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NECが企業向けSDN事業を強化、新製品・サービスも投入し適用領域の拡大を図る

 日本電気株式会社(以下、NEC)は3日、SDNコントローラやスイッチ、無線LANなど、企業向けSDN(Software-Defined Networking)の新製品を発表するとともに、マネージドネットワークサービスメニュー「NEC Smart Connectivity」において、新たなSDNに対応したサービスを提供すると発表した。

 また、SDNに関するサービス展開や提供を担う専任者を、現在の2.5倍となる250人体制に拡大することも発表。SDN関連の製品、サービス事業で、今後3年間に1000億円の売り上げを目指すとした。

SDN事業の推進体制を強化

 NEC デジタルネットワーク事業部長の尹 秀薫(ユン・スフン)氏は、「Society 5.0の実現を視野に入れた企業では、柔軟、迅速、安全に、人、モノ、コトをつなぐ、新たなSDNサービスが求められている。NECが有するさまざまな業種の知識と導入実績、ネットワーク構築力、運用管理ノウハウ、サービス開発力などを生かし、SDN事業を強化していく」と説明。

 さらに、「NECが培ってきたネットワークアセットの集約、NECグループ各社とのシナジー強化も進める。知見を標準化したサービス、サービス指向型のSDN製品の強化、100億円の新規開発投資などにより、SDN事業を強化していく」との方針を示したほか、「SDNによるサスティナブルなデジタルネットワークによって、人、モノ、コトを豊かにつなげ、お客さまのビジネス拡大と社会貢献を目指す」とも述べた。

NEC デジタルネットワーク事業部長の尹 秀薫氏

SDNに対応したマネージドネットワークサービスメニューを提供

 NEC Smart Connectivityにおいて提供するSDN関連サービスは、ネットワーク機器と保守をセットで提供する「機器サービス」、サービスデスクや機器の監視、運用管理を行う「運用管理サービス」で構成される。

 機器サービスは、ルータやスイッチ、無線LANなどをNECの資産として月額で提供するもの。24時間365日よるオンサイトによる障害対応を行う。

 一方の運用管理サービスでは、ネットワーク機器を24時間365日対応で自動監視するもの。インシデントや問題、変更管理、ネットワーク構成の管理などのほか、運用においては、問い合わせ窓口の提供やリモート設定変更、毎月の運用状況報告などを提供する。

 価格例として、300人の拠点を10拠点(3000人)の場合のサービス価格は、機器サービスが月額約250万円、運用管理サービスが月額約150万円となっている。

 従来のシステム構築型(SI型)に加えて、機器から、構築、運用、保守までをサービス型としても提供することにより、ネットワークの導入、運用コストの適正化に加えて、柔軟で安全なネットワークを、迅速に構築・変更できるようになるという。

 さらに、煩雑なネットワークの構築や運用をNECに委託することで、導入する企業は本業に集中したり、新規事業の創出につなげたりするなど、攻めのIT人材へのリソースシフトが図れるとした。

 「設計、構築、運用、保守、改善といったライフサイクルマネジメントにより、お客さまとサスティナブルな関係を構築し、ワンストップサービスによる安心感を提供できる」。なお、これらのサービスは国内を対象にスタートするとのことだ。

ネットワークマネージドサービス(NEC Smart Connectivity)で提供するSDN関連サービス

SDNの新製品群を提供

 また、SDN関連の新製品を相次いで発表した。

 NECは、2011年に世界初のSDNの商用製品を提供。以後、SDNソリューションの体系化やOpenFlowに準拠した初の製品投入、WANへの対応、中堅・中小企業への対応、クラウド接続の最適化などに取り組んできた経緯がある。

 また、ネットワーク分野ではシスコシステムズなどと、セキュリティ分野ではパロアルトネットワークスなどのと戦略的パートナーシップを結んでいる。

NECのSDNに関するこれまでの取り組み

 今回は、従来の企業内LAN/WANやデータセンターネットワークに加えて、IoTやOTとの統合、各種クラウドプラットフォームとの接続を実現。今後は、ローカル5Gへの適用も図るという。

 「従来の情報システムが管理する企業ネットワークにとどまらず、お客さまの事業に直結するあらゆる業種のネットワークに広げる。工場の既存設備をそのまま活用できるOT連携や、ローカル5Gを活用した新たなサービスも創出できる」とした。

事業領域を拡大し、IoTやOTとの統合、クラウド接続、ローカル5Gへの適用などを図る

 具体的な製品としては、SDNコントローラでは、中小規模LAN向けの「Network Operation Engine」と、大規模LAN/データセンターネットワーク向けの「Network Operation Engine Overlay Network Extension」を発表した。価格(以下、すべて税別)はそれぞれ、50万円から、250万円から。

 スイッチでは、広帯域化を実現するレイヤ3(L3)スイッチ「QXS-S6000シリーズ」()、L2/L3スイッチの「QXS-S5000シリーズ」、ベーシックレイヤ2L2スイッチの「QXS-S1000シリーズ」をラインアップした。価格はそれぞれ、285万円から、76万8000円から、15万円から。

 さらに、無線LANアクセスコントローラ「QX-Wシリーズ」と、QXシリーズの統合管理ツール「QX-MC」も提供する。価格はそれぞれ、7万9000円から、15万8000円から。

 これらの製品は、海外での販売も視野に入れている。

新たなSDN製品群

具体的なユースケースを紹介

 会見では、SDNを活用した具体的なユースケースとして、4つの事例を紹介した。

 建設業においては、ローカル5GにSDNを適用。映像、データ、音声などの用途ごとにSDNで仮想化し、建機台数や作業員数の変化にあわせて、低遅延なWAN回線の帯域を柔軟に変更できるメリットを提供できるという。

 製造業においては、マネージドネットワークサービスとSDNにより、ネットワークの最適化を継続的に実現する。複数の拠点を接続し、トラフィックのしきい値越えを検知したら、自動的にSDNコントローラが経路を制御するほか、情報収集や状態分析によって持続的な改善提案を行うという。

建設業でのユースケース
製造業でのユースケース

 教育分野においては、新たなSDNコントローラにより、複数大学や複数拠点にまたがる仮想ネットワークを集中的に管理できるようになる。例えば、複数大学での共同研究時に、柔軟な仮想ネットワークを、迅速かつセキュアに構築。ロケーションフリーにより、どのキャンパスでも受講が可能になるといったメリットも提供可能になるとしている。

 さらに、災害対応にも効果が発揮できるという。台風などの被害が事前に想定される場合には、接続品質が劣化する要因をあらかじめ学習して、ネットワークトラフィックを予測した通信制御を行う。また、地震などの突発性の災害の場合には、災害発生後に自動的に制御を行い、通信インフラの影響を最小限とする対処を行うとのこと。

教育分野でのユースケース
災害対応でのユースケース

 なお、NECのSDN関連の事業規模は2018年度実績で約250億円。そのうち国内が約9割、海外が約1割となっている。