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富士通、2019年度上期決算は減収減益も本業は全セグメントで増収 通期見通しを上方修正

 富士通株式会社は29日、2019年度上期(2019年4~9月)の連結決算を発表した。それによると、売上収益は前年同期比0.3%減の1兆8287億円、営業利益は同25.4%減の710億円、税引前利益は同31.1%減の808億円、当期純利益は同21.5%減の636億円となった。

2019年度上期の連結業績

 上期は国内サービスとユビキタスソリューションが大きく伸長したことで、実ビジネスでは1204億円の増収となったが、為替影響で264億円のマイナス。営業利益では、実ビジネスで807億円の増収となったという。

 また売上収益の再編影響では、2018年度第4四半期に実施したデバイス事業の再編影響でマイナス927億円、個人向けPCの再編影響でマイナス70億円、合計で997億円のマイナスがあった。

 このほか特殊事項としては、退職給付制度変更による利益および事業譲渡益の前年度の反動として、営業利益に対してマイナス1006億円の影響があった。さらに、電子部品事業の国内工場の再編に関する費用でマイナス60億円、欧州の構造改革における人員対策費用の負担減少では30億円の増加がそれぞれあったとのこと。

経営成績(第2四半期:前年同期比)
経営成績(上期)

 富士通 執行役員常務/CFOの磯部武司氏は、「本業は大きく増加し、本業はすべてのセグメントで増収となった。営業利益も本業では、デバイスソリューションのマイナス以外は増益になった。だが、前年の特殊事項の影響が大きく、全体では減益である」としながらも、「国内の売り上げが昨年下期からの好調を継続し、国内サービスのほか、PCによるユビキタスソリューションを中心に大幅に増加した」とする。

富士通 執行役員常務/CFOの磯部武司氏

 また、「国内売り上げは、前年同期比14%増の1兆226億円となっており、そのうちテクノロジーソリューションの国内売り上げは10%増、ユビキタスソリューションは34%の増収となった。ユビキタスソリューションは、Windows 7のサポート期限終了に対応した買い換え需要が強いほか、キーデバイスの供給不足問題が解消がプラスに働いた。さらに、採算性の改善に向けて、ソリューションSIでの開発効率化や、国内外での不採算の抑制なども貢献している」と現状を説明した。

 加えて、「上期の国内受注は、富士通単独で前年同期比11%増となり、国内は全業種で前年実績を上回った。10%以上の伸長率となっている業種も多い。既存資産に対する機能の拡張、効率的運用の実現を目的としたモダナイゼーションに加えて、働き方改革に代表される業務改革に対する取り組みが進んでいる」と述べ、好調さを強調している。

 業種別の動向では、産業分野においては、生産基盤の強化や自動化、デジタル化をキーワードにした基幹系の更新需要が高く、「2025年の崖や東京オリンピックを意識した需要もある」としたほか、流通ではインバウンドや東京オリンピックを契機にした内需拡大に加えて、DXを見据えた基幹系システムの再構築に引き合いがあるという。

 金融分野については、「上期には、生保の営業店端末の大口特殊案件があったほか、業界全体でDXへの取り組み意欲が強い」と説明。社会基盤では、「富士通がやっている領域では引き合いが強いわけではないが、5Gの商談が順調にスタートを切った。まだ大きな商談にはなっていいが、バックボーン需要も伸びていくだろう」とした。また、官公庁向けでは、自治体、ヘルスケア、文教のすべてで好調だとする。

 一方、ビジネスモデル変革の効果については「計画通りの進捗」とし、「リソースシフトによる固定費圧縮効果は上期に100億円。国内工場再編の効果は10億円となっている。欧州のビジネスモデル変革については、不採算国からの撤退に加えて、独アウクスブルグ工場の閉鎖プログラムを計画通りに進めているところだ。これは2020年度上期の完了を予定しており、効果が出るのは2020年度下期からを想定している」と述べた。

 また、社内計画に対する進捗状況についても言及。「第2四半期の連結売上合計では、社内計画に対して、150億円の好転となっている。第1四半期の好転も加えると、上期で200億円ほど好転している。セグメント別では、テクノロジーソリューションが100億円の好転。そのうち、国内サービスが、ソリューションSIを中心にプラス50億円、システムプロダクトも50億円の好転となっている。また、ユビキタスソリューションでも100億円好転している」とした。

セグメント別の業績

事業別セグメント情報(上期)

 セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上収益が前年同期比3.2%増の1兆4546億円、営業利益は同101.6%増の486億円。

