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NII、モバイル端末からのデータ収集と処理をワンストップで実現するSINET「広域データ収集基盤」の実証実験を開始
2018年12月20日 15:18
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(以下、NII)は20日、最新の学術情報ネットワーク「SINET5」とモバイル通信環境を直結した新サービスとなる、SINET「広域データ収集基盤」の実証実験を12月21日に開始すると発表した。
SINET5は、日本全国の大学・研究機関などが利用する、学術専用の情報通信ネットワーク。全都道府県にSINETノードが設置され、100Gbps回線で接続されており、大型実験施設やスーパーコンピューターなどへのアクセスや、各種クラウドサービス、海外への接続に利用できる。
新たに提供する広域データ収集基盤では、NTTドコモ/KDDI/ソフトバンクの3社による、SINET専用のSIMを提供。モバイルキャリアのネットワークの中に、インターネットとは切り離されたSINET専用の仮想ネットワークを形成し、SINET5で提供しているL2VPNサービスと連携させることで、IoTなど広範囲のエリアから発生するデータを、セキュアに保存・収集できる環境を提供する。
さらに、民間の協力事業者が提供する、AI/機械学習向けのクラウドサービスなど、データ処理環境への接続機能を連携させることで、ワンストップかつ広範囲な研究環境を実現する。
NIIでは、広域データ収集基盤を活用する実証実験の公募を行っており、さまざまな研究分野からの提案を募集している。2018年5月~7月に行った1回目の公募では、「IoT技術を活用した気候変動にロバストなマンゴー生産システムの研究開発」(琉球大学)、「脳波等の脳データを対象に感情、活力度、認知状態などを遠隔再現するプラットフォームの開発」(広島大学)、「ウェアラブルデバイスを用いた生体データを対象にストレス等の心身状態計測、それらを基にした心理的意欲・身体的活性度の労働力指標を可視化する生体指標プラットフォームの開発」(放射線医学総合研究所)、「エッジコンピューティング基盤(Distcloud)を活用したIoT実証実験」(大阪大学)など、19の研究テーマを採択した。
これまでも、SINETに参加している機関に所属する研究者は、L2VPNで接続している大学などの計算機環境や、「SINETクラウド接続サービス」で接続している商用クラウドサービスが利用できた。
さらに、今回開始する実証実験の期間中については、モバイルサービスを利用して収集したデータの処理を行うクラウドサービスなどの計算リソースを、協力事業者が無償やアカデミック条件の契約により利用できる。
スタート段階では、NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)、KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、Amazon Web Services(AWS)、株式会社佐賀IDC、さくらインターネット株式会社、日本マイクロソフト株式会社の各社が、実証実験に向けてIoTやAI/機械学習、データ処理のためのサービスを提供する。
NIIの喜連川優所長は、SINET5は全国に整備され、大型実験装置から発生するデータ通信などに利用されているが、一方で我が国が目指す未来社会の姿として提唱されている「Society 5.0」はデータ駆動型社会と定義でき、そのためのデータは大きな実験装置ではなく社会から広く収集する必要があると説明。新たに提供する広域データ収集基盤は、Society 5.0の実現に向けた、サイバー空間とフィジカル空間の高度融合への重要な一歩になるとした。