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富士通の2019年度第3四半期連結決算、営業利益は8割増 通期見通しは二度目の上方修正

 富士通株式会社は30日、2019年度第3四半期累計(2019年4~12月)の連結決算を発表した。

 売上収益は前年同期比2.1%減の2兆7520億円、営業利益は同82.6%増の1214億円、税引前利益は同47.3%増の1345億円、当期純利益は同94.1%増の999億円となった。

経営成績(9カ月累計)
経営成績(第3四半期のみ)

 富士通 執行役員常務/CFOの磯部武司氏は、「本業では、国内サービスとユビキタスソリューションが大きく伸長。実ビジネスでの売上収益は1415億円の増加となった。消費増税の影響は一巡したが、Windows 7のサポート終了の影響を含めて需要は引き続き強い。第3四半期も増収を継続しており、また、国内ビジネスの増加と採算性の改善により増益になっている。ソリューションSIでの開発効率化に加えて、国内のインフラサービスでも保守、運用、サポートの効率化を進めて改善。システムプロダクトやユビキタスでは、キーデバイスの価格低下によるコストダウン効果もあり、採算性の改善が進んだ」と総括した。

富士通 執行役員常務/CFOの磯部武司氏

 また国内受注については、「2018年度第1四半期から継続して前年同期実績を上回っている。第3四半期の受注状況は前年並みであるが、前年同期が高い伸び率であり、絶対数では高い水準を維持している。9カ月累計では前年同期比8%増という高いレベルである。業務改革や新規ビジネス創出に向けたシステム投資意欲は旺盛で、今後も高い水準を維持できる」としている。

 このほか、「第3四半期は、社内計画に対して営業利益で200億円好転しており、テクノロジーソリューションと社内消去で100億円、ユビキタスソリューションで100億円好転している。国内ビジネスの所要が想定を上回っていること、採算性の改善が計画よりも進んでいることが要因」と、好調の理由を説明した。

 一方で、ドル、ユーロ、ポンドが円高に推移した影響がマイナス440億円、デバイス事業の再編影響が1612億円あるとのこと。

 また、デバイス事業の再編影響と、個人向けPCの再編影響で売上収益に1621億円のマイナス。特殊事項として、前年度のPCの事業譲渡に関するアーンアウト条項による利益で51億円のプラス、三重工場の譲渡に関する利益で22億円のプラスとなったほか、電子部品事業再編費用でマイナス76億円、海外ビジネスに関する費用でマイナス25億円、年金制度変更などに関する利益とビジネスモデル変革費用で、前年度の反動減として、548億円のマイナスとなった。

 ビジネスモデル変革の効果についても説明。9カ月累計では、2850人を対象にしたリソースシフトによる固定費圧縮効果として150億円。国内工場再編などの効果は17億円。合計で167億円のビジネスモデル効果が出ており、「計画通りの進捗であり、2019年度では合計で221億円のビジネスモデル変革の効果を見込んでいる。また、欧州のビジネスモデル変革も計画通りに進めており、不採算国からの撤退、ドイツのアウクスブルク工場の閉鎖といった各種プログラムを、2020年度上期に完了するように進めている。ここでの効果はそれ以降に享受できる」とした。

デバイス事業の再編影響で1612億円のマイナス影響があった

セグメント別の業績

 第3四半期(2019年10月~12月)のセグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上収益が前年同期比0.9%減の7573億円、営業利益は同195.6%増の560億円。

事業別セグメント情報
テクノロジーソリューションの概況

 そのうちサービス事業の売上収益が同0.7%減の6566億円、営業利益が同21.3%増の454億円で、「為替を除くと、0.6%の増収になる」という。サービス事業のうち、ソリューションSIの売上収益が6.7%増の2867億円、インフラサービスの売上収益が5.7%減の3698億円となった。

 「ソリューションSIは、産業、流通分野が継続的に伸長したことに加えて、自治体、ヘルスケアを中心とした公共分野も好調。第3四半期は過去最高の売り上げを更新した。インフラサービスは、国内がアウトソーシングなどの月額サービスが堅調に推移したが、インフラ構築関連で前年の大口商談の反動があった」という。

 テクノロジーソリューションのもうひとつの事業であるシステムプラットフォーム事業の売上収益は前年同期比2.3%減の1007億円、営業利益は前年同期から290億円増の105億円と黒字転換。そのうち、システムプロダクトの売上収益が前年同期比2.0%減の585億円、ネットワークプロダクトの売上収益が同7.7%減の421億円となった。

 「システムプロダクトはメインフレームの商談が増加しており、ネットワークプロダクトでは第2四半期にプレサービス向け5G基地局を提供。だが第3四半期は、第4四半期の商用機納入開始を控えて低調になった」という。

