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パナソニック、配送業況を見える化し関係者間で共有するソリューション
物流業界が抱える課題の解決を支援
2018年12月11日 06:00
パナソニック コネクティッドソリューションズ社は、同社の子会社であるZETES(ゼテス)の「ZETES CHRONOS(ゼテス クロノス)」を活用した「配送見える化ソリューション」の提供を開始した。
パナソニック コネクティッドソリューションズ社 モバイルソリューション事業部 SCM事業推進部 戦略推進課の里平利彦主幹技師は、「国内で走っているトラックの約99%が大手物流会社以外のトラックであり、一部の大手物流会社を除くとIT化が遅れているのが物流業界の実態。ZETESの活用によって現場の見える化が実現でき、物流業界が持つ課題を解決できる」とする。
ZETESは、ベルギーのブリュッセルに本社を置くSCMソリューションベンダー。この分野で約30年の歴史を持つ老舗だが、2017年にパナソニックが買収した。
今回の配送見える化ソリューションは、日本の物流業界にあわせた運用のために、パナソニックの頑丈ハンドヘルド端末「タフブック FZ-N1」(以下、FZ-N1)との組み合わせで提案。過酷な労働環境にある物流業界での利便性の向上、業務効率化を実現するものになるという。
日本の物流業界が抱える課題
日本の物流業界には、いくつかの大きな問題がある。
例えば、労働時間のうち約1割が荷待ちのための待機時間であり、生産性向上や働き方改革を図る必要があることや、荷物の小口化や時間指定、多頻度化などの物流ニーズの多様化に伴い、高度な管理や誤配送防止が急務であること、人材確保が難しいことなどが挙げられており、特に人材の確保については、ドライバー不足を実感している業界関係者が約7割に達しているという。
また、中堅・中小の運送会社が多いためIT化が遅れており、委託先物流センター(3PL:3rd Party Logistics)では、いまだに多くの企業が紙の伝票を使っており、伝票の紛失事故がひんぱんに発生している点も大きな課題だ。
一方で、荷主からは、複数の配送会社を使っているため配送状況が分からないといった声が上がっていること、運送会社からは、積み込みミスや誤配送がなくならないことがそれぞれ課題として挙がっているとのこと。さらにドライバーからは、納品先での待機時間をはじめとする、非効率な作業や手間を改善してほしいという要望が挙がっている。
パナソニックは国内大手運送会社向けのハンドヘルド端末で約30年間の実績があるが、ここで蓄積したノウハウに買収したZETESが持つ技術を加え、さらにサービスおよびサポートを組み合わせ、「配送見える化ソリューション」として提供。こうした課題解決を図ろうとしている。
荷主、運行管理者、ドライバーの三者間で配送業況を見える化し共有
今回提供される「配送見える化ソリューション」は、荷主、運行管理者、ドライバーの三者間で配送業況を見える化し、情報を共有できるのが特徴だ。
効率的な配送計画を行うTMS(Transport Management System:輸配送管理システム)との連動で、ドライバーにはFZ-N1を通じて配送業務指示を配信。業務効率化と作業ミスを軽減できる一方、配送プロセスを一元管理するため、荷主や管理部門は、各種配送状況をリアルタイムに確認し、配送効率向上や問い合わせ対応の迅速化や品質向上が可能になる。
また、FZ-N1に搭載しているGPSの活用により、トラックの位置情報を把握でき、同時に、トラックやドライバーと荷物をひもづけて一括で進ちょく管理ができるため、いま荷物がどこにあるのかといったこともリアルタイムで確認を行える。
これまで、大手運送会社ではハンドヘルド端末を利用して荷物を管理し、エンドユーザーも配送状況を確認できるようなサービスを提供していたが、荷物が配送センターや配送拠点にあることや、そこから出荷されたことなどを確認できるレベルにとどまっていた。
