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富士通の2018年度第3四半期連結決算は減収減益、PC・携帯電話事業再編の影響大きく
2019年2月1日 00:00
富士通株式会社は1月31日、2018年度第3四半期累計(2018年4月~12月)の連結業績を発表した。
売上収益は前年同期比3.9%減の2兆8118億円、営業利益は同72.7%増の665億円、税引前利益は同26.2%増の913億円、当期純利益は同7.2%減の514億円となった。
本業では、SIビジネスによる国内サービスを中心に伸長し100億円の増収となったが、個人向けPCおよび携帯端末事業の再編影響で1250億円のマイナス影響があった。
また営業利益は、本業ではサービスやシステムプロダクトが、いずれも国内ビジネスが増加し90億円の増益効果があったほか、退職給付制度変更影響で900億円のプラス効果がったという。一方、ビジネスモデル変革費用で436億円のマイナス影響、事業譲渡に関連して277億円のマイナス影響があったとのこと。そのほか、前年同期の株式持ち合い見直しによる売却益の反動や、PC事業譲渡に伴う株式再評価などの金融損益では、90億円の減益があった。
第3四半期におけるビジネスモデル変革費用では、欧州プロダクトビジネスの再編で390億円を計上。富士通の代表取締役副社長 社長補佐 CFOの塚野英博氏は、「そのうち、ドイツのアウグスブルグ工場の閉鎖関連で360億円を計上している。欧州と日本に開発と製造が分散している体制を見直し、意思決定のスピードアップと効率化を図り、プロダクトビジネスの体質強化を進める」とする。また、「アウグスブルグ工場の人員に絡む費用は引き当てたが、まだ交渉の過程であるため多少ぶれることがある。シャットダウンまでにはまだ時間がかかり、今後費用が積み上がる可能性がある。おおかたは終わったが、尾ひれは残っている」などと表現している。
これ以外では、製造体制のフォーメーションの見直しで45億円を計上。「富士通化成および富士通におけるPCや携帯電話の周辺機器、モールドを供給している生産拠点の再編を進めた。製造機能にこだわらず、データセンター機能を生かした転換も行う」という。
なお第3四半期(2018年10~12月)のみの業績は、売上収益が前年同期比2.6%減の9773億円、営業利益は前年から392億円悪化し、287億円の赤字。税引前利益は同389億円悪化し258億円の赤字。当期純利益は同416億円悪化し、296億円の赤字となった。
「PCおよび携帯電話の再編影響を除けば、ネットワークおよびLSIの所要減少をカバーして増収になる。また営業利益も、本業でみれば90億円の増益になる」としたほか、「10月に打ち出した社内計画に対してはほぼ計画通りであるが、セグメント別では強弱が出ている。海外サービスとデバイスがわずかに下振れし、国内向けサービスが上振れた」という。
第3四半期累計のセグメント別業績
第3四半期累計のセグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上収益が前年同期比1.1%増の2兆1734億円、営業利益は同10.2%減の668億円。そのうちサービス事業の売上収益が同1.7%増の1兆8688億円、営業利益が同16.3%増の843億円。システムプラットフォームの売上収益は同2.9%減の3045億円、営業利益は前年から193億円悪化し、174億円の赤字となった。
「第3四半期は国内サービスが大きく伸長したが、欧州でのプロダクトビジネスの再編などに関連して、ビジネスモデル変革費用を244億円計上したことで減益となった。だが、本業では140億円の増益になっている」という。
また、「ソリューションSIでは公共分野で伸長したのに加えて、製造、流通分野も好調を維持し、さらなる上積みを実現した。公共分野では大規模プロジェクトを計画通りに獲得したことに加え、中小規模の商談を確実に積み上げた。インフラサービスから移管したプロジェクトの影響を除いた第3四半期の売上高は、上期に続いて過去最高を更新した。通期でも過去最高の更新を期待している。だが、営業利益では、サービスビジネス拡大を見込んだ計画からは下振れの厳しい結果である」と総括した。
そのうちのインフラサービスは、国内は堅調に推移したが、欧州や北米が低調で、全体では前年並み。またシステムプロダクトは、IAサーバーが国内、海外ともに堅調に推移し、ソフトウェアも増加。だがネットワークプロダクトにおいて、携帯電話の基地局などが低調に推移した。
ユビキタスソリューションは、売上収益が前年同期比24.3%減の3684億円、営業利益は前年から323億円悪化し、206億円の赤字。「個人向けPCおよび携帯電話が連結対象から外れたことでの事業再編の影響がマイナス370億円。これを除くと、第3四半期には、約4.5%の減収。欧州で法人向けPCが減少した」という。
デバイスソリューションは、売上収益は前年同期比5.7%減の3972億円、営業利益は同57.4%減の49億円となった。スマートフォン向けLSIの所要が低調であり、電子部品では半導体製造装置およびPC向けも低調に推移した。
なお第3四半期においては、営業利益の「その他/消去または全社」において、75億円悪化の317億円の赤字を計上。「ここにはAI関連の投資を集約した。昨年度までは各事業部門が自分たちの部門のためにAIを考え、コストをかけていた。だが、ロスが出たり、全体をコントロールできないという問題があり、本社で全社投資として集約した。AIは中枢の技術として投資をしていく」という。
通期業績見通は据え置き
2018年度(2018年4月~2019年3月)の通期業績見通は据え置き、売上収益は前年比4.8%減の3兆9000億円、営業利益は同23.3%減の1400億円、当期純利益は同35.0%減の1100億円とした。
「年初から計画していた第4四半期に発生する大型商談は、計画通りに獲得できている。これらを含めて、国内ビジネスの受注残高はサービス、プロダクトともに積み上がっている。獲得済み商談を確実に売り上げにつなげるとともに、さらなる新規商談の獲得、効率化推進による営業費用の抑制を進め、計画達成に向けて取り組んでいく」とした。
またビジネスモデル変革については、「プログラムごとに詳細を詰めている段階であるが、今年度中に大きく進捗させることを考えている。決定したものから説明をしていく」と述べた。
なお、連結子会社である富士通エフ・アイ・ピーのデータセンターサービス事業を富士通に吸収することを発表した。今後、グループ会社の吸収、統合を図るのではないかとの見方も出ているが、塚野副社長はそれに対して、「グループ会社の数が多ければ、その分コストもかかる。できるだけ集約し、余ったリソースを必要となるところにシフトしたい。売り上げ、収益、受注を最大化していくのが狙いである。結果的に人が減少するかもしれないが、減らすだけが目的ではなく、効率化を考えている」と述べた。
富士通が取り組んでいる5000人のリソースシフトについては、「対象にしている人への説明が終わり、シフト先とのマッチングやフィッティングを始めているところである。働いてほしいというのが会社の希望だが、マッチングしなかった一部の人に対しては、希望退職の募集ということもあるだろう。全体的には計画した通りに進んでいる」とした。
また「当初の計画では、2015年からの2年間で、形を変え、質を変え、3年目、4年目に効果を刈り取りたいとしてきたが、それからは相当遅れている。有効であったこと、有効ではなかったことを分別して、取り組みを加速していく必要がある。その点では、時間がないという感覚でいる」と話している。