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Dell Technologies、「Dell Technologies Forum 2019 - Tokyo」で基調講演

デジタル組織への変革には4つトランスフォーメーションが重要に

 Dell Technologies(デル株式会社およびEMCジャパン株式会社)は、「REAL TRANSFORMATION」(真のデジタル変革)をテーマに「Dell Technologies Forum 2019 - Tokyo」を10月23日に開催した。

 基調講演では、Dell Technologies 会長兼CEOのマイケル・デル氏と、Dell Technologies Dell EMC最高技術責任者(CTO)のジョン・ローズ氏が登壇し、「イノベーションをデザインする」と題して、デジタル時代における企業の組織変革を同社がどう支援できるかを語った。また、ゲストスピーカーとして、東京電力ホールディングス株式会社 常務執行役の関知道氏と、株式会社三越伊勢丹 デジタル事業部取締役常務執行役員 デジタル事業部門長の浦田努氏を迎え、デジタル変革をどのように進めているのかを紹介した。

シンプルかつオープンで統合化されたインフラの提供を目指す

 Dell Technologies 会長兼CEOのマイケル・デル氏は、「近年のテクノロジーの進化は目覚ましいものがある。データがインテリジェントを持ち、5Gネットワークやコンピュータサイエンス、AI、マシンラーニング、ディープラーニング(深層学習)などにより、今まで想像もしなかったことが実現できるようになる。一方で、データがさまざまな場所に分散していることが大きな課題となっている。その中で当社は、データやアプリケーションを一元的に運用できるよう、クラウドからエッジまで、シンプルかつオープンで統合化されたインフラの提供を目指している」と述べ、直近の動きとして、KubernetesとVMware vSphereの統合、Pivotalの買収、およびCarbon Blackの買収を進めていることなどを説明した。

Dell Technologies 会長兼CEOのマイケル・デル氏

 「特にDell EMCでは、VMwareと一体となって、ハードウェアからソフトウェア、仮想マシン、コンテナまでを、一貫性のある一つのプラットフォームとして顧客のマルチクラウド環境に実現することが可能だ。クライアントについても、SecureworksやVMware Workspace ONEを組み込み、クラウド上からデバイスを保護・管理する『ユニファイドワークスペース』を提供している。さらに、これにクラウドベースのセキュリティであるCarbon Blackが加わることで、エンドポイントデバイスをより安全なものにすることができる」としている。

 また、「当社は、あらゆる製品のイノベーションを継続しており、ハイエンドストレージ『PowerMax』からミッドレンジストレージ『Unity XT』、データ保護プラットフォーム『PowerProtect』、ハイパーコンバージドインフラ『VxRail』、クライアント製品『XPS』『Latitude』などまで、強力で広範なソリューション製品群をそろえている。これらの製品群と充実したサービスによって顧客のニーズを満たし、顧客がどのような形でITを利用しようとも、その期待を超えることができる」と訴えた。

 続いて、Dell Technologies Dell EMC最高技術責任者(CTO)のジョン・ローズ氏が登壇。「現在、テクノロジーは急速に進化し続けているが、すべてに共通しているのはデータを活用しているということだ。これから迎える『データ時代』では、データ活用をコストと考えるのではなく、チャンスと考えることが重要になる。テクノロジーを駆使して今まで以上にデータを活用することで、経済性や生産性を向上できるだけでなく、交通や医療の進歩など、よりよい社会にもつながっていく」との考えを述べた。

Dell Technologies Dell EMC最高技術責任者(CTO)のジョン・ローズ氏

 そして、データ時代の中でデジタルビジネスを展開していくためには、すべての組織が、データを活用してマルチクラウドの世界でデジタル組織になる必要があると指摘。デジタル組織に向けたトランスフォーメーションとして、「ITトランスフォーメーション」、「ワークフォーストランスフォーメーション」、「セキュリティトランスフォーメーション」、「アプリケーショントランスフォーメーション」の4つを挙げた。

デジタル組織になるために必要な4つのトランスフォーメーション

 それぞれのトランスフォーメーションのポイントについてローズ氏は、「『ITトランスフォーメーション』は、データ時代の新しいエンジンを作るものだ。このためには、5Gネットワークを活用し、パブリッククラウド、プライベートクラウド、データセンター、エッジクラウドが一つになって統合的に動くマルチクラウドシステムを構築することが重要になる。当社では、これを支えるサーバー/ネットワーキング、ストレージ、コンバージドインフラ/ハイパーコンバージドインフラ、データ保護製品をそろえており、マルチクラウドシステムを通じて、エンドツーエンドのテレメトリー、仮想ネットワーク、経済性の可視化、Appエクスペリエンス、Appデリバリーを実現していく」と説明した。

