この2つが進まないことだ。VMware Cloud(と関連オファリング)はこうした問題をシンプルに解決するソリューションだといえる。グローバルで8500万のワークロードを実行し、500万人以上の開発者がアプリを構築しているVMwareだからこそ実現できたプラットフォームだ」(ラグラム氏)。
今回の発表でもうひとつ注目すべき点が、インフラとアプリケーションのモダナイズを加速するソリューションの提供手段として、SaaS/サブスクリプションサービスを選択している点だ。
現在、DXに臨む企業の多くがビジネスの迅速な立ち上げや市場ニーズに応じた柔軟な変更を可能にするため、IT基盤のSaaS化を積極的に進めており、いまやSaaSはデジタルビジネスを構成する重要なコンポーネントとなりつつある。VMwareはこれまでマルチクラウド管理ツール「VMware CloudHealth」などをSaaSで提供してきたが、VMware Cloud UniversalのSaaS提供はより多くの企業をターゲティングしており、VMwareのSaaSビジネスへの投資を強く印象づけるものとなっている。
マルチクラウド、アプリケーションのモダナイズ、そしてSaaSというDXを支えるソリューションとしてVMware Cloud製品群が市場からどう評価されるか、引き続き注視していきたい。