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NEC、神奈川と神戸にグリーンデータセンターの新棟を開設、非化石証書と高負荷対応の新サービスを提供

 NECは5月14日、NEC神奈川データセンター二期棟と、NEC神戸データセンター三期棟を開設、現地の見学会を行った。どちらも、100%再生可能エネルギーを活用したグリーンデータセンターで、JEPXから調達した非化石証書の再販も行う。

NEC神奈川データセンター
NEC神戸データセンター

データセンター市場ニーズのトレンド

 クラウドファーストという考え方が浸透しているが、そうはいっても、すべてのシステムをパブリッククラウドに移設するのは無理がある。エンタープライズにはクラウド化が難しいシステムがあるし、自治体などにはセキュリティ要件のためパブリッククラウドに置けないデータもある。

 このため、プライベートクラウド(あるいはオンプレミスのシステム)とパブリッククラウドを併用するハイブリッド構成、またはいくつかのパブリッククラウドを組み合わせて使うマルチクラウドが、現実的な解決策となる。

 また、省エネ法でエネルギー使用量の削減や再生可能エネルギー活用が求められるようになっている。このため、データセンター自体の省エネ化・グリーン化だけでなく、顧客企業向けに価値提供することも視野に、データセンターサービスを考える事業者が出てきた。

 そして、最近エンタープライズで特に課題となっているのが、高負荷サーバーの置き場所がないという問題だ。ChatGPTのブレークをきっかけにAI活用が広がっているが、GPUサーバーのような高負荷マシンは、本社のサーバー室や既存のデータセンターには設置が難しいという問題もある。

 「昨今データセンターに対して、グリーンやセキュリティ重視、AI対応といったニーズがかなり高まっている。それにお応えするために、新しいデータセンターを開設した」(繁沢優香氏 NEC マネージドクラウドサービス事業部門 マネージングディレクター SVP)

 「NECでは、クラウドHub DC、コアDC、地域DCの3つのレイヤーでデータセンターを提供しているが、今回は東西のコアDCである神戸データセンターと神奈川データセンターの両方に新棟を開設する」(伊藤誠啓氏 NEC クラウド・マネージドサービス事業部門 データセンターサービス統括部 シニアディレクター)

NEC マネージドクラウドサービス事業部門 マネージングディレクター SVPの繁沢優香氏
NEC クラウド・マネージドサービス事業部門 データセンターサービス統括部 シニアディレクターの伊藤誠啓氏

NEC神奈川データセンター二期棟の概要

 神奈川と神戸の新棟は、いずれも「安全・安心」「効率・グリーン」「コネクティビティ」の3点を強化している。

特長① 安全・安心

  • JDCCファシリティスタンダードのティア4相当の堅牢な環境
  • データセンター内に設置されたNEC Cloud IaaSは、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)に登録されている

特長② 効率・グリーン

  • 100%再生可能エネルギーを利用するグリーンデータセンター
  • pPUE 1.16

特長③ コネクティビティ

  • 各種パブリッククラウドへの閉域接続サービスを提供
  • NEC Cloud IaaSとの構内接続が可能

 それぞれの主な仕様は以下の図の通り。神戸の方が、若干規模が大きい。

新棟の主な仕様

 新棟開所に当たって当該データセンターの見学会が開催されたので、NEC神奈川データセンター二期棟の設備の特長について紹介する。

 安全・安心の面では、敷地内への入り口からサーバーラックの解錠まで7段階のセキュリティチェックを設けているが、利便性と安全性の両立をコンセプトに整備を進めている。

 例えば、入館手続きは有人受付があるが、事前にWebで申請してQRコードを発行しておけば、運転免許証を使って入館カード発券できる無人受付機を複数台用意している。受付機は英語表示に変更も可能だ。

 また、金属探知ゲートを通過後のフラッパーゲートやサーバー室への前室は、ICカードと顔認証の二要素認証だが、ウォークスルー顔認証でスムーズに通れる。

 効率・グリーンの面では、以下のような取り組みで、pPUE1.16(設計値)を実現した。

  • フリークーリングの活用
  • 中央熱源冷却方式の採用
  • 受変電・配電損失の低減
  • LED照明
  • 最適空調設計
  • UPS損失低減

 空調は、冷水の温度を20℃に設定。一期棟では15℃だったので、ターボ冷凍機の稼働期間をさらに短縮できる。また、一期棟ではまだ採用していなかったバスダクト方式を採用した。

 空調は、天井からラック吸気側に向けて冷気を吹き下ろす、コールドアイルコンテインメントの方式を採用している。

 サーバー室内がほぼ均一の温度であれば、壁面から冷気を吹き出すホットアイルコンテインメントの方が、熱対流や気圧差を利用できて電力効率がいい。しかし、ラックごとに発熱が大きく異なる場合は、高温のラックに集中的に冷気を当てられるコールドアイルコンテインメントの方が冷却効果が見込める。NECのコアデータセンターでは、こちらの考え方で設備設計している。

新棟の新たなサービス

 新棟には、新たなサービスが2つある。ひとつは、非化石価値提供サービスだ。

 データセンター自体のグリーン化では、地下冷気や太陽光発電を利用し、非化石証書の調達と組み合わせて100%再生可能エネルギーを活用したグリーンデータセンターとなっている。さらに、NECがJEPX(日本卸電力取引所)から調達した非化石証書をデータセンター利用企業へ再販する。顧客企業は、この証明書をRE100やSBTなどの第三者機関への報告に使うことができる。

非化石価値提供サービス

 また、このサービスの前提として、顧客企業が使用した電力量を計測する必要がある。NECでは、ラック列の元やUPSなどに電流計測器を設置する、電力計測サービスを同時に提供する。

 ラック上部の電力系機器のボックスの横面には、電流計が設置されている。電力は2系統で入ってくるので、反対側の横面にも同様の装置が設置される。これにより、計測範囲の正確な電力使用量が分かり、省エネ法の報告書などに記載できる。

使用電力の計測機器を設置

 もうひとつの新サービスは、高負荷対応エリアの設置だ。マシン室は2~5階までの4フロアだが、通常フロアよりも天井高が高く冷却装置を強化した高負荷対応のフロアがある。

 高負荷対応エリアでは、ラックレイアウトのカスタマイズが可能。通常フロアの供給電力は平均8kVA/ラックだが、高負荷対応エリアは最大実行20kWのラックを設置できる。また今後、サーバーベンダーと同期をとりつつ、水冷式に対応するための検討や実証を行う予定という。