クラウド&データセンター完全ガイド:プロダクトレビュー DCを支える黒子たち

キャパシティ・オンデマンド対応のスケールアップ型サーバー――IBM Power System E980/E950

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2018年秋号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2018年9月29日
定価:本体2000円+税

写真1:IBM Power System E980(出典:日本IBM)

初期投資を抑えて柔軟な拡張が可能

 日本IBMは2018年8月9日、POWER9プロセッサー搭載サーバーの新モデルとして「IBM Power System E980」(写真1)「同 E950」を発表した。OSはE980がAIX、Linux、IBM iをサポート、E950はAIX、Linuxをサポートし、両モデルともスケールアップ型のサーバーとしてラインアップされている。スケールアップとは、サーバー内のCPUやメモリーを増設して処理性能を向上させる手法。対して、サーバー台数を追加して処理性能を向上させる手法はスケールアウトと呼ぶ。

 E980/E950は、ユーザーのCPU/メモリー容量のキャパシティプランニングに柔軟に対応可能にするキャパシティ・オンデマンドを備えている。あらかじめ最大容量のCPUとメモリーが筐体に搭載されたかたちで出荷され、ユーザーが必要に応じてアクティベートすることで、オンデマンドでスケールアップできる。

 E980はCPUを最大192コア、メモリーを最大64TB(テラバイト)まで、E950は最大48コア/16TBまで、キャパシティ・オンデマンドでの拡張が可能だ。

 そもそも、スケールアップ型サーバーの利点は柔軟な拡張性にあり、キャパシティ・オンデマンドはその

利点を最大するものと言える。通常、サーバーを導入する際には将来的なビジネス成長も見越して綿密なキャパシティプランニングを行ったり、はじめから最大容量を確保したりする必要があるが、E980/E950では初期投資を抑えて導入が行える。

 併せて、複数のスケールアップ型サーバーを用いる際にあらかじめ定義してあるシステムのプール内でCPUやメモリーのリソース移動を可能とする「パワーエンタープライズプール」機能も搭載されている。

ミッションクリティカルなワークロードを高速処理

 POWER9搭載サーバーとしてのE980/E950のハードウェア仕様を確認しよう。

 E980は5Uラックマウントモデルで、コントロールユニットが2Uラックマウント。32個のPCIe Gen4スロット、4個の25Gb/sアクセラレーション・ポート、4個のNVMeFlash U.2ベイ(ノードあたり)を装備。最大16個のI/O拡張ドロワーも接続可能だ。

 E950は4Uラックマウントモデルで、10個のPCIe Gen4スロット、1個のPCIe Gen3スロット、4個の25Gb/sアクセラレーション・ポートを装備。8個のSFF(2.5インチ)SASベイに4個のNVMe Flash U.2ベイも搭載。ストレージアダプタ/ファンのコンカレントメンテナンスが可能だ。

 E980/E950は、データ集約型のミッションクリティカルなワークロードを高いパフォーマンスをもって実行できる設計がなされ、高度な堅牢性を提供するハイパーバイザー「IBM PowerVM」が、両モデルにあらかじめ組み込まれている。

 PowerVMは、ビジネスニーズに応じてオンデマンドでCPUやメモリーを動的にスケールできるほか、POWER9プロセッサーによって加速・暗号化された稼働中の仮想マシンの柔軟な移動を実現する。加えて、チップレベルでセキュリティが組み込まれており、プロセッサーからハイパーバイザー、OS、そしてその間のあらゆる要素まで、エンドツーエンドで脆弱性を排除する設計となっている。

 また、両モデルともノードあたりのメモリー帯域幅は最大920GB/sで、潤沢なメモリー容量を要求するインメモリーデータベースを用いたシステム稼働基盤にも適している。