テクノロジーソリューション(サービス事業)の概況
テクノロジーソリューション(システムプラットフォーム事業)の概況

 ユビキタスソリューションは、売上収益が前年同期比8.2%増の1332億円、営業利益は前年同期から266億円改善し、80億円の黒字となった。

 「PCは、消費増税の影響による上期への前倒しにより、第3四半期は売り上げが低調になると見込んでいたが、Windows 7のサポート終了に対応した買い換え需要の継続もあり、第3四半期も伸長した。また、メモリなどのキーデバイスの価格低下による採算性の好転もプラスに影響している。PCは販売単価が下落すると考えていたが、更新需要が強く、前年の価格水準を維持できている」という。

 デバイスソリューションは、売上収益は前年同期比44.0%減の745億円、営業利益は同78.6%減の5億円。そのうち、LSIの売上収益は同95.9%減の26億円、電子部品の売上収益は同4.7%増の718億円となった。

ユビキタスソリューションの概況
デバイスソリューションの概況

通期業績見通しを再度上方修正

 一方、同社では、2019年度(2019年4月~2020年3月)の通期業績見通しを上方修正した。2019年10月の修正に続いて2回目の上方修正となる。

 売上収益は前回予想より500億円増となる前年比2.6%減の3兆8500億円、営業利益は同400億円増となる前年比53.6%増の2000億円、当期純利益は同350億円増となる前年比53.0%増の1600億円とした。

 この見通しを達成した場合は営業利益が2000億円を突破するが、これはリーマンショック前の2007年度以来。営業利益率が5%を突破するのは1995年度以来になる。

 「国内ビジネス全般で、所要の増加と採算性改善を織り込んだほか、全社共通の先行投資の見直しを行った。通期業績は、当初の想定よりも堅調であり、中期経営計画の初年度としては出足がいい。改善が見られ始めており、さらなる成長につなげたい。だが営業利益率は5.2%であり、われわれが目指している10%までは距離感がある」などとした。

業績見通し
セグメント別の業績見通し

 セグメント別売上収益では、テクノロジーソリューションが100億円増の3兆1900億円。そのうち、サービスが100億円増の2兆6800億円、システムプラットフォームは据え置き5100億円。ユビキタスソリューションが400億円増の5400億円とした。

 セグメント別営業利益は、テクノロジーソリューションが100億円増(本業で150億円増、ビジネスモデル改革費用で50億円減)の2660億円。そのうち、サービスが50億円増(本業で100億円増、ビジネスモデル改革費用で50億円減)の2070億円、システムプラットフォームが50億円増の590億円。ユビキタスソリューションが150億円増の250億円、デバイスソリューションが20億円減の20億円の赤字に修正した。

 「ソリューションSIは、第3四半期までの受注、売り上げが好調な状況にあったことから、売り上げを見直したほか、採算性改善を織り込んだ。だが、インフラサービスは海外において、為替水準が計画より円高に推移して減額。システムプロダクトはメインフレームの売り上げ増、キーデバイスのコストダウン効果とプロダクトミックスの好転を織り込んだ」とする。

 また、「キーデバイスのコストダウンは、第3四半期で下げ止まり、その後は緩やかに上昇すると想定していたが、第3四半期でキーデバイスの価格はもう一段下がり、価格が上昇する時期はもう少し後ろにずれると見た。さらに、ユビキタスソリューションは、PC市場のデマンドが強く、通期全体の売り上げを見直した。前回の予想では、第3四半期から売り上げの勢いが鈍化し、第4四半期は大きく減収になると予測していたが、需要が想定よりも強く、第3四半期は前年実績を大きく上回り、さらに第4四半期も減収幅を見直すことにした」と語った。

 このほか、「現在、中期レンジでのキャピタルアロケーションの方針について整理をしている。成長投資、株主還元、事業支える強固な財務基盤という優先順位は変わらないが、2019年度末をめどに規模感などを知らせたい。事業の成長と収益性の向上、キャッシュ創出力の強化に加えて、資本効率の改善も重要なKPIとして改善に取り組む」としている。

 なお新型コロナウイルスの影響については、「中国・湖北省には拠点がないが、渡航禁止を指示し、中国への不要不急な出張は控えるようにしている。中国の拠点や関係会社には、中国政府の動きに対応して、テレワークを指示するといったこともやっている。日本のなかを含めて広がりが見極めてられていない。状況を注視しながら対応を進めていく」と述べた。

外部の人材を積極登用

 一方で、外部人材の登用についても触れた。

 DX新会社である「Ridgelinez(リッジラインズ)」の社長には、PwCコンサルティングの副代表執行役シニアパートナーの今井俊哉氏が就任。富士通のCIO兼CDXO補佐、執行役員常務にSAPジャパン社長の福田譲氏が就任。富士通のCMO、理事には、日本マイクロソフト 業務執行役員パートナー事業本部パートナーマーケティング本部長の山本多絵子氏が就任することが明らかになった。

 「富士通の成長に向けた人材の獲得であり、優秀な外部の人材についても獲得していくことになる」などと述べた。

 なお、DX新会社の「Ridgelinez」については、「規模や体制については、2020年3月までに、別途説明を行う」(富士通の山守勇執行役員常務)とした。