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NEC、「神戸データセンター(二期棟)」「名古屋データセンター」を開設

安全性・利便性の両立と高負荷・大規模のハウジング需要に対応

「NEC神戸データセンター」二期棟の外観

 日本電気株式会社(以下、NEC)は3月28日、「NEC神戸データセンター(二期棟)」と「NEC名古屋データセンター」を開設し、4月1日からサービス提供を開始した。

 NEC神戸データセンターは、NECのクラウド基盤サービス「NEC Cloud IaaS」の提供などクラウド用途と、ハウジング用途のハイブリッド環境を備えた、NECの西日本エリアにおけるフラッグシップデータセンター。

 NEC名古屋データセンターは、主に東海地区の顧客のITシステムを受け入れる、名古屋駅から15分以内の立地にある都市型データセンター。NECのSE・保守拠点とも至近距離にあり、地域密着型のサポートを可能とする。

新データセンターの位置付け

神戸データセンターはハイブリッド対応の旗艦DC、需要を受け前倒しで二期棟を開設

 神戸データセンターの二期棟は、ラック収容規模は一期棟と同様の約1500ラック。地震や水害などの災害や停電などへの耐性を備えるとともに、日本データセンター協会(JDCC)が制定したデーセンターのファシリティ基準で最高レベルとなるTier4に完全対応のエリアを新たに用意し、安全・安心を強化。電気の総容量(IT負荷)は一期棟の4950kWから二期棟では8950kWと約2倍になり、高負荷サーバー対応フロアも用意。ラック供給電力は1ラック平均8kVA、最大12kVAで、高負荷フロアでは平均16kVAに対応する。

 床荷重は標準1.2t/㎡で、最大2.2t/㎡エリアも用意。トラックヤードを正・副・予備の3カ所用意し、天井高も高負荷フロアでは3800mmとするなど、高密度・大型ラックの持ち込みや、個別のセキュリティ・運用要件に柔軟に対応し、需要が増すクラウド提供事業者のサービス拠点としての活用にも対応した。

Tier4完全対応エリアを用意し、大規模・高負荷サーバーにも対応

 省エネルギーに関しては、発熱量の多い高負荷マシンにも対応した空調設計により、高負荷に対応するとともに、PUE 1.18を実現。二期棟では新たに中温冷水(20℃)空調システムを導入し、一期棟の15℃から温度を上げることで、外気によるフリークーリング使用期間を長くすることで、電力消費量の削減を図った。

二期棟では中温冷水(20℃)空調システムを導入
サーバー室の吸排気温度を測定し、自動的に風量をコントロールすることで省電力化を実現
サーバー室

 セキュリティ面では、入館時に必要となる本人確認やカード発行などの人手による受付業務を、カード発行機により自動化。カード発行の際は、カード発行機に内蔵されたカメラで顔画像を登録し、本人確認時にはNECの顔認証技術を活用することで、なりすましを防止する。一度登録した顔画像はシステムで管理され、サーバー室への入室や、以降の入館にも利用でき、これらの仕組みにより受付時間の短縮や、センター内でのシステム構築時など頻繁にデータセンターに出入りする際にも、顔認証によるセキュアでスムーズな入館・入室を可能にする。

顔認証技術を活用した入館システムの自動化を実現

 また、屋外の監視カメラとNECの行動検知システムの組み合わせにより、侵入検知(人間がフェンスを越える)、うろつき検出(フェンス近くに人間がいる)、置き去り検出(フェンス近くに物が置き去られる)など、不審な行動の予兆・発見を関し室に通知し、インシデントを未然に防止する。

 さらに、外周のフェンスなどに光ファイバーセンサーを設置し、人間の不正侵入を未然防止する。システムは学習機能を備え、天候や動物による誤動作を抑制し、光ファイバーのため電気的・電磁的干渉を受けにくいといった利点があるという。

行動検知を活用した侵入防止システムを導入

 機器の故障に備える対応としては、ディープラーニング技術であるRAPID機械学習を用いて、サーバー用電源であるUPSの波形を学習。故障予兆を検出することで、早期の保守対応を実現する。

AIを活用したUPSの故障予兆検知

 NECサービスプラットフォーム事業部エキスパートの伊藤誠啓氏は、神戸データセンターの一期棟は2016年4月に開所したが、計画より早く満床となる見込みとなったため、1年前倒しで二期棟を開設したと説明。これにより、西日本エリアでのさらなる需要拡大に対応するとしている。

 また、神戸データセンターはハイブリッドデータセンターとして、クラウドとハウジングを同じ建物の中で実現しており、互いの接続をLANのレベルで実現。また、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureといった他社クラウドサービスとの接続についても、閉域網で接続できる環境を用意しており、ハウジング環境に設置されたシステムとクラウドとのデータ連携やシステム移行をスムーズに行えるとした。

NECサービスプラットフォーム事業部エキスパートの伊藤誠啓氏

名古屋データセンターは東海地区顧客のシステム受け入れを想定した都市型DC

 名古屋データセンターは、名古屋駅から15分以内でアクセス可能な「利便性」、地震や水害、停電など災害リスクに備える「安全・安心」、環境への配慮とコスト低減の「効率性」を追求し、主に東海地区の顧客のITシステムの受け入れ(ハウジング)を想定した、最大500ラック規模の都市型データセンター。

 既存の「NEC中部データセンター」の受け皿になる新データセンターとして、3年前からデータセンター専用ビルの建築を進めてきたもので、今後、中部データセンターからの移設を進め、2022年までに完了予定となるという。

NEC名古屋データセンター開所式の模様

 価格面では、フルラック(4kVA)で月額14万1700円から、ハーフラック(3kVA)で月額9万4100円から、クォーターラック(1.5kVA)で月額5万6000円からと、東海地区トップクラスの価格を実現したとしている。

 設備面では、空調からの冷気に高効率な横吹きを採用。通路を通してサーバーラックまで送り、暖気をホットアイルとして分離、天井から空調機に戻す構造としており、PUEは1.3(設計値)を実現。また、NEC製品を採用した高温対応機器エリアも設置しており、全体ではPUE 1.18の神戸データセンターとほぼ同等の省エネ性能になるという。

 非常発電機の燃料は灯油を採用し、南海トラフ地震を想定して、海岸線から9kmの立地だが、電源や空調設備含めて2階以上に設置。NECによれば、東日本大震災において当該地域データセンターの燃料確保に苦労した経験から、燃料は一般的なA重油でなく、順次、灯油に切り替えているという。また、セキュリティ面では神戸データセンターと同様に、入館システムに顔認証技術を採用している。

送風方法は高効率な横吹きを採用