 「『ワークフォーストランスフォーメーション』では、データ時代のユーザーを支援するために、より速いユーザー体験や統合化されたインテリジェントな管理の提供を目指す。1人1台のデバイスではなく、ユーザーがあたかもマルチクラウドのエコシステムの一部となるような仕組みが必要になる。当社では、これを支援するソリューションとして『ユニファイドワークスペース』を提供している」とした。

 「『セキュリティトランスフォーメーション』は、サイバーリスクを先取りし、セキュリティをさらにシンプル化することを目指すもの。現在、市場にはさまざまなサイバーリスクに対応する多種多様なセキュリティ製品が存在するが、これら全体をつなげるものがないのが実情だ。データ時代のセキュリティは、製品が独立して存在するのではなく、ソフトウェア定義型のセキュリティ機能として、コンピュートやアプリケーション、ストレージ、ネットワークと同じようにマルチクラウドシステムの中に組み込まれる必要がある」としている。

 「『アプリケーショントランスフォーメーション』は、データ時代においてインテリジェントを発揮するためのもの。データ時代のアプリケーションは、従来型のアプリに加え、クラウドネイティブアプリ、AIアプリ、モダンアプリ、ローコードアプリなど、さらに多様化していく。これに対応するためには、将来に向けた新しい技術力を身につけるとともに、開発したアプリをマルチクラウドのインフラ上で稼働し、運用することが必要だ」と述べた。

 最後にローズ氏は、「データ時代へのスタートポイントは、IT戦略をマルチクラウドの観点で作り、多様性のあるアプリケーションを1つのシステムとしてまとめて動かせるインフラを作っていくことが重要になる。これが、スマートシティやスマートファクトリー、スマートネットワークのプラットフォームになると考えている」と語った。

2社のユーザー企業が登壇

 基調講演にゲストスピーカーとして登壇した、三越伊勢丹 デジタル事業部取締役常務執行役員 デジタル事業部門長の浦田努氏は、同社が進めているデジタルトランスフォーメーションの取り組みについて紹介した。

 「三越伊勢丹では、『百貨店事業におけるデジタルトランスフォーメーション』と『新規のデジタルトランスフォーメーション事業』の2軸でデジタルトランスフォーメーションを推進している。百貨店事業におけるデジタルトランスフォーメーションでは、オンラインでもオフラインでも『最高の顧客体験』を提供することを目指し、『顧客の質向上』、『顧客接点の拡大』、『顧客体験のシームレス化』を図っていく。新規のデジタルトランスフォーメーション事業では、グループの強みにデジタルを加えた『新しい顧客体験』を提供することを目指す」と述べた。

三越伊勢丹 デジタル事業部取締役常務執行役員 デジタル事業部門長の浦田努氏

 Dell Technologiesとの取り組みについては、「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのITトランスフォーメーション施策を実施していく。具体的には、ハイパーコンバージドインフラによる基幹系システムの最新鋭化、マルチクラウド化、クラウド運用モデルの最適化の3つの取り組みをサポートしてもらい、コストパフォーマンスの高いインフラに刷新していく」と説明した。

 東京電力ホールディングス 常務執行役の関知道氏は、東京電力におけるデジタルトランスフォーメーションへの挑戦について紹介した。「東京電力グループでは、『挑戦するエナジー。』をブランドメッセージに掲げ、福島への責任とTEPCOの挑戦をミッションとしている。その中で、電力業務のITシステムとOTシステムをデジタルトランスフォーメーションすることで、IT領域における“稼ぐ力”の創造に挑戦し、生産性倍増と新ビジネスの創造を目指す。具体的な取り組み事例としては、Grid Data Bankを展開している。当社が扱っているさまざまなデータをデジタル基盤としてクラウド上に格納し、それをオープンイノベーションによりBtoBtoCで社外の顧客や政府、企業に提供していく」とした。

東京電力ホールディングス 常務執行役の関知道氏

 Dell Technologiesとの取り組みとしては、「2025年の崖を越えるために、Dell EMCのハイパーコンバージドインフラとVMwareのソフトウェアディファインドテクノロジーを積極的に採用することで、大幅なコスト削減と徹底的な運用自動化を実現した。そして、ここで削減したコストを、Pivotalやクラウドテクノロジーのリソースにシフトしつつある。システムの安定運用と機器コスト・運用コストの低減を両立させることが2025年の崖を越えるキーポイントになると考えている」と述べた。