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Dropbox Japan、新ビジョン「Dropbox Space」でスマートワークスペースの実現へ

 Dropbox Japan株式会社は5日、スマートワークスペースを実現する同社の新ビジョン「Dropbox Space」に関する説明会を開催した。

 Dropboxによると、スマートワークスペースとは、チームで扱うすべてのコンテンツと使い慣れたツールを1カ所に集約したデジタル環境のこと。Dropbox Japan 代表取締役社長の五十嵐光喜氏は、「現代の働き方はカオスだ」として、そのカオスをもたらしている課題を指摘。こうした課題が、いかにスマートワークスペースによって解決されるかを説明した。

Dropbox Japan 代表取締役社長 五十嵐光喜氏

 五十嵐氏が指摘する課題は、皮肉なことにテクノロジーの多様化によって引き起こされているという。「テクノロジーが多様化した結果、コンテンツが分散されてしまった。また、便利な連絡手段が増え、作業が中断されてしまうようになった。さらには連携も困難になってきている」と五十嵐氏。

 同氏によると、現代のナレッジワーカーは、平均9.39個のアプリを使用し、常に5~9個の業務関連アプリを同時に開いているという。また、中断されずに作業を継続できる時間はほんの11分で、中断前の集中状態に戻るには25分を必要としている。さらに、過去20年間で共同作業時間が50%増加していることなどから、連携が困難になっているというのだ。

 いっぽう、五十嵐氏は自身が社会人として働き始めた約30年前を振り返り、「当時私が働いていた職場では、毎朝グループごとに今日達成するべきことなどを確認し、自分のタスクを把握した上で仕事に取り掛かっていた。それが今では、朝一番にやることがメールの確認という人も多いはず」と話す。

 つまり、昔はタスクファーストだったのが、今ではコミュニケーションファーストになっており、「今日達成すべきことよりも、まずはコミュニケーションによって発生した目の前の作業をこなしている中で、情報が散乱し、時系列の中に埋もれてしまっている」と五十嵐氏は言う。

 「何を達成するべきか考え、そのために議論するというタスクファーストの環境で、80年代の日本は輝いていた。この環境があらためて求められているのではないか。その環境を、スマートワークスペースで提供できる」と五十嵐氏は述べ、Dropbox Spaceというコンセプトに基づく新UIがスマートワークスペースを実現するとした。

テクノロジーの多様化による課題
「Dropboxでスマートワークスペースが実現する」と五十嵐氏

 新UIは9月下旬に公開され、Dropboxのフォルダ内が共同作業のプラットフォームとして使えるようになっている。Dropbox Japan ソリューション アーキテクトの保坂大輔氏は、「通常フォルダ内にはファイルしか入っていないものだが、必要なコンテンツがファイル形式になっているとは限らない。例えば、よく参照するウェブサイトの保存場所はブラウザのブックマークだし、Googleドキュメントなどのクラウドサービスの保存場所はGoogleだ。それをDropboxのフォルダ内ですべて連携できるようにした」と説明する。

Dropbox Japan ソリューション アーキテクト 保坂大輔氏

 新UIは3分割されており、左側にはフォルダ名として仕事のタスクが表示されている。そのフォルダを開くと、中央にタスクの内容がまず説明されているほか、タスクのTo Doリストも書かれており、やり終えたタスクには打ち消し線が引かれた状態だ。右側にはそのタスクに携わるメンバーが並び、画面上で直接メンバーと連絡を取ることも可能だ。

 フォルダ内にあるGoogleドキュメントなどのファイルは、GoogleへのリンクではなくDropbox内で作業できるようコンテンツ連携しているという。Googleのほかにも、Microsoft OfficeやZoom、Slackなどと連携している。

新ビジョン「Dropbox Space」に基づく新たなUI。画像は、同社のオフィス移転プロジェクトのフォルダ内

 検索にはAIを活用し、ファイル名を覚えていなくてもキーワードで検索すると候補が提示される。また、画像検索でも例えば「会議」というキーワードで画像を検索すると、ファイル名に「会議」という文字が入っていなくても、画像内容から会議風景の画像を引き出すことが可能だ。

 さらには、ユーザーのアクティビティに基づき、プロジェクトメンバー間で活発な議論が行われているファイルを一度も見ていない場合に閲覧を促したり、カレンダーと連携して同じ会議への参加者がよく見ているファイルを教えてくれたりといった機能も備わっている。

 同日には、Dropboxの新たな機能としてファイル転送サービス「Dropbox Transfer」ベータ版も公開した。これまでにもDropboxでは、ファイルを転送することなくリンクの共有でファイルを渡すことができたが、単純にファイルを転送したいというニーズに応えたかたちだ。最大100GBまでのファイル送信が可能で、受信者はDropboxのアカウントを持っている必要はない。

物理オフィスもスマートに

 なお、クラウド上のDropboxのみならず、物理的なスマートワークスペースの実現に向け、同社は9月にオフィスを移転している。2014年に日本オフィスをオープンして以来、今回の移転は4度目だ。五十嵐氏は「成長に応じて広いスペースを用意している」と述べ、同社の順調な成長ぶりをアピールした。

新オフィスの一部。WeWorkが運営するオフィスの1フロアを貸し切った
新オフィスではランチが提供される。「ランチタイムに集まることで、会話力を高め仕事での連携もしやすくなる」(五十嵐氏)