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日本の中小企業のIT化を複合機から支援する――、コニカミノルタ、2019年4月から「Workplace Hub」の国内提供開始

 コニカミノルタジャパン株式会社は10日、すでに欧州や米国で提供を開始しているコニカミノルタのオールインワンITサービス「Workplace Hub」を、2019年4月から国内でも提供することを発表した。

 複合機と従量課金など各種サービスを組み合わせた「Workplace Hubプラットフォーム」と、プラットフォーム上で動作する「Workplace Hub Platform Readyアプリケーション」から構成される。

 コニカミノルタジャパン 代表取締役社長 原口淳氏は「紙とトナーがベースだった複合機ビジネスからの脱却をWorkplace Hubで図り、同時に日本の中小企業のIT化を複合機から進めていきたい」と日本市場でのビジネス展開に強い意欲を見せる。

コニカミノルタジャパン 代表取締役社長 原口淳氏

複合機ベースのITソリューション「Workplace Hub」

 Workplace Hubは2017年3月に、ドイツ・ベルリンにて最初の発表が行われた、コニカミノルタによる複合機ベースのITソリューション。従来の複合機にサーバー機能やAI機能を搭載し、オフィス内のデータをWorkplace Hubプラットフォームが文字通り“ハブ”として集約、搭載されたダッシュボード上でオフィス内のステータスをリアルタイムに把握できる。

 プラットフォーム上には従量課金のアプリケーション基盤が実装されており、集約したデータから得られた分析をインターネット越しにコニカミノルタのデータセンターへ送信し、ハードウェアの遠隔監視や遠隔保守が利用できるほか、ストア機能(マーケットプレイス)を使った各種アプリケーション(サードパーティ製含む)のダウンロード/利用も可能。セキュリティに関しては、グローバルと同様にSophosのソリューションを採用している。

Workplace Hub(複合機一体型モデル)の構成図。複合機とLinuxサーバーを統合し、OfficeやSAPなどとも連携して社内のデータを集約、文字通りハブとして外部のサービスと連携する

 用意されているモデルは以下の3種類となる。

Workplace Hub Entry

Windowsをベースとしたタワー型マシン。2019年4月から提供開始

Workplace Hub Edge

セキュリティとアプリケーションの拡張性を訴求した、Linuxサーバー搭載のラックマウント型プラットフォーム。2019年秋から冬にかけて提供予定

Workplace Hub AIO

複合機とEdgeを同一の筐体に搭載したオールインワンボックス。Edge発売以降に提供予定

Workplace Hubのラインアップ。日本で2019年4月から提供されるWindows搭載タワー型は、海外市場では提供されておらず、Windowsユーザーが多い日本のみに特化した製品
日本市場で4月から提供が開始されるタワー型の「Workplace Hub Entry」(右)と、海外で主流のラックマウント型モデル「Workplace Hub Edge」
複合機とEdgeが統合された「Workplace Hub AIO」が日本で提供されるのは2020年ごろになる見通しだ

 なお、提供されるアプリケーションは現時点では以下の通りで、ストア機能の利用開始は2019年秋以降の予定となっている。

・会議室、施設、設備などファシリティの予約管理システム「Faciliza(ファシリザ)」
・複合機連携簡単仕分けツール「仕分け名人」
・インターネット回線と統合した企業内電話サービス「IT-Guardians ひかり電話」
・統合セキュリティパック「Synchronized Security」(ソフォス)

 すでに欧米では、200名以下の中小企業をターゲットに9月からWorkplace Hubの提供を開始しており、数十社が採用済み。

 Workplace Hubビジネスを統括するコニカミノルタ ワークプレイス事業部 事業部長 高山典久氏は「複合機を含めたホリゾンタルなかたちでの導入が増えている。もともと欧州や米国では当社の複合機のシェアは高く、パートナーネットワークも強固で、これらの資産を生かしたビジネス展開を行うことができている」と語る。

コニカミノルタ ワークプレイス事業部 事業部長 高山典久氏

 Workplace Hubは複合機というハードウェアをインターフェイスに、月額従量課金でさまざまなITサービスを利用できる点が大きな特徴だが、「専任のIT人材がいないという中小企業の悩みはどこの国でも同じ。そうした悩みに、複合機というどの企業にも必ず存在するデバイスをインターフェイスにして、従量課金というかたちで応えていくのがWorkplace Hubの役割」と高山氏。

