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NTT Com、AIとRPAを活用した「コンタクトセンターDXソリューション」

オペレーターの応対業務から事務処理までを一気通貫で自動化

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は20日、対話型AIエンジンとRPAを組み合わせ、コンタクトセンターの応対から事務処理までのプロセス全体を自動化する「コンタクトセンターDXソリューション」を、12月1日から提供すると発表した。

 同日に行われた会見では、新ソリューションを提供する背景やソリューションの概要、ユースケースについて説明した。

業務プロセス全体の自動化を実現するソリューション

 「コンタクトセンターDXソリューション」は、AIによる通話応対やRPAによる作業自動化などを単独で提供する部分最適なサービスではなく、顧客の業務課題を分析したうえで最適な技術を組み合わせ、業務プロセス全体の自動化を実現するソリューションとなっている。コンタクトセンターの定型業務をより効率的にするための「AI+RPA」を導入することで、生産性の高い環境へのDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する。

 NTT Com ボイス&ビデオコミュニケーションサービス部 サービス企画部門 担当課長の小松崇氏は、コンタクトセンターの現状について、「コンタクトセンター業界は、2018年に1.4兆円に達する見込みで、電力自由化やマイナンバー関連の特需に加えて、オンラインサービスの普及に伴うニーズ増加により需要は拡大傾向にある。その一方で、業界一般的に人材不足の課題が顕在化し、オペレーターの応対品質の維持が困難な状況になりつつある」と説明する。

NTT Com ボイス&ビデオコミュニケーションサービス部 サービス企画部門 担当課長の小松崇氏

 また、「オペレーターの人材不足に対応するためには、AIなどの新たなテクノロジーを活用し、顧客に優れたセルフサービス体験を提供していく必要がある」とするが、「コンタクトセンター業務には、顧客から高いホスピタリティが求められる領域も存在するため、デジタル活用領域の見極めが重要。例えば、クレーム対応やコンシェルジュ相談など、目的や要求が定まっていないものについては、オペレーターが顧客に寄り添った応対をする必要がある」と、コンタクトセンターにおけるデジタル活用の課題を指摘。

 「こうした課題を踏まえ、今回の『コンタクトセンターDXソリューション』では、根本的な人材不足解消のため、AIを含めた複数のエンジンを組み合わせ、オペレーターを介すことなく一気通貫に応対を実施する仕組みを提供する。これにより、オペレーターは、高いホスピタリティが求められる応対業務に専念することが可能になる」とした。

 具体的には、顧客の要件確認、情報検索、回答提示といったオペレーターの応対業務については、音声認識・AIエンジン・音声合成などのテクノロジーを組み合わせることで、AIが顧客の発言を理解し、検索を経て回答を発する仕組みを構築。

 応対内容の記録や後続タスクの実行といった後続・派生業務については、RPA/APIを活用することで自動化を行う。また、このシステムはモジュール設計となっているため、顧客の要件に合わせて最適なエンジンを組み合わせて提供することが可能となっている。

「コンタクトセンターDXソリューション」の概要

 さらに、AIやシステムを導入しただけで終わることなく、AIへのビジネスへの組み込みを可能とする業務コンサルやAIチューニングまでをセットにした業務請負型ソリューションとして提供する点も特長だ。「運用開始後もチューニングなどのAI保守をサポートすることで、継続的にAI精度を向上することができる」(小松氏)としている。

 同ソリューションのAIで応対ができるユースケースとしては、インバウンドでは、「商品注文」「予約/申込」「注文内容変更」「登録情報照会・変更」「交換・返品」「解約・キャンセル」「FAQ」「空き・在庫確認」「状況確認」など。アウトバウンドでは、「空き状況確認」「テレアポ」「顧客リスト精査」「予約確認」「督促」「アンケート」を挙げている。

「コンタクトセンターDXソリューション」のユースケースリスト

 会見ではユースリストの中から、「FAQ」「商品注文」「予約確認」の3つの活用事例をデモを交えて紹介した。

 「FAQ」については、NTT Comのサービス「OCNモバイルONE」のコンタクトセンターで実際に活用しており、時間外FAQの問い合わせ受付を実施している。2018年6月から7月(1.5カ月)の実証運用期間では、日次チューニングを実施した結果、自然発話のFAQにおいても、AIで応対が完結した率が90%超を達成したという。

FAQにおけるユースケースのデモ画面

 「商品発注」では、2017年夏に地域型ECサイトを運営する事業者とともに、エンドユーザーを対象とした実証実験を実施。オペレーターがすべて応対する場合と比較し、約60%の人員稼働率削減を実現している。

 「予約確認」については、飲食業における「No Show」の課題解決に向けて、飲食店予約サイトと連携し、同ソリューションを用いた実証実験を12月から実施する予定。

 実証実験では、AIがSMSや電話によりリマインドを自動実行し、飲食店予約者に予約内容を再確認する。また、飲食店予約者との応対結果に応じて、予約変更システムへの誘導などの事務作業をRPAが自動で実行する。

 これによって、飲食店の従業員に負担をかけない大量の予約確認業務を実現するとともに、飲食店予約者の利便性も向上できる環境を目指す。