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富士通の2019年第1四半期決算は減収減益、本業好調もデバイス事業再編や為替が影響

 富士通株式会社は25日、2019年度第1四半期(2019年4~6月)の連結決算を発表した。売上収益は前年同期比3.3%減の8387億円、営業利益は同95.7%減の33億円、税引前利益は同93.5%減の62億円、当期純利益は同90.2%減の70億円となった。

2019年度第1四半期(2019年4~6月)の連結決算業績

 富士通 執行役員常務/CFOの磯部武司氏は、「第1四半期に本業ベースで黒字化したのは、2014年度以来のことになった」とするが、一方で「事業再編と為替が影響している。売上収益においては、実ビジネスでは国内サービスを中心に約300億円の増収。だが、為替ではユーロおよびポンドが円高に推移して、80億円のマイナス影響が出たほか、デバイス事業の再編を中心に約500億円のマイナス影響が出た」と話す。

 また、「営業利益では、国内サービスにおいて、SIを中心にした増収影響があったほか、サービス、システムプロダクトでの採算性の改善、営業費用の効率化などで約300億円の増益効果があった」とした。

富士通 執行役員常務/CFOの磯部武司氏

 一方で営業利益では、前年度に退職給付制度の変更に関する利益や、PCなどの事業譲渡益があった反動で、約1035億円のマイナス影響。加えて、電子部品事業の国内工場再編で約60億円のマイナス影響があったという。

 このほかリソースシフトの影響が約50億円あり、そのうち、テクノロジーソリューション分野が約36億円を占めたと説明している。

セグメント別の業績

セグメント別業績

 セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上収益が前年同期並の6646億円、営業利益は前年同期比542.9%増の261億円。そのうちサービス事業の売上収益が同1.3%増の5818億円、営業利益が同126.4%増の251億円。サービス事業のうち、ソリューションSIの売上収益が同9.7%増の2511億円、インフラサービスの売上収益が同4.3%減の3306億円となった。

 「システム投資に対する意欲は高い。ソリューションSIでは、自治体やヘルスケアなどの公共分野に加えて、産業、流通分野も好調を維持。これらの分野では、2017年度以降、受注、売り上げともにすべての四半期で前年を上回っている。インフラサービスでは、国内アウトソーシングを中心に堅調に推移したが、海外は為替の影響もあり、欧州を中心に減収となった。また、オフショア開発の進展などにより採算性の改善が進み、海外の不採算損失を抑制、営業費用の効率化により改善した。第1四半期は不採算案件がほとんど出なかった」と振り返った。

テクノロジーソリューションの概況
テクノロジーソリューション(サービス)の概況

 また、システムプラットフォーム事業の売上収益は前年同期比7.7%減の828億円、営業利益は前年から80億円増となり、10億円の黒字化。そのうち、システムプロダクトの売上収益が前年同期比4.9%減の492億円、ネットワークプロダクトの売上収益が同11.5%減の336億円となった。

 「IAサーバーが、為替の影響に加えて、前年の公共向け大型商談の反動減があった。ネットワーク機器は5Gを控えて投資抑制が継続しているが、第2四半期からプレサービス用機器の納入が始まり、これをきっかけに事業を拡張させたい」と述べた。

テクノロジーソリューション(システムプラットフォーム)の概況

 ユビキタスソリューションは、売上収益が前年同期比9.9%増の1267億円、営業利益は前年同期から43億円改善し、45億円の黒字。「軽量ノートPCに対する引き合いが強く、国内、海外ともに、Windows 7のサポート期限終了に対応した買い換え需要が強く増収となった。また、増収効果に加えて、メモリなどのキーデバイスの価格が低下したことで採算性が好転した」という。

 デバイスソリューションは、売上収益は前年同期比35.6%減の846億円、営業利益は84億円悪化し、77億円の赤字となった。そのうち、LSIの売上収益は70.8%減の179億円、電子部品の売上収益は4.9%減の666億円となった。

 「事業再編の影響で売上収益にはマイナス440億円の影響。半導体販売会社、電子部品製造会社が2018年度第4四半期から連結対象外となったことが影響。これを除くと、電子部品を中心に若干の減収となる。また、プリント基板を中心とした国内工場の再編費用の計上が減益につながった」とした。

ユビキタスソリューションの概況
デバイスソリューションの概況

 また磯部CFOは、社内計画に対する進ちょく状況についても説明。「2019年度第1四半期は、連結合計では社内計画を若干上回った。好転の中心はテクノロジーソリューションである。サービスとシステムプロダクトが計画から好転している。国内サービスは、前年下期からの好調が継続。加えて、採算性の改善もあった。それ以外のセグメントはおよそ計画通りである。ユビキタスはPCの売り上げ増加により、若干好転。Windows7対応商談が下期より前倒されている。デバイスは電子デバイスの市況低迷により、若干の未達になっている」とした。

2019年度の通期見通しは据え置き

 なお、2019年度(2019年4月~2020年3月)の通期業績見通しは据え置き、売上収益は前年比5.1%減の3兆7500億円、営業利益は同0.2%減の1300億円、当期純利益は同0.4%減の1050億円とした。セグメント別見通しにも変更はない。

2019年度(2019年4月~2020年3月)の通期業績見通し

 2022年度を目標にしている、テクノロジーソリューションでの営業利益率10%については、「逆算すれば、現在、1400~1500億円の営業利益の倍増が目標になる。当面のメインエンジンは国内サービス。そして、ネットワークと海外事業がブースターエンジンになるだろう。ネットワークは前年度には赤字だったが、5Gの商談やエリクソンとの提携などによって黒字化を見込む。また、海外事業は厳しい状況だが、来年度上期までに構造改革を行うことで、正常な営業利益率が確保できると考えている。さらに、先行投資の絞り込みや、次世代スーパーコンピュータの開発投資のピークアウト、AIやクラウドが採算ベースに乗ってくることなども貢献することになる。一方でDXに向けて、IoTに対する投資は引き続き行っていく」とした。

 欧州の事業再編については、「EMIAでは約40カ国に展開しているが、そのうち半分を閉める考えである。だが、まだ閉めたものはない。走っているところであり、進ちょくは計画通りであるとの認識だ」と説明した。

 さらに磯部CFOは、「2019年度第1四半期は、本業ベースで見ると、2018年度後半からの好調を継続し、総じて順調なすべり出しとなっている。特に国内は、主力のサービスビジネスを中心に、引き続き堅調に推移した。もう一段の成長に向けて、デリバリーの変革、商品力の強化などによる質を変える取り組みを徹底して進める」とする。

 一方で、「海外では形を変える取り組みを進めているところである。会計上ではおおよその手当てが終わったが、現場では拠点の整理や間接部門の効率化などに取り組んでいる。こうした構造改革を徹底して実行しているところである。年初に打ち出した計画はボトムラインと考えている。下期はまだ不透明なところもあるが、国内、海外ともに成長につなげる取り組みを進め、業績の目標数字についても、確実に積み上げていけるように取り組む」と述べた。