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シスコ、クラウドネイティブなネットワーク管理製品「Cisco Meraki」を日本市場で新展開へ

 シスコシステムズ合同会社(シスコ)は18日、クラウドによるネットワーク管理を実現する「Cisco Meraki」製品群の日本市場展開における新施策について発表した。ダッシュボードの日本語化、セキュリティカメラなどポートフォリオの拡充、販売体制の強化などを図り、Merakiをより日本市場に根付かせるための事業展開を目指す。

 Merakiはもともと2008年にサンフランシスコで起業したベンチャーで、クラウドによるネットワークの一元管理を得意としていたが、2012年に米Ciscoにより買収、以来、Ciscoのいちブランドとして、無線LANアクセスポイント「Meraki MR」やギガビットアクセススイッチ「Meraki MS」といった製品群をカバーする。

 これらのネットワーク機器の情報は、基本的にすべてクラウド(Cisco Cloud)上で管理できる点がMerakiの最大の特徴となっている。また、Meraki MRはFacebook Wi-Fiにも対応しており、レストランやリテールなどが顧客サービスの一環として提供するネットワーク環境としての導入も進んでいる。

 今回発表された内容は以下の通り。

・ダッシュボードの日本語化:スイッチなどのMeraki製品や組織で管理するモバイル端末をWebベースの画面で一元管理するツール「Meraki System Manager」のダッシュボードを日本語化

・Merakiポートフォリオの拡充:従来の4つのラインアップ「Meraki MR(無線LANアクセスポイント)」「Meraki MS(スイッチ)」「Meraki MX(セキュリティアプライアンス)」「Meraki System Manager MDM(管理ツール)」に加え、新たにセキュリティカメラ「Meraki MV」を追加

・販売体制の強化:営業組織、日本語サポート対応チームの拡充、販売チャネルの拡大のほか、「See Try Buy」をコンセプトにした製品トライアルなどを用意

 このなかでも「もっとも重要で、かつ顧客からの要望が非常に多かったアップデートがダッシュボードの日本語化」とCisco Merakiチームのシニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャのトッド・ナイチンゲール(Todd Nightingale)氏は語る。

 「単にインターフェイスを日本語化しただけでなく、Merakiのもつパワーとシンプリシティを日本の顧客により細やかに、深く体感してもらうための重要なローカライゼーション。ようやく"日本語でMeraki"が実現したことにとてもエキサイトしている」(ナイチンゲール氏)。

Cisco Merakiの日本市場における今後の施策
Cisco Merakiチーム シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャのトッド・ナイチンゲール氏
「日本語でMeraki」の実現が最大のアップデートだとナイチンゲール氏
日本語化されたダッシュボード。Meraki製品やモバイル端末の管理がよりきめ細やかに行えるように

 また、新たにポートフォリオに加わったセキュリティカメラのMeraki MVは、128GBのフラッシュストレージを内蔵しており、約20日分の録画が可能。瞬時にビデオストリームの位置や大きさを変更したり、指定の条件にあったカメラを監視するなど、さまざまな操作がダッシュボード上から容易に行うことができる。また、過去に遡って特定の場所で起こった動作を検索する「モーション検索」機能も備えている。製品価格は1299ドルから、年間ライセンスは300ドルから。

新しくポートフォリオに加わったセキュリティカメラ「Meraki MV」は屋外用(左)と屋内用が用意されている
Meraki MVの撮影画像をダッシュボードから管理しているところ。過去の画像を遡って特定のポイントでのインシデント発生要因を突き止めることができる

国内市場のターゲットはレストランや多店舗、文教など

 Merakiはクラウドからネットワーク機器やモバイル端末を一元管理できることから、IT管理者を置けない店舗や支店、あるいは大学キャンパスなどの広大な環境に適したソリューションとしてCiscoポートフォリオの中で位置づけられている。

 シスコ 執行役員 エンタープライズネットワーク担当の眞﨑浩一氏は「日本市場においては、ホテル/レストラン/観光、リテール/小売/多店舗、文教での導入が多く、今後もこれらの分野での販売を強化していきたい」と語っており、すでにMerakiを導入済みの事例として玉川聖学院やDiamond Diningでの実績を紹介している。

・玉川聖学院:ワイヤレスLANの範囲拡大と生徒のデバイスによるBYOD導入のため効率的なモバイルデバイス管理が必要に。Merakiフルスタック構成で安定したネットワーク環境を構築し、System Manager MDMも導入してネットワークとデバイスを一括管理。ゲームやソーシャルに制限をかけるなど一定のルールのもとで先進的なIT教育を実現

・Diamond Dining:多数店舗の展開、外国人観光客誘致およびマーケティング施策としての無線LANサービスの充実をめざし、ワイヤレスLANをクラウドベースで構築、顧客向けにはFacebook Wi-Fiを提供。顧客の店舗滞在時間が長くなり、顧客単価がアップしたほか、Facebook Wi-Fiから得られた顧客属性データの活用が促進

国内でのCisco Meraki導入事例。多店舗展開や広大なキャンパスなどIT管理者を置けない環境での導入が拡がっている

 ナイチンゲール氏は「この2年、日本でもMerakiは本当に大きく成長したが、まだ日本のユーザーの多くはMerakiの良さを知らない。クラウドアダプションが日本でも増えている現在、Merakiの日本語化や販売チャネル拡大は非常に重要なアプローチだと思っている。Merakiによるクラウドネイティブでシンプルなネットワーク管理のすばらしさをより多くの日本のユーザに拡げたい」と語り、日本市場でのよりいっそうの普及に注力することを強調している。

 "Meraki"の語源をナイチンゲール氏に尋ねると「もとはギリシャ語で、情熱をもって仕事に臨む姿勢を表した言葉。ファウンダーがMITで在学中にふと見つけた言葉だけど、意味よりも"Meraki"という音のもつ、なんだかよくわからないけどカッコいい感じがよくて社名にした」という答えが返ってきた。

 数多くのCiscoポートフォリオの中でも、たしかに異色の位置づけであるMerakiだが、そのユニークさが日本市場でどう受け容れられるかが注目される。