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デルとSAPジャパンが協業、中堅企業向けSAPソリューション提供を拡大へ

 デル株式会社とEMCジャパン株式会社は10日、SAPジャパン株式会社と、SAP製品の導入サポートに関して協業すると発表した。SAPパートナー企業3社との連携を含め、中堅企業向けSAPソリューションの提供に関して、事業拡大に取り組む。

 デル 執行役員 広域営業統括本部長の清水博氏は、「海外展開が加速する中堅企業において、経営者の世代交代が進み、経営とITの一体化が確実に進ちょくしている。市場のグローバル化に伴い、グローバル標準での業務フロー実現のために、グローバルERPであるSAPソリューションを、SAPジャパンおよびSAPパートナーとの連携によって提供する体制を整えた」としている。

 デルはSAPジャパンとのビジネス連携により、初年度には12社への導入、今後3年間で40社の獲得を目指し、35億円の売り上げを計画している。

デル 執行役員 広域営業統括本部長の清水博氏

 また、デル 広域営業統括本部 デジタルセールス&広域営業本部長の木村佳博氏は、「当社は中堅・中小企業分野で導入実績があり、SAP NetWeaverを提供していること、短期間かつ低コストでの導入を可能にするオールインワンパッケージや豊富なテンプレートを有していること、SAPが支援を強化する顧客とデルの顧客が同一領域にあり、レバレッジが図れる可能性があること、SAPコンピテンスセンターの活用により、SAPシステムの適切なサイジングやPoCを支援できる実績があることなどが、今回の協業のベースになっている」と述べた。

デル 広域営業統括本部デジタルセールス&広域営業本部長の木村佳博氏
SAPとビジネス連携を強化する理由

 具体的なSAP基盤向けパッケージとしては、2台のサーバーによって自動復旧や無停止メンテナンスを実現するスモールスタート構成の「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)パッケージ」と、無停止型冗長構成のプライベートクラウド環境の容易な導入を可能にする「プライベートクラウドパッケージ HA」を、新たに提供する。

SAP基盤向けHCIパッケージ
プライベートクラウドパッケージ HA

 また、10月26日に大阪にて1回目の中堅企業向けSAPセミナーを開催するのを皮切りに、今後、東京、名古屋、大阪を中心として、四半期に2回程度のペースでセミナーを開催していく。さらに、Webサイトを通じて事例を紹介するプロモーション活動や、中堅企業を対象にダイレクトメールを展開。業種や従業員規模別に最適化した提案を行うという。

中堅企業でも“グローバルERPに対する導入意欲が高い”

 デルでは、2018年1月29日~2月2日にかけて、従業員100人以上~1000人未満の中堅企業318社を対象に、ERPの利用動向に関して調査を行った。

 その結果、中堅企業におけるグローバル展開が加速していること、企業変革に挑む環境が整いつつあること、グローバルERPに対する導入意欲が高いことが浮き彫りになったという。

 デルの清水博執行役員は、「海外進出した日系企業は過去最高になっており、200人以上の中堅企業では、77%がグローバル展開を実施したり検討したりしている。特に、SAP導入企業の72.2%がグローバルERPとしての活用を検討している」との現状を紹介した。

 一方で、「経営層がIT導入の意思決定において、積極的に関与する傾向が高まっているほか、働き方改革による企業のIT活用が促進されていたり、出張や駐在での用途を含めて、グローバル対応ノートPCの販売比率が高まっていたり、といった動きもある。こうした環境変化のなかで、中堅企業においてもグローバルERPであるSAPに対する関心が高まっている。今回の協業を通じて、中堅企業の競争力強化を支援したい」との狙いを述べている。

なぜ今、連携を強化するのか
グローバルERPであるSAPを推進する理由

 デルでは、中堅企業を対象にした調査をもとに、約2万8000社のSAP導入企業の傾向から、中堅企業の4361社に販売機会があると想定。特にSAP導入企業のうち、グローバルビジネスを展開中の72.2%の中堅企業、スクラッチで独自システムを運用している42%の企業などをターゲットとし、業務の標準化や効率化を図るため、業務テンプレートを活用した提案を推進する。

 さらに、アイ・ピー・エス、NTTデータグローバルソリューションズ(以下、NTTデータGSL)、FutureOneの3社のパートナー企業とも連携する。

 このうちアイ・ピー・エスは、従業員500人以上の中堅製造業や商社向けに、SAP S/4HANA用テンプレートを提供した提案を推進する。

 またNTTデータGSLは、従業員500人前後の組立製造業や製造販社、商社向けにテンプレートを活用した提案を行う。

 3社目のFutureOneは、SAP Business Oneにより、従業員500人以下の主要業務をワンシステムで網羅的に管理するソリューションを提供するとした。

中堅企業向けSAPソリューションをパートナー企業とともに提供

中堅企業向けビジネスが好調の両社、相乗効果でさらなる成長目指す

 一方、SAPジャパンでも中堅企業に対するビジネスを強化しており、同社 常務執行役員 ゼネラルビジネス事業担当の牛田勉氏は、「SAPジャパンは2017年において、日本での中堅(SME)企業の新規顧客数が対前年比で2倍に増加。さらに、デジタルマーケティング経由の案件創出数は2.5倍に達し、パートナー経由の売上金額は2.7倍に増加している。また、既存ユーザーの売上高も53%増になっており、既存ユーザーにおいても、グローバル活用の推進や、タレントマネジメントをはじめとする新たなSAPソリューションへの拡大ニーズがある」という。

 組織的にも、ゼネラル統括ビジネス本部において、2017年4月から、中堅・中小企業向けビジネスを大幅に強化する体制を確立。SAP Business Oneなどの中堅企業向け製品群を強化してきた。

SAPジャパン 常務執行役員 ゼネラルビジネス事業担当の牛田勉氏

 デルは、2017年2月に中堅企業向けビジネス戦略を発表し、中堅企業に特化した組織を編成。さらに「ひとり情シス」といった言葉を作り、中堅中小企業において、少人数で構成される情報システム担当者を支援する取り組みを強化してきた経緯がある。

 現在、デルが中堅企業を対象にした広域営業統括本部を発足して以来18カ月が経過したが、従業員100人以上1000人未満の中堅企業において、PCのシェアは15%から23%に拡大。94%増の成長を達成した。

 「こうした過去1年強の取り組みをみると、2社の相乗効果が出やすい環境にあると考えている」と、デルの清水執行役員は語った。

連携による相乗効果

 なお、デルとSAPが協業して中堅企業市場をターゲットとした取り組みを共同で行うのは、世界的にも例がないという。

 両社が重点事業領域と位置づける中堅企業のERP活用において、課題を解決する取り組みとして、協業の成果が注目されよう。

デル 執行役員 広域営業統括本部長の清水博氏(右)と、SAPジャパン 常務執行役員 ゼネラルビジネス事業担当の牛田勉氏(左)