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AzureとWindows Server 2019でハイブリッドクラウド移行を加速――、日本マイクロソフト
2020年1月までにWindows Server 2019利用の80%をハイブリッドクラウド環境へ
2018年10月30日 12:46
日本マイクロソフト株式会社は30日、先ごろリリースされた最新サーバーOS「Windows Server 2019」の利用環境の80%を、2020年1月までにハイブリッドクラウドにするという目標を打ち出した。
同社ではWindows Server 2019を、「オンプレミスとMicrosoft Azureをブリッジするオペレーティングシステム」と位置づけており、Microsoft Azureとの組み合わせによるハイブリッドソリューションの提案を加速する姿勢を、あらためて強調した。
なおWindows Server 2019は、2018年9月に北米で開催された同社の年次イベント「Microsoft Ignite 2018」で展開開始が発表され、日本では11月5日から開催する「Microsoft Tech Summit 2018」で、顧客向けに説明を行う予定になっている。
“ハイブリッドクラウド”への移行を促進
2020年1月14日にはWindows Server 2008のサポートが終了。データベース製品のSQL Server 2008も2019年7月9日にサポートが終了する。
日本マイクロソフトではこれを受け、これらの環境を最新のOSに移行するように呼びかけるとともに、これを機会として企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進すべく、取り組みを行っている。
その1つがクラウド化推進で、同社 業務執行役員 クラウド&エンタープライズ本部の浅野智本部長は、「当社は企業のDXの実行において、Microsoft Azureの活用を提案している。企業がDXを推進する上では、従来のWindows ServerやSQL Serverによるオンプレミスの運用から、クラウド環境への移行が不可欠となっているが、10年前に発売されたレガシーなシステムがまだ多くの企業で活用されているのが実態だ。早期にMicrosoft Azureへ上げ、そこでPaaS化/SaaS化を進めてもらう、リフト&シフトを提案しているところだ」との現状を説明。
その上で、「最大手のクラウドプロバイダー、最大手の仮想化ベンダーによるハイブリッドクラウドの提案は一方通行であり、一度クラウドに移行すると元に戻せない。だが、当社のハイブリッドクラウドの提案はインタラクティブであることが特徴で、Windows Server 2019を活用するとMicrosoft Azureとのシームレスな連携が可能になる。これによって、ミッションクリティカルシステムのハイブリッドクラウドへの移行を推進していく」などと話す。
同社が引用したIDCの調査によると、日本のクラウドサービスの利用率は16%にとどまっており、グローバルに比べて20ポイント程度低いという。だが、その一方で、マイクロソフトの調査によれば、ハイブリッドクラウドの導入を検討している企業は84%に達しており、1年前の55%から大きく上昇しているとする。
浅野本部長は、「日本でのクラウド化は大幅に遅れているのが実態である」と前置きしながらも、「一気にクラウドに行くにはハードルが高いが、ハイブリッドクラウドでワンクッションを置きたいという企業が多い。ハイブリッドクラウド環境を通じて、どれがクラウドに乗せられるのか、どれが乗せられないのかということを検証する企業が増加している」との実態を説明。
「日本マイクロソフトにおけるWindows Serverのライセンス契約では、今年4月以降、ハイブリッドクラウドでの活用が、前年同期比40%以上の成長を遂げている。日本では、ハイブリッドクラウドの動きが加速している」とした。
日本マイクロソフトでは、現在、マイクロソフトサーバー移行支援センターを設置して企業の移行活動を支援しているほか、Microsoft Azure環境へ移行したWindows Server 2008については、サポート終了後も3年間、延長セキュリティ更新プログラムを無償提供することを発表している。
さらに戦略パートナー57社を通じて、新たな環境への移行を促進しているところだ。
「マイクロソフトサーバー移行支援センターを通じて4000社以上に直接アプローチしたところ、すでに、数百社が移行への取り組みを開始しており、約6割の企業がオンブレミスからクラウドに移行したいと考えていることがわかった。当社が展開している施策が、レガシー環境からの移行を考え始めるきっかけになっている」とアピールしている。
年内には、NEC、デル、日立製作所、日本ヒューレット・パッカード、富士通、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズが、Windows Server 2019をサポートした製品を順次投入することになるという。
なお、IBMによるRed Hat買収の影響については、「まだ直接、話をしているわけではないが、これまでと関係は変わらないと考えている。IBMと一緒になって市場に最適なものを提供したい」と話している。
2社の導入事例を説明
さらに会見では、2社の導入事例に関して説明が行われた。
ソフトバンクコマース&サービス(ソフトバンクC&S) ICT事業本部 MD本部 ビジネスソフトウェア統括部 第2BSWマーケティング部長兼技術統括部テクニカルマーケティングセンター長の齊藤主典氏は、同社が設置したソフトバンクC&S Azure相談センターを通じて、ハイブリッドファイルサーバーを導入したNext Readの事例を紹介。
働き方改革などのITを活用した生産性向上において、「Windows Server 2019 Azure File Sync」と「Azure Storage」を採用してハイブリッドファイルサーバーを構築し、高速なファイルアクセスや柔軟な共有環境の実現とともに、コストの最適化や運用負荷の軽減を実現したという。
一方、GMOインターネット クラウド事業部の高田幸一部長と、GMOインターネット システム本部チームエグゼクティブの樋口勝一氏は、8年間で延べ13万VM(仮想マシン)をホストした、大規模なHyper-V基盤を活用している同社の事例について説明した。
同社では、集約率向上やパフォーマンスの改善を図るためにWindows Server 2019を活用。高い信頼性を維持しながら、これらの課題を解決するとともに、管理性も向上させたという。
こうして、Windows Server 2019による基盤の底上げを可能としたほか、今後は、Microsoft Azureと連動したさまざまなオプションの提供、別リージョンへのシームレスな提供を検討しているとした。