これに対して配送見える化ソリューションでは、ドライバーなどとひもづいた形で荷物の位置をGPSで確認できるため、これまで多くの時間を費やしていた、荷物に関する問い合わせ対応を効率化することができる。
将来的には、自宅や会社までどれぐらいの時間で到着しそうだ、といった目安の時間を配達先が把握する、といった使い方も可能になりそうだ。
さらに荷物単位で、ハンドヘルドに搭載されたバーコードリーダーを用いて、荷物の持ち出し時や配送先でデータを読み込んで管理することにより、誤配送および誤集荷を防止する機能を搭載。受取時のサインをFZ-N1のタッチパネル画面に書き込むこともできるため、エビデンス管理を効率化するとともに、リスクを軽減できるという。
「ドライバーごとに配送指示および配送荷物一覧を配信できるだけでなく、エビデンスも残るため、業務効率化と人的ミスの低減が可能になる。また、管理者がドライバーに電話で問い合わせをしなくても、PCの管理画面でリアルタイムの配送進行を一括で確認することができる」という。
加えて、配送品の物損などの事故が起こってしまった場合も、FZ-N1に搭載されているカメラを使用して状況を撮影し、GPSの位置情報とともに管理部門に送信して適切な対応を仰ぐ、といったことが可能になる。
なおFZ-N1は、ハンディターミナルやPDA、携帯電話の機能を1台に集約した頑丈ハンドヘルド端末。本体裏側に斜めに配置されたバーコードリーダーによって、ユーザーの作業効率を向上している。11月21日に発売した2018年型の最新モデルでは、210cmの高さからの落下試験を実施しているほか、マイナス20℃から50℃までの幅広い環境で動作可能になっている。
「210cmというのは、倉庫で脚立に乗ったくらいの高さ。かなり大型のトラックの上から落としても壊れにくい耐落下性能となっている。また、マイナス20℃での動作が可能になったことで、冷凍倉庫での利用も可能になる」としている。
バッテリー駆動時間は標準で約12時間。大容量バッテリー搭載時には約19時間の連続駆動が可能だ。
また配送見える化ソリューションは、システムをクラウドサービスで提供するため、サーバー環境の構築が不要であり、短期間かつ低コストで、小規模な導入からスタートできる点も特徴。専任のシステム管理者の配置も不要という。「物流業界のほとんどの企業は、中堅・中小企業。こうした企業にとっても、システム導入のハードルが下がる」というわけだ。
さらに、兵庫県神戸市のパナソニック コネクティッドソリューションズ社 神戸工場内に365日対応のサポート窓口を設置し、運用をサポートする。
当面は、パナソニック コネクティッドソリューションズ社傘下のパナソニック システムソリューションズ ジャパンを通じた販売となるが、今後、顧客ニーズを細かく反映した上で、同社を通じた販売以外にも拡大。2021年度には、20億円の売上高を目指す。
「物流業界の企業の声を聞いたところ、特に、メーカー、卸、小売店という荷主から、配送業務を見える化したいという声が多かった。まずは荷主へのアプローチを強化する」。
なおZETESでは、配送領域だけではなくSCM全体に渡る製品を用意しており、今回の配送見える化ソリューションは、国内展開としては第1弾となる。
このほかにも、製造業向けの製造識別化ソリューション、物流向けの倉庫見える化ソリューション、小売り向けの店舗見える化ソリューションなどの国内投入を計画している。倉庫見える化ソリューションでは、2019年3月以降、パナソニック コネクティッドソリューションズ社 神戸工場で、レッツノートやFZ-N1の部品倉庫での試験運用を開始することが決まっている。ここでは音声による操作も新たに導入する予定であり、作業の効率化を高める計画。またこれらの成果も、実際の製品化に反映する考えだ。
「モノに着眼して、製造、倉庫、物流、小売りまで、一気通貫でソリューションを提供できるのがZETESの強みである。欧州ではZETES CHRONOSの導入によって、10数%の生産性向上を実現した例が出ている。日本の企業の声を聞きながら、トータルソリューションとしての展開を強化していきたい」。