 現在は既存の複合機ユーザーによるWorkplace Hubへのリプレースが中心だが、新規のWorkplace Hubユーザーが複合機を新たに発注するというケースもあるという。

高山氏が紹介したドイツの製造業の事例。クラウドへの移行を進めていたが、印刷管理だけはクラウドに移行できずにいたところ、社内の印刷データを集約できるWorkplace Hubにより、クラウドとの連携も可能に。この企業はこのあと、複合機を新たに7台導入したという

 欧米でのローンチを経て、ようやく日本市場での展開を開始するWorkplace Hubだが、当初の予定より1年以上遅れた発表で、しかも当初はWindowsベースのタワー型マシンのみの提供となる。

 この遅れについて原口氏は「グローバル(コニカミノルタ)の方針で、まずは欧米主導で固めてから日本で、というステップで準備してきた。遅れた、というよりは、日本市場に向けて丁寧に準備してきた結果」と語る。

 他国と日本市場の最大の違いは、その背景にある社会課題で、原口氏はその最たるものとして「先進国でも群を抜く超高齢化社会と、先進国最低レベルの労働生産性」を挙げている。

 生産人口の減少と低労働生産性は、消費人口の減少に直結し、サービス産業に大ダメージを与え、市場の弱体化を引き起こす。この課題を「コニカミノルタとして、それも複合機のビジネスを通して解決する」ことがWorkplace Hubの使命だと原口氏は言う。

 前述の通り、コニカミノルタの主なターゲットはグローバル共通で従業員200名以下の中小企業だ。そして国内中小企業のIT化のスピードは、米国や欧州と比べて非常に遅い。

 「米国は小さい企業でもIT化が進んでおり、ITに投資することに抵抗が少ない。一方、日本の中小企業はまだIT投資への意欲が低い」と原口氏は語るが、おそらくこの“IT投資への意欲の低さ”が、日本市場への展開が遅れている最大の要因だろう。

 高山氏は欧米のユーザーによるWorkplace Hubの月額利用料金について「だいたい150~180万円くらいのレンジ」と語っているが、日本の中小企業をこれと同じレベルに当てはめることは難しい。

 現時点で、2019年4月のサービス開始における価格設定がいまだに決まっていないのも、日本の中小企業がITサービスとして許容できる金額と、Workplace Hubをビジネスとして成立させる金額の妥協点を見いだせていないからにほかならない。

 だが原口氏は「日本向けの価格設定に悩んでいることは確かだが、それでも従量課金で提供することには絶対的にこだわっている」としており、従来の“箱売り”から脱却したクラウドベースの新しいビジネスモデルを、コニカミノルタ自身が模索していることがうかがえる。

 欧米向けには提供していないWindows搭載のタワー型マシンを日本向けに作り、最初に市場投入するのも、そうした日本市場独自の事情を考慮してのものだ。

 「Workplace Hubに関しては、当面、われわれの先行投資に対し、パートナー企業に乗ってもらうというかたちが続くと想定している。2022年にはグローバルで1000億円規模のビジネスに成長させ、そのうち国内は2割ぐらいまでは占めるようにしたい」(原口氏)。

 「日本企業の93%を占める中小企業が強くならないと日本の未来はない」――。原口氏のこの言葉には、Workplace Hubがメインターゲットを中小企業とする複合機メーカー、コニカミノルタ自身のチャレンジでもあることが読み取れる。

 複合機事業の再考が業界全体で叫ばれる中、複合機ビジネスで新たな成長戦略を描くには、複合機の強み――、企業規模を問わずオフィス内で一定のスペースを確保し、ネットワーク接続され、24時間電源が入っており、すでにチャージ/従量課金モデルが確立されていて、オンサイト保守のノウハウがあるという強みを生かし、新たな技術革新を呼び込めるITサービス、特にクラウドサービスとの連携が欠かせない。

 ここでWorkplace Hubがユニークなのは、クラウドに複合機のデータをアップロードするのではなく、複合機はあくまでインターフェイスであり、外部サービスとの中継(Hub)として活用できるという点だ。

 原口氏は「ブルーオーシャン」と表現しているが、確かに既存のITベンダーや複合機メーカーでも同じ取り組みをしているところはない。海外市場では受け入れられつつあるWorkplace Hubのビジネスモデルを、日本の中小企業はどう評価するのか、コニカミノルタにとっても大きなターニングポイントとなる。