 そのうち、サービス事業の売上収益が前年同期比3.8%増の1兆2536億円、営業利益が同54.7%増の724億円。サービス事業のうち、ソリューションSIの売上収益が同14.8%増の5675億円、インフラサービスの売上収益が同3.8%減の6860億円となった。

 「サービス事業は過去最高の売り上げを更新した。ソリューションSIでは、産業、流通分野が好調で継続的な成長を支え、自治体、ヘルスケア分野も伸長。公共分野では、前年と同規模の大型商談を維持している。インフラサービスでは、国内がアウトソーシングが堅調に推移したが、海外は為替の影響で欧州を中心に減収になった。一方で営業利益では、国内ソリューションSIの増収効果と採算性向上が進み増益となったほか、海外ではオフショア活用による開発効率化に加え、アシュアランス活動の徹底により不採算を低い水準に抑えることができた」とした。

テクノロジーソリューション
テクノロジーソリューション(サービス)

 テクノロジーソリューションのもうひとつの事業であるシステムプラットフォーム事業の売上収益は同0.2%減の2010億円、営業利益は230億円増の241億円。そのうち、システムプロダクトの売上収益が1.6%減の1200億円、ネットワークプロダクトの売上収益が1.8%増の810億円となった。

 「システムプラットフォームは為替の影響を除くと、ほぼ前年並みの売り上げとなる。システムプロダクトはIAサーバーが為替の影響に加えて、前年の公共向け大口商談の反動減があって減収となったが、メインフレームは大きく増加した。ネットワークプロダクトは、5Gプレサービスに向けた基地局の納入開始に加えて、5G本格化に向けた光伝送路の増強商談が増加している。第2四半期の基地局納入をスタートに、今後本格化していく5G商談を拡大させたい」としたほか、「営業利益は、メインフレームの大口案件増加とプロダクトミックスの好転、キーデバイスの価格低下によるコストダウン効果で採算性改善が進んだ。さらに、ネットワークの増収効果、営業費用の効率化により増益になった」という。

テクノロジーソリューション(システムプラットフォーム)

 ユビキタスソリューションは、売上収益が前年同期比19.2%増の2923億円、営業利益は前年から218億円改善し、197億円の黒字となった。再編と為替影響を除くと24.2%増となるという。

 デバイスソリューションは、売上収益は前年同期比35.0%減の1717億円、営業利益は前年から89億円悪化し、66億円の赤字となった。

 そのうち、LSIの売上収益は前年同期比71.9%減の352億円、電子部品の売上収益は同1.8%減の1364億円。半導体販売会社および電子部品製造会社が前年度第4四半期から連結対象外となった事業再編影響で、売り上げでマイナス930億円となったが、これを除くと前年同期並みの水準だという。なお、半導体生産の三重工場は、10月1非に譲渡を完了し、下期から連結対象外になる。

ユビキタスソリューション
デバイスソリューション

通期見通しを上方修正

 なお同社では、2019年度(2019年4月~2020年3月)の通期業績見通しを上方修正した。売上収益は当初見込みから500億円増となる前年比3.9%減の3兆8000億円、営業利益は当初見込みから300億円増となる同22.9%増の1600億円、当期純利益は当初見込みから200億円増となる同19.5%増の1250億円とし、減益見通しから増益見通しへと修正している。

業績見通し

 セグメント別売上収益では、テクノロジーソリューションが当初見通しより300億円増の3兆1800億円。そのうち、サービスが同200億円増の2兆6700億円、システムプラットフォームが同100億円増の5100億円。ユビキタスソリューションが同200億円増の5000億円とした。

 またセグメント別営業利益は、テクノロジーソリューションが当初見通しより200億円増の2560億円。そのうち、サービスが同100億円増の2020億円、システムプラットフォームが同100億円増の540億円。ユビキタスソリューションが同100億円増の100億円に修正した。

 「テクノロジーソリューションの国内サービス、システムプロダクト、ユビキタスソリューションでの所要の増加と、採算性の改善を織り込んだ。上期におけるソリューションSIやシステムプロダクトなどの受注、売り上げが好調に推移し、さらに下期もこの状況が続くと判断した。だが、インフラサービスは、上期の為替水準が円高に推移したことで減額している」という。

 また、「ユビキタスソリューションは、上期にWindows 7買い換え商談の立ち上がりが想定より早い。小口案件では消費増税の影響とみられる前倒しもみられた。だが、下期は買い換え商談の収束、キーデバイスの価格低下に対応した販売単価の低下が進むことを考慮している。上期は国内ビジネスを中心に堅調に推移した。下期も計画達成に向けて油断することなく、着実にがんばっていく」と述べた。

セグメント別の業績見通し