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NEC、神奈川と神戸に新棟としてグリーンデータセンターを開設

NEC神奈川データセンター 二期棟
NEC神戸データセンター 三期棟

 日本電気株式会社(以下、NEC)は13日、同社の神奈川データセンターと神戸データセンターに新棟を開設し、2023年下期以降に運用を開始すると発表した。新棟は、グリーン電力証書などにより、100%再生可能エネルギーのグリーンデータセンターを実現する。

 NECでは、主にSIerとして構築した基幹システムなどを受け入れるコアデータセンターとして、東日本の神奈川データセンターと西日本の神戸データセンターを運用している。それぞれ約3000ラック相当のキャパシティだが、いずれも販売は堅調で、神奈川二期棟を2023年下期に、神戸三期棟を2024年上期に開設する予定。

新設データセンターの概要

 特に神戸データセンターの二期棟は、「開所から3年で満床になった。これは、これまでのデータセンターのビジネスプラン的にも前倒し」だと、NEC上坂利文氏(マネージドサービス事業部門長)は言う。新棟開設により、神奈川/神戸それぞれ約1500ラック相当の増床となる。

NECのデータセンター事業戦略 クラウド接続性の強化

 データセンターにはいくつかカテゴリがあるが、NECはいわゆるSIer系に分類される。インテグレーションやアウトソーシングを含めたビジネス展開を行っており、ビジネス規模は大きいものの、成長率はあまり高くない。

 一方、データセンター専業の事業者には、クラウドのネットワークノード、キャリア、IX事業者が集まっているコネクティビティ強化型のデータセンターや、ハイパースケーラー向けのサーバーファームとしてのデータセンターがある。どちらもビジネス規模は大きくないものの、高い成長率が見込める。

 企業のDX推進を支援するためには、マルチクラウド/ハイブリッドクラウドに適した環境を整備する必要がある。NECでは、クラウドへのコネクティビティを強化するため、クラウド基盤とのHUB機能を持つNEC印西データセンターを、SCSKとの協業で2022年3月に開設した。

 現在、NECは、用途に応じて以下のようなデータセンターを整備している。

クラウドHUB

 SIerにとって必要な、キャリア、IX事業者、クラウドサービスプロバイダーを印西データセンターに誘致し、インターコネクテッドなエコシステムの環境を整備中。

コアDC

 NEC Cloud IaaSをデータセンター内に設置し、ハウジングエリアと構内接続できるため、低遅延のハイブリッド環境を構築可能。クラウド事業者やECサイトのような大規模ユーザーにも対応する。さらに、閉域網で他社のパブリッククラウドとの接続サービスを提供する、接続拠点を整備している。また、他のNECデータセンターとデータセンター間ネットワークを整備しているため、神奈川と神戸で東西のバックアップも可能。

地域DC

 地方公共団体や地場企業向けのデータセンターとして、13拠点を提供。デジタル田園都市国家構想への対応も想定している。

新棟の特徴とグリーンDC

 コアデータセンターでは、これまで他社クラウドと接続するには顧客企業側で閉域網の調達が必要だった。しかし、クラウドHUBの整備が進むと、NECデータセンター間接続というプライベートなネットワークで他社のクラウドも利用可能になる。契約の煩雑さが減り、リードタイムも短くなるので、ユーザー企業にとってメリットがある。

 NECとしてはさらにビジネスの拡大が期待できるため、コアデータセンター2拠点の拡張が進められている。新棟でポイントとしているのは、「安心・安全」「効率」「コネクティビティ」の3点だ。

 自然災害リスクの低い立地や、JDCCファシリティスタンダード ティア4相当、7段階のセキュリティチェックなど、安心・安全なファシリティを提供することは従前通り。プライバシーマーク、SOC/SOC2、FISCなど、多数のレギュレーションに対応する。

 入館については、昨今の感染症対策なども鑑み、運転免許証による本人確認を無人で行う入館受付や、ICカードと非接触の顔認証による二要素認証など、スムーズな入館・入室を実現した。NECの顔認証は、入出国管理にも使われるなど、世界トップクラスの認証精度を誇る。

 新棟のpPUE値は1.16(設計値)。フリークーリングの活用や最適空調設計など、以下の図のような対策で、高効率を実現した。ちなみに、既存棟のpPUE設計値は1.18だ。

新棟はpPUE 1.16

 NECのデータセンター事業戦略では、「クラウド接続性」とともに、「グリーンDC」が挙がっている。脱炭素社会の実現に向けて、環境への関心が高まっていることから、新設データセンターでは、太陽光発電による自家発電、グリーン電力証書、トラッキング付き非化石証書を組み合わせ、消費電力の100%再生可能エネルギー化を実現。利用企業にとってデータセンターの性能としてメリットがあるわけではないが、ESG(環境・社会・ガバナンス)の目標設定がある企業にとっては、選択の理由になり得るだろう。

 「お客さまの環境は、オンプレ・ハウジングからハイブリッド、マルチクラウドへと進化していると認識している。弊社のデータセンターに入っていただけば、プライベートクラウドとしてNEC Cloud Stackを利用し、さらにパブリッククラウドを使ったマルチクラウド環境を容易に実現できる。単に接続するだけでなく、マルチクラウドの運用管理のマネージドサービスやデータ連係もサービスとして提供する」と上坂氏は言う。

ハイブリッドクラウド基盤の実装イメージ